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第4話 予兆


 京子と連れだって、夕方帰宅する。


 道すがら話す内容は、何それのドラマの何々がどうとか、歌手グループの中の誰だれがどうとかが主な内容だ。俺の方は、テレビはあまり見ないので、京子が話しているのを聞いているだけだ。たまに相づちを打たないとふくれるので、タイミングを見て、「そうなんだ」とか話に合っているのかどうかわからないが適当に言葉を挟むようにしている。


「ケフン、ケフン。それでね、……」


 夢中になって話している途中で、京子がよく咳をする。今まで気にしていなかったのだが、今日はやけに気になる咳だ。


「なあ、京子、本当に、体の方は大丈夫なのか?」


「大丈夫に決まっているじゃない」


「それならいいんだけどな」


「でもね、最近、歯を磨いたとき、歯ブラシに血が付いてたりすることがあるし、たまに立ちくらみもすることがあるの」


「よくは分からないけれど、一度お医者さんにてもらった方がいいんじゃないか? 微熱もあるって言ってたろ」


「やっぱり、祐介もそう思う? お母さんもそう言ってたんだけど」


「なんともなければ、みんなも安心するんだし、もし何かあっても早ければ早い方がいいんだろ?」


「それじゃあ、次の土曜日に開いている病院に行ってみるわ」


「そうした方がいいよ」


「そういえば、祐介、次の日曜空いてるわよね」


「空いてることは空いてるけど、なんでそう決めつけるんだよ?」


「空いてるんならいいじゃない。お父さんが動物園のチケットもらってきたんだけど一緒に行こうよ」


「悪い、前から言ってるけど、俺は動物園のあの臭いがダメなんだ。水族館ならいいぞ」


「そういえば、そうだったわね。たしかにちょっと独特な臭いがあるものね。それじゃあ、水族館でもいいわ」


「動物園のチケットはいいのかよ」


「いいの、いいの」





 そして、約束の日曜日の朝。


「それじゃあ母さん行って来る」


「気をつけてよ。京子ちゃんによろしくね」


 待ち合わせ場所は近くのバス停で、9時に集合なので比較的朝はゆっくりできる。


 水族館の前を通るバスの時刻は9時5分。待ち合わせ場所に遅れると京子はすごくうるさいので、9時10分前にバス停につくよう家を出た。


 バス停は家から、数分の場所なので、ちゃんと待ち合わせの10分前についたのだが、これまで遅れることはあっても、一度も俺より早く待ち合わせの場所に到着したことのなかった京子がすでにバス停に立っていた。京子以外にバス停でバスを待っている人はいなかった。


 春めいた薄めのカーディガンにブラウス。ふわっとしたスカートをはいた京子は、普段見慣れている俺から見ても、ドキリとするような美少女だった。


「おはよう祐介。ちょっと、早くついちゃった」


「おはよう。初めてじゃないか? 京子が俺より早く待ち合わせの場所についてるなんて」


「そんなことはないと思うわよ」


「どっちでもいいけどな。そういえば、きのう病院にいったんだろ、どうだった?」


「検査の結果待ち。お母さんが後で先生に呼ばれて何か話していたけど、何を話しているのかは聞いていないわ。何ともないんじゃない。とりあえず栄養剤の点滴を昨日は打ったんだけど、そのおかげか今日は少し調子がいいわ」


「そうだったんだ。点滴なんて俺はしたことないけど、どうだった?」


「思ってたほど痛くもなかったし、時間はかかったけれどそれだけ」


「ふーん。何ともなかったのなら安心だけど、結果が良ければいいな」


「ありがと」





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