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第3話 生徒会


 いろいろな意味で吹っ切れた俺の学年末試験の成績は、もちろん京子には及ばなかったものの思った以上に良かったようで、軒並み成績はアップした。


「あら、祐介もやればできるじゃない」


「あら、裕ちゃんやればできるじゃない」


 上が、京子のお言葉。下が母さんのお言葉。何だかこの二人似てきてないか。




 そして迎えた新学期。新しいクラスは3年A組、京子もどういう訳か俺と同じA組だった。


 俺は、京子(あいつ)のせいで結局生徒会の会計ということになった。会計が何をする仕事なのかはいまいち分からないが、会計というからには数字を足したり引いたりしておけばいいんだろう。言われた仕事をただ淡々とこなしていけばいいのだろうが、今のところ何も言われていないので何もすることがない。


 放課後の今、生徒会室の中には生徒会のフルメンバーがそろっている。会長の京子、副会長のやせた黒ぶち眼鏡の男子生徒、書記の銀縁メガネで三つ編みの女子と色黒のショートヘアの女子。それに会計の俺の五名。銀縁メガネの女子は見た目はきつそうな感じの女子で、色黒のショートヘアはおっとりした感じの女子だ。


 他の四名がどういった意味があるのか俺では見当もつかないような議論を続けている中、俺は、長机の隅の方の席に座って、今日もじっとしている。それだけだ。


 ときおり、京子が俺に意見を求めてくるのだが、もとよりノーアイディアなのだから、「そうだな」といっておく。『肯定文』ならばその場をやり過ごせる。まちがって『否定文』で返してしまうと理由を聞かれてしまうのでそこだけは慎重に対応している。


 何をしていようがしていまいが、時間は過ぎていくわけで、生徒の帰宅時刻を報せるチャイムが鳴ると、俺はそそくさと生徒会室まで持ってきたカバンを手に帰宅する。


 これがあと一年近く続くのか。この無駄で無意味な時間を俺に返してくれ!



 俺が、生徒会室を出ると俺を追うように黒ぶち眼鏡がでてきた。どうも俺に用があるようだ。


「松田くん、きみもう少し真面目にやってくれないか?」


 こいつ、変わったヤツだな。俺が真面目にやる、やらないがこいつに何か関係があるのか?


 黙っていたら、京子が出てきて、


「何一人で帰ってるのよ!」


「帰宅時間だから、なるべく早くうちに帰らないといけないからな」


 黒ぶち眼鏡を無視して京子に返事をしたら、黒ぶち眼鏡は「チッ!」っと舌打ちして帰って行った。よほど俺のことが気にくわないらしい。京子は先ほどの黒ぶち眼鏡が俺に言った言葉は聞いていなかったようだ。


「帰る方向が一緒なんだから、勝手に一人で帰らないでよ」


「へいへい」


「返事は、『はい』一度だけ」


「はい」


「ねえ、さっき何かあったの?」


「何も」


 黒ぶち眼鏡が俺に言った言葉自体は聞こえなかったようだが何かあったのは気付いていたのか。


「なあ、俺、生徒会()めたいんだけれど」


「あら、そう。それなら代わりの人を見つけてきてよ」


 俺にそんなことを頼めるような友達はいないのを見越しての発言だと思うが、今に見ておれ。自分から生徒会の役員になりたがるヤツは必ずいる。それなら俺の友達である必要はないからな。


「祐介、わたし最近疲れやすくなったのよね。以前はこんなことなかったのに。ということで、私のカバンも持ってくれる?」


 この程度のわがままは大したことがないので、黙って京子からカバンを受け取った。


「あら、今日はいやに素直なのね」


 そういえば、疲れやすいと今言った京子の顔なのだが、以前より顔色が悪いような気がする。気のせいかもしれないが、少し青白い。


「なあ、京子、どこか体の調子が悪いってことはないか?」


「うーん、ちょっと微熱が続いているのよ。風邪って感じじゃないんだけどね。なに? 祐介、心配してくれているの?」


「それはそうだろう」


「あら! ありがと。でも大丈夫よ」







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