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61:カルベルス王国の滅亡~③~(過去編)

 エレノアとカイエルは、唐突な出会いから、一緒に教会に行くのが日課となり、カイエルも孤児たちの世話(主に遊び)をするようになっていた。カイエルは城と教会の道程の往復をエレノアに付き添うことを続けていた。

 カイエルは番であるエレノアの傍にいられるだけで幸せを感じていたので、焦ることはないと思い、番ではあることはまだ伝えていなかった。というか、どういう風に告げたらいいのか、わからなかったのだ。エレノアも最初こそはカイエルを不審がっていたものの、次第にカイエルのぶっきらぼうな態度の中にも優しさがあることに気付いていたので、エレノアもカイエルが番とは知らずにも、好意的な気持ちが少しづつ大きくなっていた。 

 

 カイエルは、そろそろ意を決して言わなければと思い、次に会う時は番であることを告げようと決めていた。だがその頃一方でエレノアは謁見の間にて、ロレンシオ王から想像もしていなかったことを命令されてしまっていた。




 「え・・・私をお嫁に・・・ですか?」


 「そうだ、ペルニツァ王国は知っているだろう?」


 「・・・・・はい。存じております。」


 ペルニツァ王国は、カルベルス王国の隣にある小国である。だが、ペルニツァ王国のその向こうの隣にはバランドールという魔法大国があり、ペルニツァ王国はカルベルス王国とバランドール王国の間にある国なのだ。同盟を結べば、バランドールに攻め込む際には有利になる土地であった為、ペルニツァ王国ととある協定が結ばれていたのだ。


 「ふむ、そこまで無知ではなかったようだな。」


 ロレンシオ王は、鼻で笑いエレノアを小馬鹿にしたような態度であった。


 「で、でもあそこは確か、お姉さまが嫁ぐ予定だったのでは?」


 協定では、ペルニツァ王国の王子とカルベルス王国の王女が婚姻するといった内容で、本来婚約していたのは、姉のユリアンヌだった。しかし、

 

 「ふふ、そうね。だけど事情が変わったのよ。」 


 「事情が変わったとは?」


 「先日ね、アーレンベック国のアロイス王子がいらしてね、って、あぁ貴方は知らなかったわね。」


 姉であるユリアンヌも父親のロレンシオ王と同じようにエレノアに対し小馬鹿にし意地の悪い態度をしていた。元々他国の王子の訪問どころか、今までそういう場には一度として呼ばれたことなどなかったのだから知りようなどなかった。


 「そこでアロイス王子と意気投合したのよ。確かに私は婚約してはいるけれど、ペルニツァ王国はカルベルス王国の王女と言ってるだけであって、必ずしも第一王女である私とは決まっていない訳。要は、向こうは王女であるなら誰でもいいのよ。このカルベルス王国と縁を繋げればね。であれば、一応妹である貴方でも問題はないでしょう?そして私はアーレンベック国と縁を繫げるのよ。国として悪い話ではないでしょう?」


 話を聞いて、エレノアは真っ青になった。普段からぞんざいに扱われている不義の子である自分には、政略結婚など自分には縁がないと思っていたのだ。いない者のように扱われていたことと、母親の血筋から、政略結婚の相手は自分では勤まらないであろうと。

 エレノアはいずれ城を出て教会で正式にシスターになりたいという希望は持っていたものの、もしかしたら、爵位の低い貴族のところに押し付ける形で、嫁がされるかもしれないくらいは思ってはいたが、まさか他国の政略結婚で嫁ぐことになるなど青天の霹靂であった。

 

 「お前もやっと王族として国の役に立てるのだ、嬉しいだろう?」


 ロレンシオ王は横柄に感謝しろとばりに言うが、エレノアにしてみれば有難迷惑以外の何物でもない。今まで王女として扱ったこともないくせに、今更どの口が言うのかと思ったものの、実際食べる物や着るもので不自由なく(とはいえ、最低限であるので、貴族の令嬢からすれば、粗末なものであった。)してもらった負い目があったエレノアは口答えができる立場ではないとは思ったものの、言わずにはいられなかった。


 「お、お待ちください!そんな勝手に婚約者を挿げ替えるなど、ペルニツァ王国に失礼ではありませんか?」


 エレノアはかなり気になっていた。本当に今まで婚約していた姉ではなく、突如不義の子である自分に変わるなど、ペルニツァ王国が納得するのか、ということに。


 「なによ?話を聞いていなかったの?あっちは我がカルベルス王国と縁を結べれば誰であろうといいのよ。その点私は王子と愛し合っているのだから・・・それとも何?貴方は私達が離れ離れになってもいいっていうの?」


 何か文句があるのかと、ユリアンヌはエレノアを睨みつけた。


 「そ、そういう訳では・・・」


 「そうだ、それにこれによってペルニツァ王国とアーレンベック国、二つの国と縁を結べることになるのだ。お前も王族なら個人の我儘など許されんことくらい自覚しろ!」


 エレノアの発言が我儘と捉えられたことに納得できなかったが、確かに二つの国と縁ができると言われれば、当然これ以上反論などできるはずもなかった。


 こうして、エレノアは今まで見向きもされずに王女らしい教育も碌にされていなかった為、急ピッチで花嫁修業と称し、いろいろな教育を過密スケジュールで行うことになってしまった。


 エレノアはほぼ軟禁状態で、外へ出ることはままならない状態になってしまった。そして、カイエルが待っているであろう方向の窓に向けて、


 「カイエル・・・ごめんね。行けなくなっちゃった・・・・・」


 エレノアは教会に行けなくなったこともだが、カイエルに会えなくなったことが何よりも一番堪えていた。滅多な事では泣かないエレノアではあったが、目には次第に涙が溜まり、それは頬を伝って流れていった。


 そして皮肉にも、今回のことでエレノアはカイエルへの恋心をはっきりと自覚したのだ。







 「・・・エレノア、来ないな。」


 カイエルは、教会へ行く道中の、初めて出会った『二股の大木』がいつの間にか二人の待ち合わせ場所になっていたその場所で、来るはずのないエレノアをずっと待っていた。


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