表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/6

ボクのごちそう p.2

 でも、なかなかおにいさんとの距離は縮まらない。やはり、まだ警戒されているのだろうか。もう、手を伸ばして捕まえてしまおうか。足を絡ませ、動きを封じてしまおうか。


 そんな思いを誤魔化すために、ボクは色々な物を食べた。


 春には、桜餅、抹茶のティラミス、それに、イチゴのシュークリーム。


 夏には、かき氷と、二段になったアイスクリーム。


 秋には、焼いもに、モンブラン。それから、アップルパイ。


 冬には、熱々のたい焼きと、たこ焼き。


 季節の食べ物は、格別、美味しい。


 朝は、ごはんに味噌汁、卵焼き。ときどき、トーストにコーンスープ。


 昼は、パスタ、ラーメン、そば、うどん。そして、ものすごくたまに、サラダだけ。


 夜は、イタリアンかフレンチか。中華か和食か。迷ってしまったら、全部食べよう。


 晴れの日には、おにぎりやサンドウィッチをお供に公園へ。


 曇りの日には、大きめコーラと、ついでにハンバーガーとフライドポテトで気分転換。


 雨の日には、家の中で、じっくりパンを焼く。


 雪の日は、まだあの日以来やってこないけど、雪が降ったら、そろそろ1年……。もう、いい頃かな?


 ボクに付き合って、色々な物を食べたおにいさんは、ずいぶん丸くなったよね。


 そんなことを考えながら、今日も、いつものように公園のベンチでおにいさんとの時間を過ごしていたけれど、おにいさんは早く帰ろうと、ボクを急き立てる。


 しかし、どんなに急き立てられようとも、ボクは全く動じない。ボクの口は止まらない。だって、美味しいものの話でもして、気を紛らわせていないと、おにいさんに手を出してしまいそうだから。


 ボクがこんなに我慢をしているのに、ボクの気持ちなんて、まるで気づきもしないで、おにいさんは、ボクの手を握る。そんなに近くに来たら、ボクはもう我慢が出来ないよ。


 おにいさんのせいで、消化液が止まらなくなってしまったボクの苦悩など露知らず、おにいさんは、呑気にボクに問いかける。


「ねぇ、キミはいつもたくさんの物を食べたがるけれど、もしも、明日人生が終わるとしたら、最後の晩餐に何を選ぶの?」


 おにいさんの唐突な質問に、ボクは立ち止まり、イチゴのような色をした自慢の唇をおにいさんに見せつけるようにして、考えるフリをする。


「お寿司もいいし、焼肉もいいなぁ。あ~、でも、やっぱり最後だし、フォアグラ、キャビア、トリュフの三大珍味は外せないよね。だけどなぁ……結局、一番の好物がいいのかなぁ……」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ