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過去が碌でもないことを現在が証明している






 一試合目と二試合目の間には10分間の休憩が設けられた。


 休憩中は水分補給をするも良し、なんなら練習をしたっていい。


 ハードな運動の直後ではあったが、ディフェンスばかりで飽(あ)き飽きしていた。


 あまりボールを触る機会もなく、ボールの感触に飢(う)えていた。


 インドアな自分だが、なんだかんだで六年間バスケ部に所属していた。


 モヤシの自分にとって、入部は大きな決断だったのを今でも覚えている。あまり後先考えてなかったが。


 バスケを始めた動機は決して褒(ほ)められたものではない。


 しかし、バスケ部に入る者なんてたいていこんな動機だと言っておこう。


 きっかけは二次元キャラのカッコいいプレイに憧れて、実際にやってみたくなったからだ。


 こんなやつばっかりなので、バスケ部のヲタク率は異常。


 だいぶ辺鄙(へんぴ)なところからのスタートだったが、積み重ねられた練習によって、今ではその動きが身についている。


 適当にシュートやドリブルをしていると、バスケ部で刻んだ黒歴史の数々が蘇(よみがえ)る。


 あの頃の自分を思い出すと、シュートを打っていた。それだけならば絵になる青春(笑)の一場面だが、そんな訳はない。


 シュートを打つたび、セルフで「シュッ」とか言って悦に浸っていた。


 これで素面とかもうだいぶヤバい。まだ酔っ払いの方がいくらかマシだ。


 どう考えても「デュクシ」と同系統だし、なんならオリジナルな分、よりレベルが低いまであって怖い。


 おまけにシュートが入ると、放った姿勢のままニヤッとしていた。


 ……完全に手遅れだった。


 いっそここまで行くと清々しい。心が納得を諦めて凪(な)いでいくのを感じる。これが悟りか。


 頭の中で場面が切り替わり、また別の練習風景が映る。


 しごく真剣な表情で熱心に練習しているが、当時の自分はそんなタイプじゃなかったはずだ。


 何かがおかしい。


 もう動じないと決めたが、違和感だけでは終わらない。


 その練習は漫画の主人公たちのプレイを再現しようとしたものだった。


 まあ、それだけならば誰しも一度や二度やってしまうかもしれない。


 しかし、練習しているのは一人だけではなかった。


 そこには志(こころざし)を同じくする者が集い、組織だった練習が行われていたのである。


 いろんな意味で頭が痛い。これだからバスケ部はダメなんだ。


 近いものを挙げるとすれば、サバトぐらいなものだろう。

 

 狂気性という点で一致している。こんなもののせいで、心は大荒れだ。


 もう伝わらないのは分かっているが、祈らずにはいられない。誰か一人でも正気に戻ってくれと。


 時間は戻らず、過去は変わらない。覆水(ふくすい)盆に返らずだ。


 しかし、それで終わりではない。今があるのだから。


 とりあえず手元にある盆に水注いでかさ増ししとけば、同じになると思わなくもない。


 水なんていくらでもこの世界を循環しているのだから、同じものと言い張れるだろう。


 誰が違うと証明できる? いつだってグレーってやつはシロだ。


 マスクの下で、口元が歪(ゆが)む。


 たぶん、苦虫を噛み潰したような顔をしているのだろう。


 人生は考え方一つだが、今回ばかりは中ニを謳歌(おうか)していた自分が悪い。


 思わぬところで古傷を抉(えぐ)ってしまった。


 いや、まだわりと最近の傷ではあるが、どう考えても背中の傷で剣士の恥である。


 動いていると、あの頃の動きが間違いなく生かされているのを感じる。


 あのサバトは今の自分に役立っているのが、悔恨を深めた。


 黒歴史とバスケの技術では等価交換が成立していないので、リコールを要求したいが如何(いかん)せん時間が経ちすぎた。


 なるべく思い出さないようにと願いながら、行き場のないものを心の奥深くにそっと沈めた。







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