1002 納得できる答えなどない 下
「まず、ラーレシム様のことはお家で決めてください。わたしにはどんな天能かわかりません。なにか声が聞こえているみたいですけど、情報がなくてなんとも言えないのです。それはお家で突き止めてくださいませ」
天能のことまでは知らん。有効かそうでないかはお家でやってくださいだ。秘密にもしたいでしょうからね。
「あ、ああ。そうしよう」
「ただ、甘く見ないようにしてください。どうも重要そうな天能のように思えるので……」
知らんとは言うものの、気にはなるのよね。あの天能がたまたまた具現したのか、はたまた目覚めさせたられたのか。それによって問題は違ってくるからだ。
「先見の魔女にそう言われると恐ろしくて堪らん。怖いことを言わんでくれ」
「気のせいならそれでよいのです。ただ、往々にして嫌な予感とは当たるもの。備えるに越したことはありませんよ」
「どう備えたらよいのだ?」
「お家の方々に情報を共有する。変化を見落とさない。伝令を増やす。兵をいつでも動けるようにしておく。領民の避難を計画しておく。考えつくことはすべて行う。それが備えるということです」
やるべきこと、備えること、考えることはいくらでもある。わからないと頭を抱えるよりやれることを一つ一つ潰して行け、だ。
「そ、そうだな。やるべきことをやるとしよう」
優秀で責任感のあるお方でよかった。愚鈍な領主なら滅亡に転がり落ちているところだわ。
「問題はタリール様です。扱いを間違えると王宮や王城を敵に回してしまいます」
「だろうな。話を聞く限り、最悪だ」
公爵様の認識は間違ってはいない。ミシエリル様がお妃様の側にいるからこそ王城や王宮の力関係がわかるのでしょうよ。この王国の後ろに妖狐がいることも、ね……。
「タリール様の存在は害にもなれば利にもなる。要は使い方次第。ジーヌ家がどうしたいかになります」
「無難に片付いてくれたらそれでよい。なんなら多少損をしても構わない。守るべきはジーヌ家だ」
まさに貴族として七十点の答えだ。
これは皮肉ではない。百点の答えなんて早々出せるものではない。多少の損をしたとしても家を守る。六十から七十点を目指すのがいい貴族だとわたしは思うわ。
「公爵様がそこまでの覚悟でおありなら一つ提案をさせていただきます」
たぶん、これしかない。ロリっ娘を手に入れるのは。
「わたしには従弟がおります。叔父の息子です。十二歳ですね。将来は領主代理として継ぐでしょう。五歳差ではありますけど、婚約するならそう離れてはおりませんわ」
クスっと笑ってみせた。




