6. オタクとチャラ男と私
間地緒 拓朗は、心の底から、悲しみ、反省していた。
そして、ミワちゃん似バーチャルアイドルのポスターとフィギュアに、土下座して謝罪するという、どこからどう見ても危ない行動を繰り返していた。
「ぉぉぉぉおんっ…… ごめんよう、ボクのミワたんたち……っ! 本物の方が良いと思っちゃうなんて、ボクはどうかしてるんだ……! うううっ!」
しかし、そんな彼の視界の隅で、ピョンピョンと跳びはねるモノたちがいた。
もちろんそれは、未来miniたちによるmini文字である……!
――― ちなみにmini文字とは、miniたちがマスゲームのように並び文字を形成することによる、人間との意志疎通手段のことだ。―――
『ソ レ デ イ イ』
「なんだって……?」
涙を止め、虫たちの動きに注目する間地緒。
その目の前で、miniたちは次々と文字を作っていく……!
『ダ イ ジ ョ ウ ブ』
『オ マ エ ハ イ イ ヤ ツ』
「そ、そうかな……?」
『セ イ ジ ツ』
『ヤ サ シ イ』
『キ ン ニ ク』
「ええ……と……? ま、まあ…… 言われてみれば、そんな気も、するような……?」
照れと誉められた嬉しさで、間地緒の表情は、少し明るくなったようだ。
あと、ひと押しである。
初代皇帝たちの指示により、未来miniたちは張り切って、どんどんと文字を組んでいった。
『ジ シ ン ヲ モ テ !』
『ノ ゾ ミ ハ ア ル!』
『マ ッ ス ル デ ハ ッ ス ル !』
………………
………………
……………… ついに。
「よし、なんだか元気が出てきたぞ!」
間地緒 拓朗は、立ち上がった!
『ソ ノ イ キ ダ』
『サ ア 、 コ ク ル ン ダ』
『H u r r y U p !』
miniたちの激励に、「うん!」 と力強くうなずき、駆け出す間地緒。
――― 目指すは、憧れのミワちゃん宅である。
¤*≅¶©*@«º*≅¿≡<↑£
「ミワさん……? それにあれは……!」
マッスル効果で息ひとつ切らさずに、彼女の家まで駆けつけた間地緒 拓朗は、我が目を疑った。
その玄関前にいたのは、久々に汚部屋から出てきたミワちゃん。
そして、かの腹黒生徒会長 兼 ファッションモデル、池馬・Chara・Haragley。
……彼は、当然の如くに、壁ドン顎クイでミワちゃんに迫っていたのである……!
「俺、間違ってたよ…… 君が、金と顔目当てとか、そんなハズないのに…… 君がいなくなってから、やっと、それに気付いたんだ……!」
「い、池馬くん……」
ミワちゃんも、満更でも無さそうだ。
頬を赤らめ、ウットリと池馬を見つめている。
「信じてた…… いつか、わかってくれるって……!」
「信じてくれたのか……! 俺みたいなヤツを……! ありがとう……!」
「池馬くん……!」
「ミワちゃん……!」
そして、池馬の尖った口がミワちゃんの唇にゆっくりと近づき……
<<とりあえず、ストーップ!!>>
寸前で、止まった。
©*@«とº*≅¿が、タイムマシンに乗り、時間を止めたのである。
<よく、こんな機能まで搭載していたな、º*≅¿くん>
<いえいえ、ちょっとした趣味ですよ>
<いやいや、さすがはminiイチの科学者>
<いえいえ……> <いやいや……>
仲良く忖度合戦しつつ、ふたりは意識を集中して池馬の思念を読む。
もし、本気で彼が反省しているなら、作戦を練り直さねばならなくなるからだ。
――― が。
<……真っ黒だな> <ですね>
どうやら、池馬は美少女ハーレム作りにも飽き、今度は純粋なミワちゃんを再び騙して、信頼させた所でモデル仲間に売り飛ばし、恥辱の果てに裏DVDを流通させ、ほとぼりが冷めた頃にSNSで裏DVDの噂を流し、徹底的に嘲笑って遊んでやろうと……
そんなことを、考えているらしい。
<失血死させますか?>
º*≅¿の問いに、いや、と首を振る©*@«。
<それでは、第2の池馬が現れた時に対応できまい>
<なるほど、では……?>
<良い考えがある>
<さすがは©*@«様>
<いやいや……> <いえいえ……>
©*@«は、次々と未来miniたちに指示を出していった。
――― しばらくして。
<<<用意できました!>>>
<<<スタンバイOKです!>>>
未来miniたちの合図が揃ったところで。
©*@«とº*≅¿は、腰をかばいつつ小さくジャンプし、号令を駆けたのだった。
<<作 戦 開 始 …… !>>