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PRECIOUSGIRLS~瀬川咲菜MEMORY~  作者: 近江玲也
第1部
10/25

10話

 ちょっと待って!?聞いてない!聞いてない


未来の突然の提案に恵一はなぜか観念したような表情。そして、私に手を差し出した。未来の提案と恵一の行動に混乱し、考えをまとめ終えることも出来ず、頂上にへと辿り着く。


落ちる直前の一瞬の静止、振り絞った勇気で、恵一の手を握る。


「キャァァァァァ」


ジェットコースターは凄まじい速さで急降下。そして、ぐるっと一回転。恵一の手の温もりを感じる余裕すらなく、噂以上にハードなジェットコースターだ。未来と七崎君は手を挙げて叫んでいたが、恵一は怖くないのか声も出さずにじっとしていた。


 ジェットコースターのスピードが落ち、スタート地点に帰って来た。未来と七崎君は壊れたように笑い続ける。私は放心状態で乱れた髪を直す余裕もなく、未来に呼ばれて急いでジェットコースターを降りた。恵一と繋いだ手はいつの間にか離れていた。


「咲菜、髪凄いことになってるよ」


歩きながら未来に言われ、髪を直す。


「うん、ありがとう。・・・・・・・あっ、そうだ!」


「何?」


未来の耳元に近づき、小声で話し始める。


「さっきの何?びっくりしたよ」


「あれ?ダメだった?」


「ダメじゃないけど・・・・・・」


「今日は手を繋いで、恵一に咲菜のこと意識させようってことだったから、つい!」


未来は舌を出し、手を合わせて許しを請う。未来が言ってくれなかったら、恵一と手を繋ぐことは出来なかったと思う気持ちもあり、もう一言が出なかった。


・・・・・・・・・あれ?


「恵一?」


私が振り返り、駆け寄る時、恵一の顔色は酷く悪く、壁にもたれて立ってはいたが、今にも倒れそうだった。


「恵一、大丈夫?」


人混みにだけ気を取られ、忘れていた。恵一は絶叫マシーンも苦手なのだ。


「・・・・・・無理、ちょっと・・・・・・・・・休憩」


恵一は荒くなった呼吸の合間を縫って何とか会話。七崎君が恵一の肩を担ぎ、近くのベンチまで誘導した。ベンチに座ると恵一も少し落ち着いて来た。


「ケイ、大丈夫か?」


「うん。ちょっと、休憩すれば大丈夫。三人で回ってて」


「心配だから私が残るよ。二人で回ってきて」


私がそう言うと、未来は七崎君を連れて別のアトラクションに移動して行く。


 持って来ていた水筒を恵一に渡し、中に入っているお茶を飲むと顔色も大分良くなった。


「一緒に行かなくて良かったの?」


「うん、私も休憩したかったし」


「そう」


恵一と話していると、私の携帯が鳴った。未来からだ。


「ねぇ、未来達がさ『ジェットコースター結構並んでるから何かテキトーに遊んでて!』だって」


「まだ乗るの?」


「そうみたいだね。未来、ここのジェットコースター全制覇するって言ってたから」


この遊園地は多種多様なジェットコースターが揃っていることで有名なのだ。


「休憩したら何か乗る?」


「そうだね、何乗る?」


「じゃあさ、メリーゴーランド乗ろうよ!あれなら恵一も大丈夫でしょ」


「分かった。じゃあ乗り行こ」


「え!?もう?大丈夫?」


「大丈夫」


恵一が立ち上がり、歩く後姿を見て私も立ち上がった。未来からのメッセージには続きがあり、『ガンバレ!』と。これを再確認し、自分を奮い立たせて恵一を追った。


 歩いていると、行列の最後尾を見つけ、二人でそこに並んだ。並んでいる最中、私は昔のことを思い出す。


「ねぇ、恵一、昔、一緒にここ来たの覚えてる?」

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