1065 *ハーベルク* 下
湖面は氷で固められたが、チェレミー嬢に施された靴はまったく滑らず、鎧は寒さも感じさせなかった。
しっかりと氷を踏み締めながら前進。いや、猛進だ。敵が三倍だろうが四倍だろうが関係ない。すべてを粉砕し駆逐し、この勝利をチェレミー嬢に捧げるのだ!
「同士討ちにならぬよう距離を取れ! 一匹たりとも逃すな! 我らの背後にはチェレミー嬢がいるのだからな!」
我らの前に敵あり。我らの背後に敵はなし、だ!
骸骨騎士はそこまで強くはない。その数で圧して来るだけだ。
我らミランダルク騎士団は突進力と防御力が自慢の騎士団だ。本来なら騎馬で突進、なのだが、馬に乗らなくとも我らの突進と防御力を突破できる者はいない。
逆にルティンラル騎士団は、ラインフォードの趣味で器用なヤツらが集められている。よくどちらが強いかで揉めたこともあったが、今はわたしたちが骸骨騎士団を圧している。
「圧せ! 一歩たりとも退いてはならぬ! 我らはコルディーの盾である!」
我ながら先ほどから調子のいいことを言っているものだ。こんなに口が回る男だったか? びっくりすぎて笑いが出てしまうよ。
だが、悪くない。いや、最高だ! 高揚感で血が沸きそうだ!
騎士に憧れ、目指し、腐らず、努力した先にこれである。高揚するなというほうがどうかしている。笑うなというほうが間違っている。今ここで絶命しても後悔はないくらいだ。
だが、死んではならぬ。これは始まり。初陣だ。チェレミー嬢の剣として狼煙を上げたにすぎんのだ。
チェレミー嬢はきっとたくさんの戦場に立つことになるだろう。今回以上の敵と対峙するかもしれない。そのとき、片翼であるミランダルク騎士団が弱いのではチェレミー嬢が羽ばたけないではないか。
全力で。だが、力配分を忘れてはならぬ。最後まで立っていてこそ騎士の勤めであり誉れであるのだからだ。
「陣形再編! 遊撃員、前に出るぞ!」
騎士すべてが突進力と防御力があるわけではない。小回りの利く騎士もまた必要になる。我らは脳まで筋肉でできている短慮ではないのだ。
かく言うわたしもどちらかと言えば機動力を活かした戦いを得意とする。
出世するとなかなか前に出ることができなくなる。だから、団員たちには見せ場を先に用意してやった。活躍させた。きっとチェレミー嬢も見てくださっただろう。
なので、次はわたしが前に出させてもらう。わたしだって戦いたいのだ。武勇を示したいのだ。だって騎士なのだからな!
「城までの道は我らが築くぞ! 突貫せよ!」
わたしが先頭になって迫り来る骸骨騎士を薙ぎ払いながら城に向かって突貫した。




