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65:カルベルス王国の滅亡~⑦~(過去編)

 あの後、エレノアはロレンシオ王の執務室に呼ばれていた。


 「エレノア、まさかお前が彼の竜と親密にしていたとはな。」


 「し、親密なんて、仲良くはしております・・・」


 「フーム、例の教会か。」


 「!?ど、どうしてそれを・・・」


 エレノアはこっそり抜け出して教会に行っていたことをバレていないと思っていただけにかなり驚いた。それに父親であるロレンシオス王は、自分に関心はないだろうと思っていたことも重なって余計に驚いたのだ。


 「わしが何も知らないとでも思っていたのか?一応お前は一国の王女だ。害はなさそうだったので放置はしていたが、まさか竜と縁を作ってくるとは・・・。」


 エレノアは叱られると思い、目をぎゅとしてうつ向いて身構えた。


 「でかした!!」


 だが、その言葉は予想すらしていないものだった。


 「え?」


 顔を上げれば、ロレンシオ王は満面の笑みであった。今まで生きてきて父であるロレンシオ王にこんな笑顔を向けられたのは初めてだと、嬉しさよりも驚きが勝っていた。


 「ふふ、竜だぞ、しかも只の竜ではない。『竜の祖』だ。」


 エレノアの目には、ロレンシオ王の表情が機嫌良く映っていたが、実際その通りであった。


 「え、えぇ私も先ほど知ったばかりなのですが・・・」


 「ふふ、そう言うわけでだ、ペルニツァ王国の話は無しだ。」


 「え?」


 まさかそんなことを言われるとは思ってもいなかったエレノアはまたもや驚いていた。


 「ペルニツァ王国に嫁ぐという話は無しだと言っているのだ。」


 「え・・・そんなことをして、大丈夫なのですか?」


 エレノアは心情的には嬉しいが、国として大丈夫なのかと国交的に気がかりであった。


 「彼の竜、カイエル殿はお前に懸想しているのだろう?」


 「え、と、その、そうみたいですけど・・・」

 

 まさかロレンシオ王の口から、懸想などという言葉を言われるとは思っていなかったので、エレノアは真っ赤になった。


 「ふふ、わしも野暮なことは言わんよ。」


 急に物わかりのいいロレンシオ王に素直に喜べないエレノアであったが、ここは合わせた方がいいと判断した。


 「あ、ありがとうございます。」


 「話し込んでしまったな、戻っていいぞ。わしからの話は以上だ。」


 「わ、わかりました。失礼します。」


 エレノアはロレンシオ王の執務室を後にした。エレノアの後姿をロレンシオ王は、何ともいえぬうすら笑いを浮かべて見ていた。







 エレノアの部屋は、カイエルの爪痕で、修復作業が必要になった為、急遽客室の二番目に良い部屋にエレノアは宛がわれた。部屋の中にある家具類はエレノアの部屋にあった物よりも数段高い物であることはエレノアも一目みるなりわかった。そしてカイエルも部屋を宛がわれることになり、カイエルは客室の一番いい部屋であった。だが、肝心のカイエルは、


 「俺、別にエレノアと一緒でいいんだけど?」


 「カ、カイエル様、さすがに未婚の婦女子とご一緒のお部屋は、エレノア様の名誉に関わりますので・・・」


 「え?エレノアが困るのか?それなら仕方ないな。」


 カイエルは、エレノアを困らせるようなことだけは絶対にしないようにしていた。





 あの時、竜の姿を一部覗かせたカイエルであったが、その後戦闘とはならなかった。カイエルが『竜の祖』であることから、侵入者扱いとはならず、むしろ臨戦態勢をとったことを詫び、その後直ぐにもてはやされることになったのだ。宰相がその場に馳せ参じ、


 「『竜の祖』様、この度は大変申し訳ございません!まさかエレノア様と交流があったとは存ぜず、無礼を働いてしまいました。ここは矛を収めていただけないでしょうか?」


 「あぁ?俺を怒らせといて、そんなんで済むと思ってんのか?」


 だが、カイエルはハーフチェンジした一部の竜化した部分を収める気配はなかった。しかしここでエレノアが、


 「カイエル、この人たちは自分の職務を全うしようとしただけなのよ。だからカイエルもお願い。許してあげて?」  


 カイエルはエレノアにお願いをされてしまえば、収めざるを得なかった。


 「・・・ちっ、しょうがねぇな。」


 エレノアに促され、カイエルは素直に竜化していた爪と羽はほぼ一瞬で解いてしまった。その様子を見ていた宰相を初め、近衛騎士の面々も驚嘆していた。


 こうしてカイエルは、早々に客室に通されることなり、エレノアは父であるロレンシオ王の執務室に呼び出されたのだった。


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