表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ダブり集

ドライブ

作者: 神村 律子

 外は快晴。 


 風もほとんどない。


 遠くに見える海も波は穏やかで、すでに海水浴客でごった返している。


 私は助手席に彼女を乗せ、国道を南下していた。


 日差しが強くなって来た。


「暑くないか? エアコン入れようか?」


 彼女は窓の外に顔を向けたままで何も答えてくれない。


 さっきの口論が原因だ。


 それ以降一言も口を利いてくれない。


 私は苦笑いをしてエアコンのスイッチをオンにした。


 ゴオオオッと冷気が吹き出し、瞬く間に車内は快適な温度になった。


「そんなに私と口を利くのが嫌なのか?」


 その返答もない。私は肩をすくめてハンドル操作に集中した。



 やがて私は道沿いにあるコンビニに車を停めた。


「何か飲むか?」


 しかし彼女はそっぽを向いたままだ。


「わかったよ」


 私は一人で車を降り、コンビニに入った。


「ここに置いとくよ」


 私は彼女の分の缶コーヒーをホルダーに入れた。



 車は再び国道を快調に走った。


 しばらく進むと、警察が検問をしていた。


「嫌だな、こんなところで」


 私は警官の指示に従って車を停止した。


「免許証を拝見」


「はい」


「隣の方は気分でも悪いのですか?」


「ええ。車に酔ったみたいで」


「そうですか。安全運転でお願いします」


「はい」


 私はホッとして、


「良かったよ。根掘り葉掘り聞かれたらどうしようかと思った」


 ここでようやく彼女から反応があった。


「今は切り抜けられたから良かったけど! だから言ったのよ、こっちは検問をよくしてるって! 貴方は私の忠告を無視して!」


 彼女は今まで黙っていた分を取り戻すかのように捲し立てた。


「私が間違ってたよ。国道はやめよう。脇道を進めば、いい場所があるさ」


「この車、私のなんだからね! さっさと捨てたいのよ、トランクの中の死体を!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] はじめ助手席の彼女が死体なのかと思いました。 そういうオチだったんですね。 死体の身元や経緯が気になります。 これもホラーというよりミステリですね。 しかし神村さんの溢れんばかりの発想力には…
2010/12/06 22:09 退会済み
管理
[一言] すごかったです!最後も素晴らしかったです★
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ