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今日の悪夢 令和ver  作者: 遠野しん
2/11

2019年5月20日 ホラー映画で笑う私。(回想回)


胃痛がひどい。


実は、令和になって三日目に大きな事故に遭った。

一応命に別条は無かったのだが…

ただただ運が悪く、条件も悪かった。

知らないということが罪になるとは、その時は本当に思いもしなかったよ。

うん。


悪夢を見続ける原因の一つとしてはそれもあるだろう。

だが、私が悪夢を見続ける原因になったのは、学生時代まで遡る。


学生時代、私は臨床心理学科というちょっと特殊な学科に居た。

おかしな連中が集まってた。

授業中にリストカットをして救急車で運ばれるような奴もいた。

一日中ぬいぐるみに話しかけるような奴もいた。

洋服をバラバラに切り刻み、安全ピンで繋ぎ止めて着てくる変な奴もいた。

毎日毎日ターミネーターの格好で通学してくる奴も居た。

普通の大学からみたらただの怪奇だ。


私は将来的にスクールカウンセラーという職種につきたいと、常々考えていた。

だから、当時流行りだった「心の闇」というキーワードで卒業論文を作るべく、一年の頃から資料を集めていた。

それが大学三年の夏に、その資料を全て盗まれた。

当時はまだデータはフロッピーディスクを使ってて、USBメモリも16MBとかそのくらいの時代だ。

MOは持って無かったし、卒論のデータは全て書面データで持ってた。

実際に卒業論文に取り掛かるのは四年時からだから、それまでに良質なデータを大量に集められれば、良質な卒論が作れる!そう考えて、ずっと動いていた。

外部の勉強会に積極的に参加して、少年犯罪に特化したデータをできるだけ集め、データの量で言えば、A4の用紙で1500枚くらいはあったと思う。

それが全部盗まれた。

授業終わって、トイレに行って戻ってきたら、カバンはあるのに資料だけ無くなった。

犯人も分からなかったし、時期も時期なので、新しく資料を集めるのは不可能だった。

国立図書館でお金出してまで印刷した資料も、またお金出すのも馬鹿らしかった。


だから、方向転換した。

「西洋と東洋の恐怖の違い」

について論文を書くことにした。


その日から、おかしくなった。

もともとホラーが好きだった私は、一ヶ月で30本以上のホラー映画、一ヶ月で60冊以上のホラー小説を読み漁った。

映画のレビューを見て、よかったシーンを何度も再生したり、恐怖演出のシーンを何度も見返したり。

当時はVHSからDVDへの変換期で、レンタル落ちのビデオが1本300円で買えた。

安い!と思ってめちゃくちゃ書いまくった。

B級映画から、有名なタイトルまで毎日1本以上を休まず観続けた。

小説も、空いた時間を全て読書に当てるかのように、読み漁った。


その生活を二ヶ月続けたところ、


寝られなくなった。

いわゆる、不眠症である。

そう、私自身も最初からおかしかった。

同級生におかしい人が集まりすぎていて、私の奇異なんてその辺の石ころと同じ認識でいた。

それが間違いだった。


ホラーの知識が最初から人の数倍あった私は、その世界に侵食された。

寝られず、脳が疲弊を続ける中で、ホラー小説を読み、ホラー映画を観る。

第三者から見れば、異常。

他人が同じ生活したら発狂すると思う。


ホラー生活を四ヶ月ほど続けた時に、

アメフト部の友人に注意され、

「目が覚めた」


眠れず、やっと睡眠が取れたと思ったら悪夢を見て、起きている時間もホラーざんまい。

そんな生活を止めてくれたのが、同じ部活の人間だった。

私はすでに辞めていたのに、やばいと思って声をかけてくれて、その事で救われた。


実際に自分自身はホラーは信じていない。

脳が作り出す、ただの現象の一つである。

スピリチュアルとか、オーラとかくそくらえだと思う。

そんなんで他人をどうこうできるエセ人間に比べたら、アメフトタックル一撃の方が何倍も効く。


ホラーが好きだった事、卒論資料が全て盗まれた事。

不幸が重なると、人間は道を踏み外す。

そんな体験をした私は、

頑張って卒論を仕上げようとしたのだが…

半分くらい完成させたところで

「これは学生でやっていいレベルじゃない。今から題材を変えなさい」

と言われ、

おま、昨日までアドバイスくれてただろ!って思ったけど、このまま書いてても発表させられないとか言われたからどうしようも無くなった。

結局卒論は出せなかったが、一応最低単位はくれた。


その後、同じような内容の本が発売されたのは内緒である。

(調べないわけないだろ!)


とまぁ、筆者は大学時代にホラーに取り込まれて、悪夢を観る体質になった。

同じような悪夢は何度も観るし、一度しか見ていない悪夢も観る。

同じ体験する悪夢は、毎回少しずつ内容が違うので、楽しいと言えば楽しい。


ホラーを楽しめる人間は、お笑いも大好きなのである。


ホラーとお笑いは紙一重なところがあり、ホラー映画で笑う人は恐怖と笑いの紙一重を体験している人であり、

(笑うという感情が怒りの表現の一種であるということも、微量に関係しているのだが)

臨戦態勢だから笑うのではなく、陳腐だから笑えるのです。

お笑いも陳腐だから笑える。

ホラーってそういうものだから。


恐怖を感じたければ、心を無防備にすればいい。

それなら誰でも恐怖を感じられる。


でも、


恐怖を売り物にするのはただの詐欺である。

あ、お化け屋敷とかホラー映画じゃないよ?

心霊現象だの、幽霊だのお祓いだの、この世に存在しないモノでお金を稼ぐのは詐欺。

オカルトに侵食されたからこそ、全ての心霊現象は脳が作り出した錯覚、というのが理解できたよ。


もし自分と同じように数ヶ月間オカルト生活できる人がいるのなら、その人の精神力はこの世界で上位に入ると思う。

その精神力があれば、事故に巻き込まれても切り抜けられると思うよ。




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