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今日の悪夢 令和ver  作者: 遠野しん
8/11

2019年6月5日 渇き

※グロ注意です※



口の中が乾いていた。


喉が渇く。

唾液が出ないくらい、口の渇きがひどい。

まだ意識ははっきりしていないが、口の中が乾くという感覚だけがある。

何か飲みたい…

何か飲みたい、

口の中を潤したい、それだけしか思い浮かばない、極限の状況だった。


目を開けた。

砂漠だった。


砂漠は一度も行った事がない。

砂丘も無い。

だけど、そこは砂漠だった。

日差しも強く、目が焼ける様に痛い。

目の水分が足りないのか、目がゴロゴロする。

痛い。


目だけじゃ無い。

全身が痛む。

よくよく見ると熱傷で皮膚が赤く腫れ上がっている。

腕や、足だけではなく、身体の隅々まで痛い。

ジクジクとした痛みを感じ始めた。

余す所なく全身が痛む。

叫びたくなったが、喉が乾いていて声が出せない。

うめき声も出ない。

息を吸うたびに喉が焼ける。

皮膚が焼けるくらい外気温が高いから、呼吸すらままならない。


全身の痛みより、まずは渇きを潤したい。

水が欲しい、

水飲みたい、

水…

みず

みず…


身体の痛みより渇きの方が辛い…

もしかすると人間は極限になると、痛みはそっちのけで渇きや飢えからから逃れたくなるのかも。

とにかく、何か飲みたい。

とにかく、渇きを潤したい。


水を求めて彷徨い始めた。

砂漠の、砂の上を、ありもしない水を求めて歩き続ける。

一歩一歩はすごく遅い。

身体の痛みと、渇きで体が動かない。

動かない体を、無理矢理動かして歩みを進める。

どこに向かっているのか分からない。

でも、自分の前に影があるから、南ではなさそうだ。

とにかく歩き続ける。

渇きを潤す事以外考えられない。


水みず水みず水水みず水みず水水みず水みず水水みず水みず水水みず水みず水水みず水みず水水みず水みず水水みず水みず水水みず水みず水水みず水みず水水みず水みず水水みず水みず水水みず水みず水水みず水みず水水みず水みず水水みず水みず水水みず水みず水水みず水みず水水みず水みず水水みず水みず水水みず水みず水水みず水みず水…


水が飲みたい。

水が飲みたい。


歩き続けた。

熱気で火傷が悪化した。

赤く腫れていた手足は、水膨れができていた。

水膨れは所々敗れて、体液が流れる。

少しでも渇きを潤すため、水膨れを舐める。

熱で脳が汚染されている。

水膨れが破れ、溢れてくる体液を舐めても渇きは癒されない。

その行為を気持ち悪いとか思わない。

その時はとにかく水が欲しかった。

歩みを止めて腕や足から流れ出る体液を舐め続ける。


体から体液が出なくなっても、水を求めて腕や足を舐める。

水が欲しくて肉を噛みちぎり始めた。

腕がビーフジャーキのようにパキッと割れる。

噛んでも血は一滴も出なかった。

それどころか、四肢は完全に乾燥してしまい、ヒビがはいっている。

ひび割れに沿って身体の中が見える。

中身が見えて、水が一滴もなく、

発狂しそうになる。

いや、発狂した。

が、全く癒されていない喉は渇き切っていて、声は出なかった。

どうしても水が飲みたい。


乾燥しきって動かない手足を動かすと、パキパキと音が鳴って、

乾燥した肉片が散らばる。

動かそうと思ったところから折れた。

それでも手足を動かして、少しでも前に進めようとした。

水を求めて。


水だけを求めて、体を蠢かせながら前に進む。


体も熱傷で痛むが、

それ以上に渇きの方が辛い。

顔が地面に近いから、目に砂が入り、もう目は開かない。

でも、とにかく、すこしでも、みずにちかづきたい。

みずに、みずに、

みずにちかづきたい。


体に擦り傷ができ、血が溢れても

進んだ。

血が溢れ、体からさらに体液が流れても

進んだ。

心臓や脳を動かす血液が無くなっても

進もうとした。





もう動けなかった。

全く動けなかった。






喉かわいたなぁ…






死ぬ前に、



水、飲みたかったなぁ…



最後に涙が一滴溢れた。



自分は、生きるのを諦めた。




※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


夢から覚めたら、口の中が乾き切っていた。

急いで起き上がり、


まずは水を口に含んだ。

喉の奥まで乾いているから、いきなり飲んだらむせる。


だから、口の中が潤う様に、口に水を含んで30秒数えた。


舌に水が染み込む。


カピカピで動かなかった唇が、ゆっくり戻っていく。


口に含んでいた水を吐いて、


口の中に残っていた水だけを飲み込む。


体が潤う。


満たされる。


コップになみなみ水を注いで、いっきに飲み干した。


2杯、3杯。


夢のせいで脳が水を欲していた。


だから、一息で1リットル飲んだ。


水を飲んで一息ついたら急に膀胱が反応した。


トイレで1リットルくらいおしっこが出た。


ようやく、意識がはっきりとしてきた。


渇きは人間の欲求の中で、多分だけど唯一耐えられないモノなのかもしれない。


寝ている時間はたったの30分だったが…


夢の中には何十時間も居たような気がする…


乾く夢は何度も見ているので、また同じ様な夢を見たら、その都度書く様にしよう。


めでたしめでたし。

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