107 草刈り二日目
さすがに一日で終わらなかった。
夕方、四時くらいには終わり、また明日これる者はきてもらい、報酬は館で支払うことにする。
「ありがとう。また明日お願いね」
お金はマクライに渡させ、わたしは今日の仕事にお礼を言って帰る村の人を見送った。
全員が帰ったらメイドたちや兵士にも感謝を述べ、今日の仕事は免除して、早々に休むことを命じた。
わたしも今日は疲れた。使ってない筋肉が悲鳴を上げているわ。
食事の前にお風呂に入り、ラグラナにお湯の中でマッサージしてもらった。だからわたしは胸を大きくしようと思ってないんだから胸を揉むのは止めなさいよ。
「日頃のマッサージが未来に繋がるんですよ」
「繋がらなくていいわよ」
自分が巨乳になっても嬉しくないのよ! わたし以外が巨乳であることを求めてんのよ!
体が痛いので払い除けすることができない。そこじゃなく腕と脚を揉んでよ。明日も草刈りがあるんだから。
「もういいわ。上がります」
さすがにのぼせてきた。夕食が食べられなくなるわ。
湯上がりにリンゴジュースを飲み、コズエにウチワで扇いでもらって涼んだ。
真っ裸でウチワで扇いでもらうって気持ちいいわ。なんかクセになりそう。
体の熱が冷めたら夕食に。あまり食欲はないけど、明日のためにもしっかり食べる。やはり若いっていいわよね。食欲がないのにいつもより食べてしまったわ。
「お嬢様。城より手紙が届きました。すぐに読んで欲しいとのことです」
今日はなにもしたくないけど、城と言うからには叔父様だ。読まないなんてできないわ。
なぬなぬ。明日くるそうですか。ご苦労様ですこと。
「マクライ。明日、叔父様がくるそうよ。部屋を準備しておいてちょうだい」
「ロングルド様だけでしょうか?」
「書いてなかったわ。よほど急いでいたのでしょう。念のため客室はすべて準備していてちょうだい」
「畏まりました。数泊する予定で準備致します」
「よろしくお願いするわ」
お腹が落ち着いたら寝室に向かい、洗面台で歯を磨く。
寝室は誰も──いや、キャラメルはいるけど、火傷を剥がしても驚く者はいない。剥がしたら保湿水を顔に撫でるようにつける。ケアこそ一日にして成らずだわ。
「おやすみ、キャラメル」
「キュー」
ベッドの下で丸まるキャラメルを撫でて就寝。枕に付与した振動が発動して目覚めた。
「久しぶりにぐっすり眠ったわね」
ベッドから起き上がり、カーテンを開けると、眩しい光が入ってきた。
「今日も天気がよさそうね」
筋肉痛もなく体も軽い。やはり若いって素晴らしいわ。
呼び鈴を鳴らすと、コノハが入ってきた。
「おはようございます」
「はい、おはよう。夜は問題なかった?」
「はい。忍び込んだ者はおりません」
そろそろ食糧問題が現れてくる頃。それに合わせて帝国の影や草が動くかもしれない。コノハやコズエのこともある。しっかり警備しておかなくちゃね。
「そう。油断なくね」
コズエに着替えを手伝ってもらい、顔を洗い、口を濯いで食堂に向かった。
今日もがんばるぞー! とモリモリ食べて館を出ると、コノメノウ様とタルル様がいた。どうしました?
「わしらもいく」
「コノメノウ様、近所付き合いができたんですね」
マジびっくり~。
「そなたはわしをなんだと思っておる?」
ヒキニートか堕落者かな? あ、魔力供給源ってのもあるわね。なんて言えるわけもなし。ウフフと笑っておいた。
「わたしは、沼の水質改善だな。あまり水の流れがよくないんでな」
「タルル様、意外と世話好きなんですね」
「この娘、かなり失礼ではないか?」
ヤダ。口がすぎたわ。
「それがちょうどよい。畏まられるのも邪魔臭いからな」
「まあ、居心地はよいな。好きにしててもうるさく言わんし、あれこれ世話することもない。ここは居心地よい」
どうやら怒ってはいないようだ。よかった。
「おはよう。今日もよろしくね」
狐と妖精は放っておくとして村の人たちを連れて沼に向かった。
着いたら早速開始。昨日のように無我夢中でやるんじゃなく、休み休みやることにした。
「亀と狐と妖精か。百鬼夜行か鳥獣戯画って感じね」
三匹でなにやら語り合っている。なんだこれ? だね。
獣たちの饗宴に人が混ざっても仕方がないので、放置して草刈りを続けた。
「お嬢様。領主代理様がいらっしゃいました」
ランが立ったと思ったら叔父様がきたことを告げた。
「あら、早いこと。かなり飛ばしてきたみたいね」
まだ十時前。日の出とともに城を出たみたいね。
「チェレミー!」
「おはようございます、叔父様。そう大声を出さないでください。お三方の邪魔になりますよ」
なにやら話しに花を咲かせるお三方。意外と馬が合うようね。
「あのコローゲが聖獣となるのか?」
「タルル様。あの蝶々の羽を持つ聖妖精様がおっしゃってました」
「……まさかあのコローゲが……」
「叔父様は知っていたのですか?」
「ああ。お祖父様の子供の頃からこの沼に住んでいたとは聞いている。わたしもここを通る度に見ていたよ」
リンゴ畑──マロント村にいく道がここなんですよ。
「カルディム家としてここを保護区にしてください。あと予算もつけてください」
先立つものはお金ではないけど、カルディム家で管理するならちゃんと予算を組んでくださいね。
「ああ。兄上に手紙を出した。早急に話し合おう」
それはなにより。迅速に動いてくれる叔父様でよかったわ。




