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7 おなまえ

雲の上から落ちてきて、もう何日か経ったと思う。

まだあまり体調が良くよくない私は、この何日かずっとえどにいとあどにいとしぇるが遊んでいるのを見ているばかりだった。たまに遊んでもらったけど、見てるのも結構楽しい。お友達も一緒にいてくれるしね。


その間ぱぱとままは仕事へ行っていたし、ひゅーにいとうぃるにいは学校へ行っていた。

そして、今日はやっとみんながお家にいる日。私は朝からずっとひゅーにいに抱っこされている。



「アテナ?寒くない?」



心配そうな顔をしながらそういうひゅーにいに小さく頷けば安心そうに笑ってくれた。

きっと私の体温は低いらしいから触れていると心配になるんだろう。でも、今はブランケットで包まれているし、ひゅーにいも抱きしめていてくれるから全然寒くない。



「みんな!ちょっとこっちに集まって。大事な話があるの」



えどにいとあどにいとしぇるが遊んで、ひゅーにいとうぃるにいが私の周りにいてくれる中、私たちに声をかけたのは、ぱぱと一緒に部屋に入ってきたままだった。

いつも笑顔のままだけど、なんだか緊張した様子で私たちの方を見ている。

その様子にみんな気がついたのか、すぐにその言葉に従って話を聞けるようにソファに座った。



「…母上、話というのはアテナのことですか?」



ぱぱとままがなかなか話し出さないことにヤキモキしたのか、ひゅーにいが前のめりに質問をした。

そしてその質問を聞いて、覚悟を決めた顔をしたぱぱとままは一瞬お互いに目を合わせた。



「あぁ。まずはアテナに質問がある」


「しつもん?」



質問ってなんだろう?雲の上の話とかはあんまり話せることはないかもしれないなぁ。だってずっと逃げているだけだったから。



「アテナは俺たちと出会う前のところへ帰りたいと思ってるか?」


「まえの?」



予想外の質問に驚いてしまった。

出会う前ってことは雲の上ってことだよね?いやだ!絶対に戻りたくない!

そう思うけど、急にそんなことを聞かれた意味を考えて、すごく怖くなってくる。

私、またあの怖いところへ帰らなくちゃいけないの?でも帰れないよ。きっとここから雲の上へ帰る方法なんてないと思う。

私は翼で空を飛ぶ練習なんてしたことないし、雲の上までは届かない。

そうとなると、もしかしてみんなと離れ離れになって追い出されちゃうのかな?

そこまで考えて、自分でも涙が出てくるのがわかった。



「アテナ?どうした?なんで泣いてる?どこか痛いところでもあるのか?」


「ごめん、なさい…」



私の顔をじっと見つめていたぱぱが慌てたようにそういうのが聞こえて、また涙が出てきた。

みんなのことを知っちゃったらもう前のところになんて戻りたくない。

お友達が心配そうに私の周りに集まってくるのがわかる。



『アテナ〜だいじょうぶだよ〜』


『こわくないよ〜いやなこともないよ』



お友達はみんなそう言ってくれるけど、怖くてみんなの顔が見れない。

ぎゅっとひゅーにいの腕に力が篭ったのがわかった。



「アテナ、俺たちと家族になってくれないか?」


「え…?」



家族…?

次に何を言われるのかと身構えていた私は、その言葉を聞いて驚いた。

ぱぱたちと家族になる?

でも、ぱぱやままやひゅーにいたちのことはそう呼んでいるだけで、本当にぱぱやままやおにいちゃんというわけではない。それは私でも知ってるんだ。家族ではないって。

だから怖いの。いつでもポイってできてしまうから。



「アテナが俺たちと家族になってくれるって言ってくれるなら、ずっと一緒にいられるんだ。

もちろん、強制はしないよ。アテナのしたいようにすればいい。帰りたいならどれだけでも力になる。だから、アテナ?アテナはどうしたいんだ?」


どうしたいか、なんてそんなこと決まってる。

どこまでも優しくそう言われて、気がつけばさっきまで溢れていた涙が止まっていた。

ぱぱとままはソファから立って、私の前まで来てくれていた。

2人は私に笑いかけてくれる。その笑顔が大好きで、大好きで。離れたくない。



「わたし…かぞくになりたいっ…!」



みんなとずっと一緒にいたい。

私がそう言えば、ぱぱとままがほっとしたように息をついて、ひゅーにいたちが嬉しそうに笑った。



「あぁ!俺たちと家族になって、ずっと一緒にいような、アテナ」


「アテナちゃん。あなたは私たちの大切な娘よ!」



いつの間にか抱き上げられていた私は、2人にぎゅっと抱き締められていた。



「それでな、アテナ。ちょっと難しい話かもしれないけど…家族になるために名前とかを書いて偉い人に見せなきゃいけないんだ。アテナがよかったら俺たちにも新しい名前をつけさせてくれないか?もちろんアテナという名前も入れるよ」



新しい名前?アテナという名前以外にもぱぱとままからもらえるの?

それって……なんだかすごく嬉しい!

もちろんアテナという名前は大好きだ。私の大好きな人にもらった名前だから。

でもその大好きな人と同じくらいみんなのことが大好きなんだ。



「うん!うれしい!」



私が大きな声でそう言えば、みんな驚いた顔をしたけど、すぐに笑ってくれた。



「あぁありがとうアテナ。

じゃあアテナの新しい名前は、リリーシャイン。リリーシャイン・アテナ・フローライトだ!

愛称はそうだな…リリーでいいかな?」


「りりー!」



綺麗で優しい雰囲気の名前!すごくすごくうれしい!

ありがとう、と笑顔でいうと、みんなが笑って私のことをリリーと呼んでくれた。

アテナと呼ばれるのもいいけど、2人につけてもらった名前で呼ばれるのも同じくらいうれしい。血は繋がらなくても本当の家族になれた気がする。



「あと…いくつかリリーに聞きたいこともあるんだ。

まずは今の自分の歳はわからないのか?」


「としは…わからない」



そもそもきっと雲の上では歳という概念はなかったと思う。ひゅーにいに教えてもらってどういう意味なのかはわかったけど、今までは何歳かなんて問題になったことはなかった。

雲の上に住んでいる者たちはすごく長生きだからかな?


その後も何問か質問をされた。わからなくて答えられない質問はあったけど、正直に言えばぱはすぐに違う質問をした。



「よし、ありがとう、リリー。これから楽しいことも嬉しいこともずっと一緒だからな」


「そうよ、リリー。いろんなことを一緒にやりましょうね!」



ままの目はキラキラしている。かわいい娘が欲しかったのよ!というままはなんだか怪しそうな笑みを浮かべていたけれど、まあ気にしないでおこう。


その日の夜。眠っていた私はふと目が覚めた。

両隣にはままとぱぱが眠っていて、ホッと安心して息をついた。



『アテナ』



私の名前を呼びながら近づいてきたお友達。

やっぱりリリーと呼ばれるのもいいけど、お友達にはアテナと呼ばれたいなぁ。起きたてのちょっと寝ぼけた頭でそう思った。



『アテナ、ぼくになまえをちょうだい?そしたらずっとアテナのそばにいれるから』


「なまえ?」


『そう。アテナもリリーっていうなまえをもらったでしょう?ぼくもほしい』


『わたしもほしい!』


『ぼくも!』



いつのまにか近くに来ていたお友達が私にアピールをする。

みんな私のことが大好きと言ってくれて、すごく嬉しい。だからみんなに名前をつけてあげようと思ったのに、私に最初に話しかけてくれたお友達がストップをかけた。



『だめだよ、そんなにいっきにつけたらアテナのふたんになっちゃう!』


『そうね!じゃあこんかいはちゅういせいれいのわたしたちだけつけてもらいましょう!』


『うん!それはいい!』



お友達は話し合いで解決したのか、何人かだけ私の目の前に来てくれた。


そして全部で6人、名前をあげた。

1人目は風属性のサフィ。女の子。

2人目は水属性のアクア。女の子。

3人目は火属性のルベラル。男の子。

4人目は土属性のネフラ。男の子。

5人目は光属性のレイラ。女の子。

6人目は闇属性のシャーム。男の子。


名前をつけてあげると、みんな一瞬光に包まれた。そして手のひらに乗るぐらいの大きさしかなかったのが、私と同じくらいまで大きくなった。でもすぐに元の大きさに戻ったんだけどね。

どうやら自分で自在に姿を変えれるようになるらしい。

そして、みんなにいろいろなことを教えてもらった。


まず私がお友達としてずっと一緒にいた子たちは精霊だったらしい。

この世界では普通大体の人が自分の属性の精霊の加護を受けるのだけど、私は全属性持ちだからたくさんの精霊が私のところにいてくれて、ずっと守っていてくれた。

そして精霊たちはあまり男女の区別はなく、途中で自分で決めるんだって。

雲の上では男女なんて区別しなかったけど、私はこの世界でいう女の子らしい。ママと一緒だって。

あと精霊についても教えてもらった。上位精霊と中位精霊と下位精霊がいて、今私が名前をつけた子たちは全員中位精霊になったんだって。他の子たちはみんな下位精霊。これからどんどん成長していくらしい。

他にもたくさん教えてもらったけど、まだまだ理解できなかった私。

そのうち眠たくなってきて、気がついたら眠ってしまっていた。




この前、初めて感想をいただきました。本当にすごくすごく嬉しかったです。これからも頑張りますのでよろしくお願いします!

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