森の議会(童話)
森には動物たちが住んでいました。
その動物たちを率いるのはライオンさんが議長を務める森の議会でした。
動物たちの住処から仕事まで全部森の議会によって決められていました。
ウグイスが与えられた仕事は歌うことでした。
しかし、ウグイスはその仕事にはちょっとした不満でした。
もっと皆の役に立ちたい。
クマさんのように魚を取りたい。
同じ鳥類であるキツツキさんのような木のお医者さんになりたい。
せめて、ニワトリさんのように声で皆の役に立ちたかったのです。
しかし、森の議会の決定は覆せないのです。
それでも、ウグイスは皆の役に立ちたかったので、一生懸命勉強しました。
ええ、ウグイスはとっても頑張りましたとも。
頑張った末にウグイスは森の議会に入ることができました。
めでたし、めでたし。
けれど、森の議会の中身はウグイスが考えたのとは違うのでした。
ライオンさんが何を言い出す度に、オウムさんはライオンさんと同じ口調で同じことを言う。
カメレオンさんはライオンさんと同じ色になって、ライオンさんと同じ言葉を口にするのです。
ですが、議長であるライオンさんだって森のすべてを知り尽くしているわけではないのです。
ライオンさんも間違った判断をする時があるのです。
誰かが反対しなければならない、そう思ったウグイスは反対意見を提出しました。
それを聞いたライオンさんは、「反対するのなら代案を出して!」と咆哮のように怒鳴りました。
ウグイスは頭を絞り、ええ、それはもう必死に考えていました。しかし、代案は出せませんでした。
それ以来、ウグイスはオウムさんとカメレオンさんのように、ただその美しい声でライオンさんの言葉を繰り返すことしかできませんでした。
そんなある日、森に火事が起きました。
緊急会議の結果、ライオンさんは森を放棄することを決めました。
けれども、ウグイスは知っていました。
巣にはまだ飛べない雛たちやまだ生まれて来ていない弟と妹たちがいる。
ううん、亀さんもコアラさんもカタツムリさんも逃げ遅れてしまうのです。
代案を考えなくては、とウグイスは思ったけど、ウグイスは火を消す方法を知らないのです。
代案を出せなかったから反対は出来ません。
悲しいウグイスは歌いだしました。
それはそれはとても悲しいメロディーでした。
けれども、そのメロディーは悲しさだけではありませんでした。
森への愛情も溢れていたのです。
その歌声を聞いた動物たちは足を止めました。
象さんとカエルさんは水を口に含んで火にかけました。
クマさんは火が蔓延しないために木を倒し、牛は草を食べました。
モグラも穴を掘り、火に砂をかけました。
皆はライオンさんの決定を無視して勇敢に火に立ち向かったのです。
それを目にしたライオンさんは悟ったのです。誰も代案を出せなくても、皆で一緒に考えればもっとよい方法を思いつくかもしれないと。
皆の努力でようやく火は消えました。
動物たちは皆ウグイスに感謝していました。
ウグイスはようやく自分の歌声に自信を持てるようになりました。
森は毎日楽しい歌声に包まれるようになったのです。