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99:ディアナの葛藤~後編~

 男は、ディアナに対して紳士的であった。次第にディアナはその男から、武器の使い方、身のこなし方を教わっていたことから、やがて師として仰ぐようになっていた。そして、自身の持つ美貌が生きていく故で、利用できるということもその男の元で学んだのだ。しばらく一緒に旅をして行くうちに、ディアナは前から聞きたかったことを口にしてみた。


 「イリス様、どうして、私を助けてくれたの?」


 「あぁ、ディアナなら俺の手伝ってほしいことに物怖じしないだろうと思ってね。そして器量がいいという条件で探していたら、ディアナが都合よかったんだ。」


 「物怖じしない?」


 「そう。君には大事なミッションをクリアしてほしいからね。誰でもできる訳じゃない。」


 『あのお方』こと、イリスがディアナに話したミッションは、『竜の祖』を魅了して番に成りすまし、ドラゴンスレイヤーを取ってきてほしいということであった。


 『竜の祖』・・・古から伝えられている竜が、近くにいると言われて驚いた。存在しているらしいとは、獣人達の間では話に上がっていたが、恐れ多い存在であるし、ましてや欺くなどと、とディアナが考え込んでいると、


 「やっぱり、『竜の祖』が相手だと怖いよね?」


 イリスは、ディアナの気持ちを見越していた。


 「わ、私よりもっと適任者がいるのでは・・・?」


 ディアナもさすがに相手が『竜の祖』と聞いて、怯んでいた。


 「そんなことない。ディアナならできるよ。俺は信じてる。」


 イリスはそう言って、ディアナに銀細工の紫の石がはめ込まれている『魅了の指輪』を差し出した。


 「この指輪を身に付けていれば、『竜の祖』に魅了をかけられる。やってくれるよね?」


 イリスは、優しい物言いでディアナに笑いかけた。ディアナはイリスに利用されていることは、この時点ではもうわかってはいたが、実際取引は成立していたし、自分がそれをしないという選択がないこともわかっていた。それに暫く一緒にいて、ディアナにはイリスに対して別の感情も湧き出てはいたが、その気持ちは尊敬の念だと自身に言い聞かせていた。


 「はい、イリス様、必ず成功させてみせます。」


 ディアナは大きく頷き、目は決意に満ちていた。



 それから、ダンフィールと接触した。一緒に過ごすうちに、ダンフィールの『竜の祖』の番の思い入れにディアナは後ろめたさを感じないでもなかった。ディアナもダンフィールの優しさに絆されそうになったことは何度かあったものの、自分は目的があって、やり遂げなければいけないことから、その思いに蓋をしていたのだ。


 なのに、まさが番の振りをしていることがバレているなど思いもしなかった。ダンフィールは、利用されているのを知りつつ、尚且つそれでも相手に尽そうとしていることに、驚きを隠せなかった。

 ディアナはダンフィールの本音を聞いて、自覚したのだ。無理やり思い込もうとしていたイリスに対しての思いが、尊敬の念ではなく、純粋に男として惹かれていたことにようやく自覚したのだ。ダンフィールに、自分を重ねて気付くことができたのだ。そして同時にダンフィールの優しさに罪悪感が湧き出てしまったのだ。


 「ディアナ・・・泣いてるのか?」


 ダンフィールは相変わらずディアナに優しい眼差しを送っていた。


 「なんで・・・」


 「え?」

 

 「なんでよ!私はあんたを利用しようとしただけよ!なのに、なんで態度が変わらないのよ!優しくしないで!」


 ディアナは苦しかった。人の気持ちを利用しようとした罪悪感に心がとても苦しかったのだ。そして同時に気付いてしまった自分の恋心にも。


 「あんたのせいで、気付きたくなかったのに、気付いちゃったじゃない!!」


 「君が俺ではない別の奴に懸想しているのは知っていた。」


 「!」


 ディアナ本人よりダンフィールが先に気付いてことに、ディアナはまた驚いていた。


 「それでも、今は一緒にいる間だけでもディアナの役に立ちたかったんだ。」


 その言葉に、またディアナの目には涙が溢れた。ダンフィールは惚れた女に為に一途に尽す男だったのだ。しかしそこへ、

 

 「あ~盛り上がってるところ悪いけど、ダンフィール貴方ははそれでいいかもしれないけど、本当にドラゴンスレイヤーを持っていかれてたら、どうするつもりだったの?」


 すかさず、イシュタルは突っ込みを入れた。


 「・・・それは、その時は身体を張って止めようと思っていた。」


 「ほんっとうに!短絡的ね!!!」

 

  さすがにこの言い分にはイシュタルは怒りを隠せなかった。そしてユージィンはディアナに詰め寄った。


 「さて、罪悪感で居た堪れなくなっているところ、申し訳ないけど君の後ろに誰がいるのか、教えてくれないかな?」


 「「「「「!!」」」」」


 その時、ディアナを除く全員がある気配がした方へ一斉に振りむいた。


 「・・・聞くまでもなかったってことだね。」


 ユージィンの目線の先には、青い髪の男が立っていた。


 「あ~やっぱり『竜の祖』相手では、あの指輪ではダメだったか。」


 「イリス様・・・・」


 ディアナは泣きはらした顔を、イリスに向けていた。


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