第二話
4月27日(月)
部屋の窓から太陽の光が差し込んでいる。そのせいで目が覚めてしまった。昨日、寝る前にカーテンを閉めたらよかったと後悔している。
スマホの時計を見るとまだ朝の6時だった。こんな朝早くても外がこんなに明るいと春を感じる。窓から見える景色に誘われ気がつけば外を出歩いていた。
桜も大半は散ってしまい、道に落ちている。僕は桜が一番可哀想な花だと思う。他の花に比べとても美しくこの町に彩りを与えてくれ、人々の心を魅了し楽しませてくれる。しかし、それは一瞬のことであり、今ではただただ、踏まれる花でしかない。
色々なことを考えていると、歩いて10分の所にある公園に着いた。いつもの風と違いとても心地よい。いっそのこと、ここで一日を過ごそうかと考えるほど僕の心を魅了していた。
そろそろ家に帰ろうかと思い歩いてきた道を戻った。
時計を見ると6時40分だった。
この時間はお母さんがまだ寝ている時間だ。
お母さんは薬学と医学の2つを研究している所に勤めている。
会社はいつ出勤してもいいらしく、母は7時起きで8時30分に家を出ているらしい。
家の前に着くと玄関が音をたてて開いた。
「あ、おはよう。母さんね、今日主張があって帰るの遅くなりそうだわ。晩御飯までには帰るからお願いね」
相変わらず忙しそうな母だ。
僕の家は母親しかいない。父とは昔に離婚したらしい。残念ながら僕には記憶がないのだ。だから、父親との思いでなど一欠片もない。そして、僕には同い年の妹もいたらしい。双子ではなく、施設から預かった子供だという。
昔、母に「その子の名前を教えて」と耳にタコができるくらいに話したが教えてくれなかった。
結局今考えれば、どうでもよいことだ。
僕はすぐ席に座りご飯を食べた。10分位で食べ終わり歯磨きと顔を洗い制服に着替えた。時計を見るとまだ7時20分だった。
中学は徒歩で15分の距離だったので今出たらあまりにも早く着いてしまうと思った。
考えた結果、勉強をしようと思いカバンから問題集を取り出しノートを広げ解き始めたが、朝ということもあり掃除機の音、赤ちゃんが泣く声、様々な音が邪魔をして集中することが出来なかった。
時計を見れば7時33分だった。学校は7時45分から登校が許されるのでいいかと思い家を出た。
いつも歩いている道は少し雰囲気が違っていた。歩いている人が違うのだ。スーツをキッチリと着たサラリーマンや高校生が大半を占める。いつもと違う感じで少し緊張してしまった。
学校には7時50分に着いた。席に着き問題集を解き始める。
一瞬の時間も無駄にしないと思い手を止めずに解いていく。
集中すればするほど時間が過ぎるのが分かる。回りの声が段々うるさくなってくるのだ。
すると、誰かに肩を叩かれた。こんなことをする人は麗香しかいないと思ったので無視をした。すると、肩を叩いたり、揺らしたり、大きなこで叫んできたりした。もちろん無視したが、クラスの皆からの視線が増える気がした。
「ちょっと、翔!無視ってひどくない?」
これでもかと思うほどの大声で彼女が言ってきた。その瞬間クラスが静まりかえった。
「はいはい、おはようございます麗香さん」
「おお!やっと返事してくれた。そういえばあの子と最近どうなの?」
「普通。特になんの変化もないけど」
彼女と初めてあってから2週間が経つ。週に1,2回、彼女の病院に行っている。(先生が強制的に)
初めはあまり喋らなかったが、このままだと拉致があかないので「まず、お互いを知ることが大事」と言いお互い色々話した。趣味、特技、家族構成などなど。今では普通に話すようになったが、まだ彼女と壁があるような感じがする。
「えー、進展とかないの。よくあるじゃんラブコメの定番でさ、初めてあった2人がだんだん恋に落ちていき、よくよくは付き合うてきな」
「は?何が恋愛だそんなのバカバカしい。付き合う人のほとんどが人を表面だけで判断してる。だから嫌なんだ。人は心を見て判断しなくちゃいけない。恋愛というのはな...」
「はいはい、分かりましたー。あ、そういえば、まだ彼女の名前聞いてなかったね。何て名前なの?」
「ああ、『小鳥遊 咲』だけど」
と言うと麗香の表情から笑顔がなくなった。
「ん?どうかしたか?」
と言うと、麗香は我に戻りひきつった顔で
「ねぇ?私もそのお見舞いに行ってもいいかな」
「うーん、どうだろう。明日、彼女の所に行くからそのときに聞いてみる」
「うん!分かった。よろしくね~」と言い、彼女は立ち去り、自分のクラスに戻って行った。
しかし、去り際の彼女の顔はいつものように穏やかな顔ではなかった。