1001 納得できる答えなどない 上
いい感じが過ぎた頃、ジーヌ家の侍女が現れた。
「旦那様がお話ししたいそうです」
長年仕えた侍女なのでしょう。わたしに敬意を示すために信頼する者を寄越したのでしょうね。
「はい、わかりました」
わたし一人で侍女のあとに続いた。
案内された場所は公爵様の書斎、かしら? 事が事なだけに自分だけにしたようだわ。
そこはさすが公爵ってところよね。無駄にいる公爵でもお妃候補者の教育を司る家なだけあるわ。
「すまぬな、呼び出したりして」
「お構いなく。公爵様の心情を慮ると同情しかありませんから」
可哀想に、としか思えないわ。
「……はは。情けないが、代わってもらえるなら代わって欲しいくらいだ……」
「情けないなんて思いませんわ。至極まっとうな反応だと思います」
これで喜べる者がいたら縁を切らしていただくわ。
「安心してください。公爵様はまっとうな感性を持っております」
「喜んでいいのやら。いっそのこと愚鈍だったらと思うよ」
「そう思えるからこそ、公爵様が優秀だとわかります。ミシエリル様が安心して王都におられる理由もわかるというものですわ」
ほんと、優秀な夫婦だわ。お妃様がお付きとするのも当然よ。
「ミシエリルがチェレミー嬢を推すのがよくわかった。優秀な者の前では身分などなんの役にも立たんのだな」
そんなことはないけど、使い方を知らないと身分なんてあっても役に立たないのは確かだわ。
「チェレミー嬢から見たジーヌ家の状況を教えて欲しい」
「畏まりました」
付与魔法を使った映像で説明させてもらった。
「…………」
説明が終わると、公爵様の周りだけ暗黒空間に包まれてしまった。まっとうなだけに絶望に似た状況がわかるのでしょう。下手したらジーヌ家はコルディーの敵と思われ兼ねないのだからね。
公爵様の立場としては、なにも知らないままにロリっ娘を王宮に差し出すね。そちらで処理してくださいって。
まあ、安直と言ってしまえば安直だけど、家を守るならそう間違った判断とも思えない。自分たちはなにも知らなかったと言い訳ができるからね。早ければ早いほうがいいでしょうよ。
ただまあ、王宮もバカではない。まだ状況がつかめないと拒否するでしょう。わたしが関わっちゃっているからね。なにか裏があると思うでしょうよ。疑心暗鬼って怖いわ~。
「恥を承知で聞きたい。解決する方法はあるだろうか?」
「すべての者が納得できる答えはありません。けど、ジーヌ家として傷を浅くする方法ならいくつかあります」
「いくつもあるのか?」
「方法があるだけです。まったく無傷とはなりません」
すべての者が納得できる答えがあるならわたしが聞きたいくらいよ。




