7話
入学してから二週間、自分が高校生であるという実感はそこまでない。しかし、授業は本格的に始まり、新しい教科書、真っ白なノートを開き、板書する。元々、勉強に自信があった訳ではないが、早くも高校の勉強の洗礼を受け、この先、どうなるのかという不安には見て見ぬフリを決め込んだ。
ホームルームの時間、配布物が回り、先生が話し始める。
「来週からは部活動の仮入部が始まるので、部活に入りたい人はどの部活にするのか決めておいて下さい」
やっと部活が始まる。自分の気持ちが昂っているのが分かる。
部活は中学生の頃と同様、陸上部を選んだ。恵一は結局、サッカー部に入ったらしい。部活が始まり、最初は中学時代と違うハードな練習に付いて行くのがやっとだったが、徐々に慣れてきた。
しかし、それとは裏腹に勉強の出来はとても悪い。一年前期という序盤で、確実に周りから遅れを取っている。最近行われたテストでも未来に付きっ切りで教えてもらい、ギリギリのところで赤点回避に成功した。
今日は私、恵一、未来、七崎君でお弁当を食べる。一緒に帰ることも部活が始まってからはなくなり、四人話すのは久し振りだ。それに、いつもは私と未来で昼休みを過ごしているため、四人でお弁当を食べるのは初めてのことだ。今日は未来が声をかけて、四人で食べることになった。
「今度の祝日なんだけど、四人で遊園地にでも遊びに行かない?陸上部もサッカー部も休みだし」
「どうしたの?急に」
「だってさ、私達、せっかく高校生になったのに高校生らしいこと何もしてないじゃん!だから、皆でパァと遊びたいなぁって、どう?」
「私は行きたい!」
「俺も大丈夫!」
私と七崎君は未来の提案に賛同する。
「戸倉は?」
私達は口にご飯を運びながらスマホを操作している恵一を一斉に見る。
「・・・・・・ん?ごめん、聞いてなかった」
皆で呆れ、私は未来の提案を恵一に話した。
「俺はパス」
え?
「何でよ?その日、源も戸倉も何も予定ないでしょ?」
「予定はないけど、俺、人混み好きじゃないし」
恵一は予想通りの答えを出す。そして、恵一は再びスマホに目を向けた。
恵一の人混み嫌いは昔からで、知ってはいたものの、もしかしたらと願った僅かな希望が潰え、気分は急落下、肩を落とした。
私が落胆していると、耳が壊れてしまうのではと思うほどの爆音が轟いた。その爆音は未来が思い切り机を叩き付けた音で、隣に座っていた私からは表情が分からないくらい目の前に座っていた恵一の顔に身を乗り出して、近づけている。
未来が鳴らした音が教室中に響き、その反響が消えていくのと同時に教室は静まり返った。未来の突然の行動は私を驚愕させ、教室にいた全ての生徒は息を潜ませ、目線を釘付けにする。
「行く、よね?」
「えっと・・・・・・うん、行く」
未来は恵一から離れ、椅子に座ると、満面の笑みで私に親指を立てた。
「じゃあ、今度の祝日は四人で遊園地に行くってことで!」
未来の威圧に負けた恵一は溜息を漏らしていたが、私は飛び跳ねたい気持ちを必死に堪え、喜びを噛みしめた。