一人では道半ばで力尽きてしまう⑤
体力は完全に零を超えてマイナス。オーバーキルだ。
やはり自分がオフェンスまで行うのは無理だったとはっきりした。
そのせいでアドレナリン的なもので収まっていた頭痛が、試合前とは比較にならないほどひどい。
さらに一瞬だが、口に酸っぱさまで感じた。
身体が過去一二を争うレベルでヤバい。
このままだと最初に危惧していた一人体力切れで脱落するか、体調不良でぶっ倒れるかのチキンレースだ。
どっちに賭けても負け確定とか不条理過ぎる。
なのでコペルニクス的転回で攻めることにした。
攻撃こそ最大の防御、押してダメなら押してみろとも言う。
二つ目はおかしいな。だが、嫌いじゃない。脳筋のゴリ押しはときに論理を超越できる。
麓山にボールを打診する。
「ボールを回してくれんか?」
「なんか策でもあるのか?」
「いや、ないがこの身体がある!」
麓山は可哀想なものを見る目付きで見てきた。憐れまれると自分がいたたまれない。
「お前がそこまで言うんなら回すよ」
「恩に着る」
大事なものを失った気がする。具体的には尊厳とか。
とりあえずボールは回してもらえた。
ドリブルでコートを駆け上がる。
オレンジのゴールで待ち受けるのは篠崎先輩と橘さんだ。
あんなところに突っ込むのは流石に脳筋にも程があるので、遠距離シュートを選択。
狙うのはスリーポイントシュートだ。あまり得意ではないので、打ちたくなかったがなりふり構っていられない。
勝てば全ては報われる。結果の前に過程など些末なことよ。
ちょうど二人も奥にいる今なら打てるだろう。
普通にシュートを打つときよりもフォームに意識を集中させ、高いループでゴールに吸い込まれるシュートを何度も何度も思い描く。
イメージをなぞるようにシュートを重ねていく。
放たれたシュートは導かれるようにリングを目指し、端正な放物線を描く。
ゴールに吸い込まれるボールは、リングに触れることすら厭うようにネットのみを揺らし、試合の終止符を告げた。




