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今日の悪夢 令和ver  作者: 遠野しん
4/11

2019年5月23日 追ってくるモノ


いつも通り、目が覚めて、


いつも通り、朝食を食べて、


いつも通り、シャワー浴びて、


いつも通り、通勤して、


いつも通り、仕事して、


いつも通り、退勤した。


何もかもがいつも通りだった。


何も疑問に思わなかった。


人員配置もシフト通りだったり、利用者さんも全てその日の利用者だった。


何一つ疑わなかった。








それが夢の中だって。









キキーーーーっと大きな音を出しながら、電車が駅の中に入ってくる。

え、ブレーキ音煩くね??

とスマホから顔をあげて、電車の方をみた。

車両の前に人影があった。

目を向けた瞬間に、電車がその人影を跳ねた。


ビニール袋に赤い絵の具を溶かした液体が入っていたかのような、

風船が破裂したかのようなイメージで、

その人影は爆ぜた。


そう、跳ねられたのでは無く「爆ぜた」のだ。

文字通り破裂した。

その瞬間、


やばい!飲み込まれる!!

そう思った。

夢に飲み込まれる。

夢から醒めるのがより一層困難になる。


夢だと何一つ疑わなかったのに、目の前の事象一つで夢だと無理矢理理解させられた。

ただ、そのおかげで助かったのかもしれない。


爆ぜた人影から漏れ出た赤い液体は、徐々に広がって周囲を赤く染め始めた。

侵食スピードが早い。

自慢じゃ無いか、自分は足が遅い。

というか、膝の骨を追ってから、走ったことがない。

だからできるだけ全力で歩いて脅威から逃げなければいけない。

幸いなことに、人影が爆ぜたのは後ろから二両目くらい。

自分は先頭車両のところにいた。

自分が使ってる駅は、先頭車両付近に改札口があり、改札を抜けて階段を上がればそのまま地上に出られた。


全力で早歩き。

走れないから。

全力で階段を上がり、とにかく怪異から離れるために、駅から遠かった。


実は自分は駅と職場の往復しか道がわからない。

それ以上は全く移動したことがない。

散策の興味がない社会人はそんなものだろうと思っている。


それが原因してか、

逃げた!と思った瞬間自分の知っている街に跳んだ。

ここで安堵できないのが悪夢。


後ろを見ると、世界が赤い色で覆われていくのがわかる。

怪異はここまで迫ってきていた。

自分がワープしたことで、怪異そのものもワープしてきたのだ。

流石悪夢。

自転車を見つけて飛び乗った。

自転車ならそれ相応のスピードが出せる!

懸命に漕いだ。

江戸川区の葛西臨界公園付近から、環七通りをずっと北上し、葛飾区を通過して、足立区へ。

めちゃくちゃ漕いだ。

この手の夢はまず逃げないとダメ。

逃げてから色々と状況が変わるから、状況に合わせて対処していくのが良い。


目の前に一軒の廃墟を見つけた。

この廃墟は見覚えがある。

廃墟の歩き方、という本に載ってた。

もちろん、足立区の廃墟ではない。

でも何故かそこに逃げ込まないといけない気がした。

だから逃げ込んでしまった。


広がる怪異に対して、行き止まりに逃げ込むのは自殺するのと同じ。

やっちまったー!

でも時既に遅し。

廃墟の周りを「人型」の何かが包囲した。

これ助からないやつか…

と、自転車で疲れた足を揉みながら観念した。

怪異はゆっくり包囲を狭めていく。

この廃墟は写真で見た部分以外は脳内補完されてる。

ただ、写真がモノクロだったから、全てがモノクロで作られている。

その建物を取り囲む「人型の群れ」

助からない、と観念して、でもまだ何か道があるんじゃないか、という気持ちで窓の外を見た。


絶望だった。


道なんて無かった。

じわじわと距離を詰めてくる人型の群れを再確認しただけだった。


変な声が聞こえてきた。

音と言っても良い。


うに濁点が着いた、ヴヴヴと、人型が喉から音を出しているような…

それが数百、数千といる個体から同じように音が漏れている。


次第に音が煩くなっていく。

廃墟の中に入ってきた…


ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ

ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ

ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ

ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ

ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ


低すぎる音が反響して、振動として伝わってくる。


耳元で、空気が震える…


人型の一体が手を伸ばしてきて、自分を掴んだ。

ものすごい強さで引き寄せられる!

肩を噛まれた。

庇おうとした腕を噛まれた。

二体目、三体目が足や背中を噛んでくる。

両腕が無くなった。

最初の一体目が大きな口を開ける。

自分の意識は無くなった。


次の瞬間、


携帯の目覚ましの振動で目が覚めた。


ここは本当に現実だろうか…


夢との違いは…


探っていると、スヌーズでもう一度携帯が鳴りだした。

あぁ、こっちが現実か…

大きくため息をついて、何故かパンパンになった足を軽く揉みほぐしてから朝の支度を始めましたとさ。


めでたしめでたし。






多分だが、


この物語にオチや解説を期待している人も、もしかしたらいるのかもしれない。

だが、この物語は夢で経験した「実話」であり、オチもなければ解説もない。


夢に起承転結が通用しないのと同じで、このストーリーにも起承転結は通用しない。

結だと思ったらまだ承だった!なんて事は夢の中ではザラにある。


転が来た!と思ったら目が覚めるケースもある。

夢だから仕方がない。

夢だからと言って

それを誇張するする気はないし、したところで自分の想像力では対して面白くもならないだろう。


だからこそ、

夢を夢だと受け入れられる、強い精神を持ってこれを読んでもらいたい。

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