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PRECIOUSGIRLS~瀬川咲菜MEMORY~  作者: 近江玲也
第1部
16/25

16話

 カーテンを閉め忘れ、顔を照らす眩しい朝日が目元でチラつき、目が覚める。開ききらない目を擦り、スマホを見ると、高校に行くには少し早かったが、二度寝をする時間もなく、とりあえずベットから起きて、顔を洗いに洗面所がある一階へと降りた。


階段を下る途中に何もないのにつまずく。洗顔をしようとしたら、二度目の歯磨き。着替えるために部屋に戻ったにもかかわらず、何をするかを忘れ、しょうがなく一階のリビングに行ってから思い出し、もう一回、部屋へと戻る。


明らかに集中力に欠けていた私はその状態が抜けないまま朝ご飯を食べ始め、案の定、注ぎ過ぎたお茶を机に零した。その場にいたお母さんと一緒になってお茶を拭き、溜息を吐きながら席に座った。


 「昨日、未來ちゃん達と遊園地行ったんだっけ?」


お母さんは中でスライスチーズがとろけた卵焼きを箸で割り、口へと運んだ。


「うん」


「ケイ君もいたんだよね?」


「そ、そうだよ」


頭をよぎった昨日の恵一の顔を洗い流して消し去るようにお茶を流し込む。


「ケイ君、元気してる?」


「うん。いつも通りだったよ」


「そっか。それで・・・・・・・・・」


「・・・・・・何?」


タイミングの悪いお母さんは核心を言う前に口いっぱいにトーストを頬張った。急かす私に手のひらを見せて、コーヒーを口に運ぶ。そして、トーストと一緒に喉を通過した。


「・・・・・・ごめん、ごめん。それで、どうしたの?フラれちゃったの?」


「え!ど、どうして!?そんなことないよ!お母さん、何言ってるの!?」


口へと運んでいたトーストを寸前で手を離し、落としかけたところを慌てて掴んだ。


「そうなの?」


「そ、そうだよ。違うよ。そんな訳ないじゃん!私が恵一に・・・・・・もぉ、朝からびっくりさせないでよ」


苦笑いしながら、饒舌な口を閉ざすように手近なトーストを口に運び、お茶で流し込んだ。


「そう・・・・・・」


「そうだよ!」


私をジト目で見てるお母さんの視線を意識しないようにと頭の片隅に置きながら、トーストにかじりついた。


「・・・・・・ヨシッ!咲菜も食べ終わったら早く学校行きなさいよ!」


「え?あ、はーい!」


お母さんは明らかに不自然な私に深くを聞くことも、何を言うこともなく、席を立った。そして、キッチンに行き、鼻歌交じりに洗い物を始める。私も残り少ないトーストを食べきり、学校へ行く準備を始めた。


 学校は賑やかで人の往来が絶えず行われる、いつもと変わらない日常が広がっている。


私も昨日のことは微塵も感じさせないように、その日常に足を踏み入れた。


「咲菜、おはよう」


後ろから軽く背中を叩いたのは未来だ。


「おはよう。七崎君もおはよう」


一緒に来ていた七崎君とも挨拶を交わし、そこで七崎君とは別れ、未来と席に向かった。恵一の姿は席にはなかった。


「咲菜、昨日は直ぐ寝たの?」


「え?うん。どうして?」


「連絡帰ってこなかったから」


「え!?何か連絡してたの!?」


急いでスマホを確認すると、未來から、数件メールが来ていた。


「ごめん、昨日、家帰って直ぐ寝ちゃって・・・・・・」


「大丈夫、大丈夫。そうかなぁとは思ってたから」


いつもならスマホは肌身離さず、持ち歩き、何回も確認するが、今回は見ようとも思っていなかった。


 チャイムが鳴り、恵一の席を見ると、そこにはいつもの気の抜けた表情の恵一が居た。恵一は昨日のことをどう思っているのだろう。一日経っても後悔は大きく膨らみ、恵一がどう思っているのか気になっても聞くことは出来ずに迷路を彷徨う心にはモヤモヤが溜まった。

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