1003 駆け引き 上
ロリっ娘は、ジーヌ公爵家の一族だけど、公爵様の娘というわけではない。親戚の子でしかないわ。
直系から外れたのなら家を継ぐことはないでしょう。一族の若いのがすべて亡くなったなら別でしょうけどね。
公爵様に三人のお子様がいて、ご長男様は次期後継者。次男は補佐としての立場につき、ご長女様もよい家に嫁がれたと言っていた。これでロリっ娘が後継者になるなんて道は欠片も存在もない。
ただ、公爵家の一族となるから滅多なところには嫁がせられないってだけで、家の利益となれば話は違ってくるわ。
「カルディム家はしがない伯爵家。一つも二つも落ちるばかりか、領主代理の息子と婚約させろと言うのです。普通なら一蹴にされるだけのお話でしょうよ。公爵様もわたしからの言葉でなければ鼻で笑っていたでしょう?」
公爵様と二人っきりなので、わたしがお茶を淹れるとする。ハイ、どうぞ。
「……すまない……」
お茶を出し、少し落ち着いてもらった。
「わたしも貴族の娘。まずは家の利を考えます。可もなく不可もない伯爵家がこの王国でどう生きる。どう生き抜くかを」
「普通の伯爵令嬢は考えたりしないがな」
「普通は考えるべきなのです。そう教えるべきなのです。家の一人なのですから。操り人形を生産してどうするというのですか。自分の頭で考えられる貴族を育てるべきなのです」
だから貴族は劣化するのよ。腐るのよ。貴族は量ではなく質だというのにね。
「……チェレミー嬢のように育ったらわたしの胃はすぐに消えてしまうよ……」
「胃はお大事にしてくださいませ」
「…………」
恨みがましい目を向けないでください。ジーヌ家のことなんですから。
「カルディム家としては公爵家と繋がりができるのは誉れというもの。公爵様からお声をおかけいただけるのならカルディム家は喜んでお受けするでしょう」
わたしが受けさせます。どんな手を使ったもね。ウヒヒ♥️
「……それしか手はないか……」
「ありますよ。タリール様に婿を取らせてジーヌ家で使ったり、帝国に使者として送ったり、一生この屋敷に閉じ込めるなどいろいろ。公爵様の利になることを選んでくれて構いませんわ。すべては公爵様のご判断なのですから」
最終決定権は公爵様にある。それが家の当主。すべての結果は公爵様に帰するのよ。
「身分に関係なく決断するというのは恐ろしいものです。でも、当主であるのならせねばならない。家を繁栄させるために。家を終わらせないために」
脂汗を流す公爵様にわたしは余裕の笑みを浮かべてみせる。これは交渉ではなく駆け引きですよ。




