11話
「ここ?覚えてるよ」
「本当!?覚えてるの?」
「うん、そんな驚くこと?」
あまりにも驚く私に恵一はちょっと引き気味。
「観覧車止まった時のでしょ?」
「そう!」
自分から聞いたことだが、恵一がちゃんと覚えていてくれたことが嬉しかった。
「あれは本当にビビったなぁ」
「え?」
「え??」
?
「いや、ビビるでしょ。咲菜だって泣いてなかった?」
恵一の顔を見ても嘘を言っているようには思えず、わざわざ嘘を言う理由も分からない。しかし、私の中の恵一の記憶とは少し違っていた。
「そろそろだよ」
「あ、うん!そうだね!」
恵一が言っていることをもっと聞こうとすると、すでに私達の順番が回ってくる頃だった。引っかかることはあるが、取り敢えずはメリーゴーランドを楽しむことにする。
「恵一はどれか乗りたいものある?」
「空いてるので良いんじゃない」
そんなことを話している最中にも列は進み、私達の順番だ。
「はい、ここまでです!もうしばらく、お待ちください」
私達はギリギリ一番最後に滑り込み、打ち切りとなった。しかし、不幸なことにほとんどの席が埋まってしまっていた。
「恵一、どうする?どこも空いてないよ」
「あそこ空いてる」
恵一が指をさした方には一つ空いている場所を見つけた。
嘘でしょ。
それは二人乗り用のかぼちゃの馬車だ。
「あれで良い?」
「え、あ、う~ん、うん!あれにしよう!」
恵一と二人で唯一空いていたかぼちゃの馬車に乗り込む。天井が低く、それほど広くない狭い空間だで、恵一の顔は直ぐ横にあった。心臓の鼓動は早くなり、恥かしさで恵一の方を向くことが出来ずに俯いた。
「どしたの?」
「えっ、な、何でもないよ」
「・・・・・・そっか」
恵一から顔を背けると、その先にはさっき乗ったジェットコースターが見えた。陽気な音楽が鳴り始め、メリーゴーランドが動き出す。しばらくの間、恵一を見たり、見なかったりを繰り返し、徐々に恥ずかしさよりも近くで恵一を見られることが嬉しくなった。
「―――――――未来達が乗ってるの多分あれだよ!」
無言の気まずさに耐えかね、先も考えずに話し出す。
「うわっ!あれ、何が楽しいんだろう?」
「スリル、とか?」
「全然分からないや」
「私もそんなに」
普通に話せてる?
声が上ずっていなかったか、思い出した。考えながら下を見ると、無防備に私の手の側に置かれた恵一の手を見つける。さっきはしっかりと見ていなかったが、恵一の手は昔よりも大きくて、逞しい男の人の手をしていた。そして、それと同時にジェットコースターで繋いだ感触が蘇る。。
もう一回、もう一回だけ・・・・・・。
恵一の手は空いていて、少し手を伸ばせばその手に触れることが出来た。自分の中に対立した本能と理性は感情を惑わし、行動を迷わせる。それでも、未来の言葉を思い出し、覚悟が決めて、恵一の手に触れた。
「・・・・・・何?」
恵一は冷めた声で聞いて来た。