1043 ピンチはチャンス 下
「失礼しました。また話が逸れましたね」
過去も大事だけど、今のわたしたちはこの時を築かねばならなく、おっぱいのために未来を残さなければならない。火の粉が振りかかる前に耐火シートを張っておくとしましょう。
「精神攻撃が拡大した場合に備えて妃候補者たちにミサンガを編んでもらっております。他にもいろいろ用意は致しますけど、武力が必要な場合はルティンラル騎士団に出てもらいます。その辺の政治的判断、擦り合わせ、根回しをお願いできますか? わたしの名を使ってくれて構いませんので」
一国の騎士団に戦闘をさせる。必ずあちらこちらから文句は上がるでしょう。そのとき、当事者であるジーヌ家の言葉があるのとないのでは大違い。ジーヌ家が動いてくれると助かるのよ。
「わかった。できることは全力でやろう」
「ありがとうございます。たとえ事が大きくなろう拗れようとジーヌ家を不利にはさせません。ご安心ください。ただ、手柄は妃候補者たちがいただきますね。妃候補者たちには明日のコルディーを担っていただかなければいけませんので」
これはピンチではなくチャンス。妃候補者たちの手柄にして発言権を増させるために使わせてもらうわ。
「もちろん、ラーレシム様は隠します。そのほうがジーヌ家としてもよろしいでしょう。精神攻撃に耐性があるようなので」
長引く場合、キーマンとなるのはラーレシム様だ。隠し球は隠しておいてこそ価値があるのよ。
「その代わり、タリール様を全面に出させます。聖女として妃候補者たちと問題を解決した、という脚本にします」
ロリっ娘の価値は上がってもわたしが前面に立っているのだからジーヌ家に負担はかからない。ロリっ娘はナジェスとの婚約が進められている。
ちょっかいをかけようともわたしが立ちはだかるのだからやはりジーヌ家には負担はかからない。かかったとしても最終的にわたしを頷かせなければならないのだから公爵様の負担はそれほどではないわ。
「チェレミー嬢はやはり裏方に徹するか」
「わたしが表に出てもコルディーのためにはなりませんわ。身分が伯爵令嬢でしかないのですからね」
王政では身分が絶対。ましてやこのコルディーでは伯爵令嬢など中の中。カルディム家は中の下、と言ったところでしょうよ。
「コルディーを救うのは貴族でなければいけません。この体制を守るためにはね」
平民から英雄に、なんてものは戦乱時でしか成り立たない。平時で英雄を生ませるなどあってはならないのよ。
「公爵様が望むなら英雄に仕立てて差し上げますわよ」
「絶対に望まんから辞めてくれ!」
クスクスと笑ってみせたら断固拒否されてしまったわ。




