表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/6

僕のごちそう p.2

 春には、桜の葉に包まれた桜餅、抹茶のティラミス、それに、イチゴのシュークリーム。


 夏には、ブルーハワイのかき氷と、二段になったアイスクリーム。


 秋には、ほくほく焼いもに、大きな栗の乗ったモンブラン。それから、中がトロトロのアップルパイ。


 冬には、餡子がぎっしり詰まったたい焼きと、鰹節がゆらゆらと躍るたこ焼き。


 それが、君の推しメン。


 朝は、ごはんに味噌汁、卵焼き。ときどき、トーストにコーンスープ。


 昼は、パスタ、ラーメン、そば、うどん。そして、ものすごくたまに、サラダだけ。


 夜は、イタリアンかフレンチか。中華か和食か。とにかく、何でも食べたいんだよね。


 休日は、キミにとって、ちょっぴり特別なのかな?


 晴れの日には、おにぎりやサンドウィッチをお供に公園へ。


 曇りの日には、大きめコーラと、ついでにハンバーガーとフライドポテトで気分転換。


 雨の日には、家の中で、じっくりパンを焼く。


 雪の日は、まだあの日以来やってこないけど、やっぱり、キミは、舞い落ちる雪を食べるのかな。


 これが、僕が知っているキミのこと。


 だけど、本当はもっとキミのことを知りたい。キミに近づきたい。もっと深く、キミの核となる部分に触れてみたい。この願いは、どうすれば叶えられるのだろうか。


 思い切って、キミの手に触れてみようか。キミを抱きしめてみようか。キミの唇を奪ってみようか。


 そんなことを考えながら、今日も、いつものように公園のベンチでキミとの時間を過ごしていたけれど、冬空の公園はとても寒い。


 僕は早く帰ろうと、キミを急き立てる。しかし、どんなに僕に急き立てられようとも、キミは全く動じない。キミの口は止まらない。何も食べていない今だって、キミは食べ物の話で、せわしなく口を動かしている。


 そんなキミの手を、僕は思い切って握る。キミの細い指に、僕の指を絡ませると、僕はキミの手を引きながら、公園の出口を目指す。


 その道すがら、僕はキミに聞いてみた。


「ねぇ、キミはいつもたくさんの物を食べたがるけれど、もしも、明日人生が終わるとしたら、最後の晩餐に何を選ぶの?」


 僕の唐突な質問に、キミは小首をかけしげながら立ち止まり、まるで熟したイチゴのような色をした唇に人差し指を軽く当てて考え込む。


「お寿司もいいし、焼肉もいいなぁ。あ~、でも、やっぱり最後だし、フォアグラ、キャビア、トリュフの三大珍味は外せないよね。だけどなぁ……結局、一番の好物がいいのかなぁ……」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ