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第6話 デート


 アクセサリー屋を出た俺たちは、運のいいことにパスタ屋さんの看板が目に入ったので、もう少しその道を進んで行った。


「このお店、雰囲気良さそうだし、ここにしない?」


「高くないかな?」


「大丈夫。お金のことなら心配しないで」


 なんだか、今日の京子はお姉さんモードになったようで妙に優しい。


 その小さなお店に入ると、まだ午前中だったせいか、数人しかお客さんはいなかった。


 二人席についてメニューを見ると、そこそこの値段がする。


 お店の人がやって来たので、俺は無難にスパゲティーのミートソースを、京子の方は、ラザニアとかいう料理を頼んだ。


「祐介、スパゲティーだけで足りる?」


「多分足りない」


「大盛にしておけば?」


「そうだな。

 すいませーん、さっきの注文、スパゲティーは大盛でお願いします」


 問題なく大盛に注文が変更できた。


 料理が出てくるのを待っている間、


「ねえ、祐介、わたしたち、今デートしてるのよね」


「第三者的に言えばそう見えるかもな」


「なに訳の分からないこと言ってんのよ」


「いや、だって、いつだって一緒に出歩いてたじゃないか?」


「今日は特別なの」


「そう思うのなら、思えばいいんじゃないか」


「何よ。祐介は、わたしのこと意識しないの?」


「うん? 何が言いたいのか分からないけれど、いつも意識してるぞ」


「そういうんじゃなくて、ほら、女の子として」


「いや、ちゃんと意識してる。京子は女だ、間違いない」


「もう」


 京子が何を言いたいのか分からないまま、二人で話をしていたら、料理がやって来た。


 俺のは大盛だけあって、それなりの量のスパゲティーが皿に盛ってあったが、京子のラザニアなる料理はかなり小さな器に入ったものだった。


「京子、そんなので足りるのか?」


「そんなに食欲があるわけじゃないから、これで十分なの」


「そうかー? 前はもっと食べてたよな」


「レディーは小食なの」


「それならそれでいいけどな」



 俺の頼んだスパゲティーのミートソースの大盛りは無難な料理だけあって、それなりの量、それなりの味で満足できるものだったが、京子は自分のラザニアを半分も食べずに残してしまった。


「大丈夫か?」


「大丈夫。気にしないで」


 そうはいっても、京子がこれほど小食なのは、なんか気になる。


 食後にコーヒーが付いていたので、俺はコーヒーを、京子はコーヒーは断り、水を頼んでいた。



 パスタ屋さんを出て、


「祐介、食事もしたし、そろそろ帰ろうか?」


 そういう京子の顔が少し青ざめているような気がした。


「少し顔色が悪いような気がするけど、大丈夫か?」


「大丈夫よ。でも、少し疲れが出て来たようだから、帰ろ」


「分かった」


 その店でも、支払いは俺の分まで京子がしてしまった。京子はいったいどうしちゃったんだろう。


「本当にいいのか?」


「いいの」




 店を出て、そのまま近くの横断歩道で通りを横切り、帰りのバス停まで歩いていくと、いくらも待たずバスに乗ることができた。


 乗ったバスの中には、空席が一つだけあったのだが、よほど京子は疲れが出ていたようで、さっさとその席に座ってしまった。いままでの京子ならこんなふうにさっさと席に着くことはなかったと思う。


 なんだか嫌な予感がし始めた。


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