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PRECIOUSGIRLS~瀬川咲菜MEMORY~  作者: 近江玲也
第1部
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1話

青春と衝撃を・・・・・・・

 『咲菜、好きだよ』


――――――――夢だと気付き、溜息を吐きながら身体を起こして、時計を見る。明らかな寝坊を確認し、それまでの眠気は一気に吹き飛んだ。優雅な朝を過ごす暇は当然なく、急に始まった忙しない朝、家の中を端から端まで往来する。


努力は報われず、予定時刻の十五分遅れが限界だった。急いでローファーに足を入れ、軽く制服のシワを伸ばし、玄関にある鏡で前髪を整え、扉を開ける。天気予報は見事に的中。今日は一点の曇りもない快晴の空が出迎えた。これなら新品のローファーを汚す心配もないだろう。


「咲菜、早く行くよ」


お母さんに声をかけられ、開いていた門扉を閉める。そして、今日から始まる高校生活の不安とそれを大きく上回る期待と共に歩き出した。


 最寄り駅に到着すると、私達を待つ男の子とそのお母さんが居た。男の子は壁にもたれて、耳にイヤホンをして、スマホを操作している。目に少し髪がかかり、私よりも背の高い痩せ型のその男の子は私と同じ高校の制服を着ていた。


お母さんが二人に手を振ると、母親の方がそれに気付き、手を振り返す。


「ゴメン、待った?」


「大丈夫、大丈夫。私達も今来たから。咲菜ちゃん、制服似合ってるね」


「ありがとうございます。恵一、おはよう」


「おはよう」


お母さんと恵一のお母さんは学生時代からの友達で、恵一とは世間で言う幼馴染だ。同じ保育園、同じ小学校、同じ中学校。ずっと一緒だった私達は同じ高校に進学した。今日はお母さんと恵一のお母さんが連絡を取り合い、入学式を一緒に行くことになっていた。


 改札口に向かう時も、ホームに着いてからも、お母さんと恵一のお母さんは絶え間なく会話をする。二人の仲の良さは今日も健在だ。私もそんな二人の会話に入りながら、二人の一歩前を歩く。恵一はそんな私達のもっと後ろでスマホを弄りながら黙って付いてきた。


 ホームで少し待つと、私達が乗る電車がやって来た。電車に乗り、私はお母さん達と話していた。暫くの間、夢中になって話していると、恵一の姿がないことに気付く。


電車内を見渡すと、イヤホンをして目を瞑っている恵一を見つけた。窓から差し込む太陽の光は座席に座り、腕を組んで、頭を壁に預けている恵一の穏やかな寝顔を照らしている――――――。


私は恵一の姿に目を奪われていることに電車が止まって、やっと気付いた。


「着いたよ」


恵一の肩を軽く叩き、声をかける。恵一は目を擦りながら窓の外の駅名を確認して、立ち上がり、一緒に電車を降りた。


電車を降りると、そこには同じ制服を着た、全く知らない顔がいくつもあった。高校生活の始まりが直ぐそこまで来てるのだと、改めて気づかされ、気分が高揚する。そんな中、横を見ると本能に忠実に間抜けな顔で大きな欠伸をしていた。


「どうした?」


恵一に問いかけられ、自分が恵一を凝視していたことに気付く。


「えっ?いや、緊張感無いなぁって思って」


「咲菜も緊張してないでしょ」


「まぁ、そうだけど。でも恵一は気が抜け過ぎ」


「・・・・・・そう?」


「うん、そう」


呑気だなと呆れながらもその肩の力が抜けてる姿こそが恵一なのだ。


「寝れた?」


「まぁ、それなりに」

『PRECIOUSGIRLS~瀬川咲菜MEMORY~』1話を見ていただき、ありがとうございます。

これは『CROSSMEMORIES』というシリーズで、その中でも『瀬川咲菜』にスポットを当てた作品です。他にも作品がいくつかあるので、お時間ある時に覗いてみてください。

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