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6 えどあどしぇる

次の日もまたぱぱとままに挟まれて目が覚めた。

そして同じようにみんなで一緒に朝ごはんを食べた。それからは昨日とは違くて…



「ひゅーにい、うぃるにい、どこいくの?」



ひゅーにいとうぃるにいが服を着替えて、何処かへ行こうとしていた。

2人が着ている服は色合いとかはちょっとずつ違っているけど、デザインはほとんど一緒だ。雲の上にいたときもそんなにきれいな服は見たことはなかったからちょっと驚いた。こんなにきれいな服もあるんだね…



「アテナ、僕たちは学校へ行ってくるよ。その間エドたちと仲良くしてね」


「がっこう?」



がっこうって何?ひゅーにいもうぃるにいもいっちゃうの?

2人がどこかへ行ってしまうことが悲しくて、怖くて、涙が出てきた。



「アテナ、大丈夫だよ泣かないで。僕も兄上も夕方になったら帰ってくるから」


「そうだよ、アテナ。ちゃんと帰ってくるから。家にはエドたちもいるし侍女もいっぱいいるから怖いことないよ」



2人はそう言いながら私を抱きしめてくれた。そして泣いている私をひゅーにいが抱き上げて背中をポンポン撫でた。うぃるにいも横から私の手を握ってくれる。



「あら、アテナちゃん泣いちゃった?」



その時、後ろからままが来た。私はぱぱに連れられて部屋を出てこの玄関に連れてこられた。でも今はぱぱはどっかへ行ってしまって姿は見えない。



「はい…アテナ大丈夫だからね、いってきます」


「ヒューもウィルも頑張ってね。ほらアテナちゃんも一緒に2人を見送ろうね。いってらっしゃい」


「いって、らっしゃい…」



初めて言ったその言葉の響きはちょっと不思議なもので。でもなんだか心がポカポカした。この心のポカポカは雲の上から落ちてきて、みんなに出会ってたくさん起きてる。

すごくすごく嬉しいんだ。



「うん、アテナ行ってきます」


「アテナ行ってきます」



ひゅーにいもうぃるにいもそう言って出て行ってしまった。2人が行ってしまうのはすごく悲しいけど、私は2人の言葉を信じる。今まで何も信じれなかった私だけど、みんなのことは信じたいって思ったんだ。

でも、そう思ってるのに、目からは涙が出てきた。頭と体は別々みたいだ。

そんな私を何も言わずに抱き上げて、歩き出したまま。どんどん歩いてついたのは、家族だけのリビングのような場所。



「エド、アド、シェル、今日はアテナちゃんも一緒に遊んでね」


「アテナ!うん、わかったよお母様!」



部屋に入ってすぐにそう言ったままに、元気よく返事をしたのはえどにい。あどにいは静かにおもちゃの剣で遊んでるし、しぇるはなんだか不機嫌そうにそっぽを向いている。

私は部屋にあったソファの上に下された。寒くないようになのか、ふわふわのブランケットをかけてもらった。そしてかけてくれた侍女の方にままの優しい微笑みを真似て笑いけると、一瞬でも驚いた顔をしたけど、すぐに顔が真っ赤になって頭を下げて下がって行っちゃった。



「ごめんね、アテナちゃん。今日は私もアルも急なお仕事が出来ちゃったの。3人と一緒に待っててくれる?」


「…うん」



そっか…ぱぱもままもいなくなっちゃうのか…ひゅーにいたちが行っちゃうくらい悲しい。でも、ここはいってらっしゃいって見送らなきゃいけないんだよね?



「まま、いってらっしゃい」



悲しいけど、すごく悲しいけど頑張ってそういえば、ままはちょっと驚いた顔をしたけど、笑ってくれた。



「ええ、アテナちゃん。いってきます」



そう言ってチュッと私のおでこにキスを落としてくれた。それはいつの間にか部屋に来ていたぱぱも一緒で。ぱぱとままはえどにいたちのおでこにもキスを落としていた。



それからちょっとドタバタしたように急いで家を出て行ってしまったぱぱたち。ひゅーにいたちのように玄関でのお見送りではなかったけど、ちゃんと‘いってらっしゃい‘と言えたのはよかった。


そして残された私たちは…



「アテナ!一緒に遊ぼう!ほら!」



部屋に私たちだけになる(侍女と護衛はいるが)と、えどにいが満面の笑みで渡してきたのは…剣?!子供用に作られたものではあるけど、どう見ても私が遊べるようなものではない。

そしてその剣は、あどにいのものだ。だってえどにい私の目の前であどにいの剣奪って私に渡すんだもん。びっくりしちゃった。

ちなみにあどにいは何も言わないけど恨めしそうにえどにいのことを見ている。



「エドワード様。アテナ様はまだそのように遊ぶことはできないかと思われます。もっと静かに遊ぶ方が良いでしょう」



そうえどにいに言ったのはえどにいの後ろにいた人。この人はいつもえどにいの後ろにいる。

本当にありがとう。流石にその剣では遊びたくないなぁ…



「そうか!まだダメだな!でも…どうしようか…」



次はどのような遊びにしようか、考え始めたえどにい。

その時、何か不穏な空気を感じたのか部屋に私のお友達がたくさん入ってきた。



「わあ!アド!精霊たちがいっぱいだ!」


「…ほんとだ」



そのお友達を見て驚いた声をあげたえどにいと、じっと見つめるあどにい。

でもしぇるはそのお友達が見えないのか、キョロキョロしている。え…?どうして見えないんだろう?すぐそこにいるのに。

どんどん集まってきて、私の頭や肩に止まっていくお友達たち。

あ、そう言えばえどにいが精霊たちと言っていたけど、どういうことなんだろう?



「アテナすごいね!アテナの周りにいっぱい止まってるよ!」



興奮した様子のえどにいはそう言ってお友達たちを触ろうとしたり、追いかけていたけど、いつの間にか剣を使って遊び始めていた。

えどにいもあどにいも剣が好きなのか、ずっと2人で遊んでいる。

その間私としぇるは特に何もすることはない。まだ体がちょっと重たく感じる私はソファに座ってそれを眺める。

隣に座っているしぇるもそれは同じだった。


そしてお昼ご飯を食べた後は、しぇるも混ざって遊び始めた。


リビングから移動して、ちょっと大きな部屋へ移った私たち。その部屋でも私はずっとソファに座ったまま3人のことを眺めていたけれど、楽しそうに走り回って遊ぶ3人を見ているとなんだか私まで楽しくなった。


いつかはこんなふうに私もみんなで走り回って遊べますように。

雲の上にいる時も憧れていた。お父さんとお母さんがいて遊んで笑えるような生活を送りたい。

ただそれだけだったのになぁ…たった一つの願いをも奪ったあの怖い人たちのことを思い出して、身体が震えた。


もう思い出したくもないのに。

























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