117 限界
怪我人が収容されたところは宿屋であり、カルディム家で借り入れたそうだ。
大怪我をした者はいないと言ってたが、医療技術が未発達なところではちょっとした傷でも死に至ることもある。
まあ、さすがに窓から排泄物を捨てるような世界じゃないけど、壺に溜めて公共の捨て場にポイするので、衛生的ではない。付与魔法で臭いを遮断していなければ悶絶していることでしょうよ。
魔力はあるので宿屋全体を浄化の付与を施し、周辺の女性陣を集めるように指示を出した。
「洗濯をします!」
こんな汚い場所では治る怪我も治らないわ。
グリムワールでお湯玉を作り出して女性陣に洗えるものはすべて洗わせ、洗ったものから乾燥させていった。
怪我人の服も脱がせ──ようとしたらランに止められたので奥様方にお任せ。厨房を借りて料理を作ることにした。
食材はカルディム家で買い上げることにして、あるもので料理をする。
と言っても簡単に作れるのはやっぱりシチューしかない。ただし、羊の骨と香味野菜で煮込んだ粉を混ぜて作るシチューである。先ほどの野菜と肉を羊乳で煮込んで塩胡椒で調整したものではない。
「うん。いい味」
思い浮かぶシチューとはちょっと違うけどね。
怪我人にしっかりと食べさせたら回復薬(固形物)を飲ませた。
「あなたたちの尽力に感謝しましす。ゆっくりやすんで怪我を治してくださいね」
枕によく眠れる付与を施した。
「お嬢様!」
ほっとしたら立ち眩みをしてしまった。わたし、本当に体力ないわよね~。
「ごめんなさいね」
ジェンに体を預けて立ち眩みに堪えた。
「お嬢様、失礼します」
と、ジェンにお姫様ダッコされてしまった。やん。おっぱいが顔に。
「お嬢様を城に連れていきます。誰か馬車を用意してください」
「……少し休めば大丈夫よ……」
疲労と魔力不足で立ち眩みしただけだ。休めば復活するわ。
「いけません。顔色がよくありません」
まあ、自分でも顔色悪いだろうな~ってくらいには気持ち悪くなってきたわね。
「すぐに用意します」
さすがタグナー。すぐに動ける男はできる証である。
「怪我人をお願いね」
誰が責任者か確認するの忘れたけど、まあ、あとは怪我人の回復を待つだけ。宿屋の人がどうにかしてくれるでしょう。
と言うか、ジェンって意外とおっぱいが大きいわね。着痩せするタイプかしら?
「馬車がきました!」
「お嬢様、いきますね」
「任せるわ」
今のわたしは気持ち悪いのを堪えながらおっぱいを楽しむので精一杯。まだ気を失うわけにはいかないわ。
気力でなんとかしようとがんばったけど、いつの間に意識を失ってしまった。




