3. タイムマシンと引きこもりと私
miniイチの頭脳を持つº*≅¿と、その12番目の弟子≡<↑£。
彼らは試行錯誤を繰り返した末、ついに……
『未来が見えちゃう機械』 を 『未来にイッちゃう機械』 へと改造することに、成功したのだった。……そして。
ある、晴れた日の午後。
とある離島の天然記念物、ウラオモテヤマイヌの背では、ささやかな別れの宴が繰り広げられていた。
離島に住むminiたちが、リーダーを未来へ送り出すべく、集結したのである。
タイムマシンに乗り込む©*@«とº*≅¿を、ピョンピョンと続けざまに跳ねつつ見守るminiたち。
身を捩るようなアクロバティック宙返りを披露して悲しみを表現するのは、≡<↑£である。
「©*@«様っ! º*≅¿師匠っ……!」
「うむ、達者でな」
©*@«は、腰を押さえつつ1回転スピンを披露した。
「す、すぐに…… 帰ってきて、くれますよね……っ!」
「私がいなくても、君は、立派にやっていけますよ」
上司に忖度した半回転スピンで、優しく弟子を諭すº*≅¿に、≡<↑£は高速スピンで反論する。
「いやだぁぁぁっ! ボクにはまだ、師匠が必要なんだぁ……っ!」
「すぐ帰るよ」
©*@«は前を向いて号令をかけた。
「いざ、出発……!」 「はっ……!」
「「「行ってらっしゃぁぁいっ!」」」
miniたちの思念に押されるように、タイムマシンはふわりと浮き上がり、木々の梢を縫って飛行しはじめた。
……数瞬の後。
強烈な爆発音と共に、光が弾けた。
「「「「うわぁぁっ!」」」」
思わず地面に倒れ伏したminiたち…… しばらくして、彼らが恐る恐る起き上がった時。
タイムマシンは、もう、どこにも見えず、後には 「せんせえ……っ! ご無事で……っ! 」 と、ひとしきり涙に暮れる≡<↑£の姿があったのだった。
¤*≅¶©*@«º*≅¿≡<↑£
それから約10年後にあたる、未来。
<<<<………………はぁぁ………………>>>>
ミワちゃんの部屋には、未来のminiたちのタメイキのような思念が、溢れていた。
彼らの視線の先にいるのは、敷きっぱなしの布団の上にだらしなく寝転がり、スマートフォンの画面に見入る、1人の少女。
母親ゆずりの容姿は、人間基準ではかわいらしい部類に入るはずだが……
その顔は今、だらしなく緩んでいる。
「うへへへへ…… い・や ♡ そんなに…… 見ちゅめないでぇっ♡ ケイゴきゅん……♡」
<あの……そろそろ、着替えないと……学校に遅れます>
「うるさいっ」
遠慮がちに思念を発したminiのひとりが、ミワちゃんの猫パンチにふっとんでいく。
ミワちゃんは人間には珍しく、miniとコミュニケーションがとれる、という特技があるのだ。
……だが今やそれは、ミワちゃんにとっては、小うるさい雑音が聞こえるだけの能力と化している。
<あああ……ご先祖様から頼まれているのに……っ やはり 『失恋からの汚部屋引きこもり病』 は遺伝してしまうのであろうか……っ!>
<いや、遺伝とは言えないさ、きっと……>
さめざめと嘆きの思念を迸らせる彼を、仲間たちが慰めた。
<母は恋愛ゲームで壁ドンされるより、正統派RPGで範囲魔法をぶちまかしてモンスターを虐殺する方が好きだったそうだし……!>
<母はゲームだけでなく、昼ドラ・アニメ・マンガまでオールラウンド鑑賞していたそうだし……!>
<それにな>
新たな思念が、汚部屋の片隅から朗々と響いた。
<母の部屋の方が荒れ具合がまだマシだった!>
<その通りです!>
ハッとして振り返る未来のminiたちの目に映ったのは―――
――― ぷすぷすと煙を上げるタイムマシンと、年を取った、だが堂々としたオーラを放つふたりのmini。
タイムマシンでの未来への移動は、若干オーバーヒート気味ながらも、無事に成功したのだ。
<<<<ああっ、あなた様方はもしや……っ>>>>
<うむ、言うてみよ>
<<<<初代皇帝と初代お小姓……っ!!!!>>>>
<…………うむ…………> <…………一部に誤りはあるものの、ほぼ正答、といったところでしょうか……>
ズザザザザザザザザッ…… 次々とジャンピング土下座を決める未来のminiたちに、©*@«とº*≅¿は実に複雑な気持ちでうなずいてみせたのだった。