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5 フローライト家3

ピヨピヨと小さな小鳥の鳴き声が遠くの方で聞こえた気がした。目を瞑っていてもわかるくらい強い光が顔に当たっている。ん…眩しいな…

薄目を開けてみれば、近くにある窓から燦々と光が入ってきているのがわかった。小さく目を開けていって、その光に目を慣らす。そしてやっと目を開けた時、自分がぱぱとままに挟まれて寝ていることに気がついた。

二人とも私のことを抱きしめて寝ているから、すごくすごくあったかい。雲の上にいた時は寒さなんて感じたことがなかったのになぁ…なんて考える。何か特別な力でも働いていたのだろうか。あの怖い人たちがそれをやっていたのかな?



「ん…アテナちゃん…?」



ままの声がして、ままのことを見るとまだ眠そうに私のことを見ていた。



「まま…」


「どうしたの?ままもぱぱも一緒にいるよ。大丈夫」



ままは私が何かに怖がっていると思ったのか、そう言って優しく撫でてくれる。そんなままを見ていると、反対側からぱぱに抱きしめられた。いつのまにか起きていたらしい。ぱぱは私に何を言うでもないけど、ギュッと抱きしめられているだけで、なんだか安心するなぁ。



「もう少し寝ていてもいいのよ?朝ご飯まではあとちょっと時間があるから」


「あさごはん?」



ふと聞こえてきたおいしそうな響きに心が惹きつけられた。

今までは森のなかで見つけられる木の実や果物を探して食べていた。動物を捕まえることもできない私はお肉なんて食べたことはない。見かけても私が逃げる側だったし…



「ええ、朝ごはんよ。…あ、そういえばアテナちゃんの分頼んでこなくちゃ」



ままが何を言っているのかわからなくて、コテンと首を傾げる。それを見てままがちょっと笑った。そして私を抱き上げておでこにチュッとキスをするとぱぱに渡した。ぱぱは驚いたみたいだけど、ちゃんと私を抱き上げてくれた。



「アル、ちょっとフランにアテナちゃんの朝ごはんのこと頼んでくるわね。私が戻ってくるまでアテナちゃんのこと見てて」


「あぁ、わかった。任せとけ」



そう言ったぱぱの声にはちょっと自信がこもっていた。

そして、ままが出ていってしまった。なんだか寂しくて、しょぼんとすると私の様子に気が付いたぱぱが、自分と向き合わせになる形に体の向きを変えた。

ままより見上げなきゃいけないくらい高い位置にぱぱの顔がある。ん…ちょっと首が痛いな…



「アテナ、おはよう。今日はアテナのお兄ちゃんになる人たちに会わせるからな。楽しみにしてて」


「ひゅーにい?」



お兄ちゃんならひゅーにいのこと?ってそう言うけど、ぱぱは笑いながら首を振る。



「俺の息子はな、5人もいるんだ。昨日のヒューは一番上のお兄ちゃんだな。一番下のお兄ちゃんは4歳になる。アテナとは歳が近いかな?」


「…とし?」


「アテナ…自分の歳がわからないのか?」



歳ってなんだろう。雲の上にはそんなものなかった気がする…でも、私と歳が近いってことは私も持っているものなのかな?

たまにぱぱとままとひゅーにいの言葉はわからないものがある。雲の上ではただ毎日を必死に生きていた感じだったから、理解できないのか?

ぱぱの顔が強張ったように感じたけど、すぐに優しい笑顔に戻っていたから違う気もする。

どうしたのかな?



「…楽しみしておいてな、最初は慣れないこともあるかもしれないけど、みんな良い子だから」



お兄ちゃんか…私はたぶんひとりっこだけど、前はお兄ちゃんもいたな…ん?前っていつのことだ?私は確かに雲の上で一人っきりだった。お友達はたくさんいてくれたけど。そういえば、今までにもこういうことがあった。見たことも触ったこともないのに使い方がわかっていたり、今だってぱぱとままとひゅーが言っていることが理解できる。これは…なんだろう。


そんなことを考えているとままが帰ってきた。ままは私に「アテナちゃん!もうすぐご飯よ!フローライト家のご飯はすっごくおいしいからね!」と興奮したように言っていた。

そのあと、ぱぱは違う部屋に行ってしまって、ままは着替え始めた。知らない人が入ってきて、ままが着替えるのを手伝っていた。本当はもっとたくさんの人に手伝ってもらって着替えるらしいけど、ままはほとんど手伝ってもらっていなかった。

着替えたままはとてもきれいだった。私が今まで見た人の中で一番きれい!



「よし、アテナちゃん!行こうか。もう私の子供たちは集まっていると思うわ。ご飯食べる前に紹介するね」


「…おにいちゃんたち?」



ままの言っている子供たちはぱぱが言っていたおにいちゃんたちのことだよね?

そう思いながらままを見上げれば、ままはニコニコ笑ってよくわかりました!と頭を撫でてくれた。

ちなみに今はちゃんと自分の足で歩いています。抱っこされているのも良いけど、なんだか恥ずかしかったからね。あ、服はままが着せてくれました!雲の上にいた時はずっと同じ服を着ていたからなんだか新鮮です。背中から生えている翼はままが服を切って出せるようにしてくれた。ありがとう、まま。


ままとたくさんお話ししながら歩いていく。どこに向かっているかはわからないけど、まあいいや。とりあえず歩く。歩く。歩く。

そうしてちょっと疲れてきた頃に、そこについた。



「…まま、ここ?」



ままの足が止まったのは、なんだかちょっと大きな扉の前。なかからは騒がしい声が聞こえてくる。あ、ひゅーにいの声。



「そう。ここでいつもご飯を食べているの。アテナちゃんのお兄ちゃんたちもいるよ!さあなかに入っちゃおう」


「、あ」



心構えなんてする暇なく開いた扉。思わず漏れてしまった間抜けな声は誰にも聞こえていないと信じたい。

開いた扉の先にあったのは、大きなテーブル。椅子もたくさんある。

そして、その椅子に座ってテーブルを囲んでいる人。そのなかにはぱぱやひゅーにいの姿も見えた。



「みんな、おはよう」



ままがそういうとそこにいた人が全員「おはようございます」と言葉を返した。

ぱぱとひゅーにいと、あと他に4人もいる。



「では、みんなに紹介します!みんなの妹のアテナちゃんです!」



そして突然始まった私の紹介。びっくりして体がカチンと固まった。え、ど、どうしよう…

ぱぱとひゅーにいは優しく笑ってくれているけど、他の人は何を思っているかわからない。

戸惑いながら何も言えずにいると、ひゅーにいが私ところへきてくれた。



「アテナ、おはよう。昨日はよく眠れたかな?」


「あ…ひゅーにい…おはよう」



いろんな人に見られているから緊張しながらそう答えると、ひゅーにいは優しく笑って私を抱き上げた。そのまま私をすごく見ている人たちのもとへ歩いていく。



「アテナ、紹介するね。僕の弟たち。こっちから順番にウィル、エド、アド、シェルだよ」



こっちと指をさした先にいたのは、ひゅーにいの次に背が高い人。

淡い空色の髪の毛に、シルバーの瞳。そういった色合いはひゅーにいにあんまり似ていないけど、雰囲気が一緒だ。とっても優しそう。

エドと呼ばれた人はアドと呼ばれた人と髪の毛の色も目の色もまったく一緒だった。淡い緑の髪の毛に淡い空色の瞳で、私を見て目を爛々と輝かせて楽しそうな顔をしている。でもアドと呼ばれた人は全く一緒の顔なのに全然違う。何も思っていないような顔の筋肉が動いていない。ただ瞳だけは穏やかだった。

最後のシェルと呼ばれた人は緑がかったシルバーの髪の毛とグレーっぽい空色の瞳だった。この前私に向かって怒鳴っていた人。ちょっと怖くなったけどひゅーにいが抱っこしていてくれたから大丈夫だった。



「うぃるにい、えどにい、あどにい、しぇるにい…しぇる」



覚えるようにみんなの顔を見ながら名前を呼ぶ。んーでもなんだかみんなの顔が赤い。なんでだろう?私の舌がうまく回ってないから?特にうぃるにいとしぇるなんて全然舌がまわらない。あ、しぇるはなんだかにいってつけない方がいい気がしてつけなかった。なのに…



「なんで俺はシェルにいじゃないんだ!」


「まあ、いいんじゃないか?」



怒るしぇるだったけど、私をだっこしたうぃるにいに宥められていた。

うぃるにいはすっごくもう驚く程すっごくひゅーにいに似ていた。笑い方とか話し方とかね。おかげで私もすぐに懐いた。でもひゅーにいはなんだか寂しそうな顔をしたのですぐにひゅーにいのだっこに戻った。そうするとひゅーにいはまた嬉しそうな顔をするのでなんだか私も嬉しい。


そうしてみんなと仲良くなったところで朝ごはんを食べた。フランという料理長が作ってくれたらしい私用の朝ごはんはすごく美味しかった。小さなパンを3つもくれた。


朝ご飯のあとは、ひゅーにいとうぃるにいが遊んでくれた。どうやら学校に通っているひゅーにいとうぃるにいは明日になると学校に行っちゃうらしい。だから今日遊んでくれるんだって。すっごく楽しかった。


そんなこんなで、家族みんなと出会った日が終わった。


























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