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君との想いでの華   作者: 辻野夜海
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第一話

僕は昔から不器用だった。

親は自分に何でも一位を取らせたかったらしく、沢山の習い事をさせられた。

サッカー、野球、習字、水泳、数えられないほどやらされた。

しかし、僕はどれも出来なかった。最終的にたどり着いたのは勉強だった。

勉強はやるだけ成果が出るからだ。学校では毎回学年1位、全国模試では全国3位だった。

昔、学校である人にこう聞かれた。


「何で君って勉強ばっかするの?」


「何でって、僕にはこれしかないからだ。」


4月7日


今日が始業式である。

僕は今年で中学三年生となり受験生でもある。

平凡な風景が桜の花に彩られて豪勢な春色を演出する時期でもある。

最初はこの景色に見とれていたが、今ではもう飽き飽きしている。


「おーい!(かける)

後ろから僕を呼ぶ声がした。振り向くと麗香(れいか)だった。

「おはよう、麗香」


ー赤星 麗香 僕の幼なじみで、唯一親友と呼べる友達だ。

彼女は学校内でも人気が高く男子からの告白が絶えないという。

そして、彼女が僕と仲が良いことに腹を立てている男子もいるらしい。

「ねえねえ、知ってる?」


「何が?」


「今日、転校生が来るらしいよ」


「僕には関係のないことだよ」


「相変わらず冷たいなー。そんなんだから彼女の一人も出来ないんだよ」


「学生の本業は勉強だ。恋愛などいらない」


「でた!真面目くん」と言う彼女を無視して、学校に向かう。


学校に着くと、二年生のクラスに行きそこで先生が生徒の名前を呼びその後に新しいクラスの発表をする。

周りの男子や女子は「キャーキャー」叫んでいる。

別にクラス替えなど心底どうでも良い。

約10分でクラスの発表が終わりすぐに新しい三年の教室に向かった。

そのクラスには麗香もいた。

「やったね!また今年は同じクラスだね」

と言ってくる彼女に対し

(今年も最悪な一年になりそうだ)と心の中で思った。


その後は教科書や問題集などを沢山渡され、クラスの目標決めや、一人一人の自己紹介をした。

転校生は引っ越しに手間が掛かっているらしく、2,3週間は来ないと先生から報告された。

この日は12時頃に下校し帰ってそのまま勉強した。


ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー

4月10日


気づけば電車の中に居た。

どこで降りるのだろうと思っていると

「次は、凪公園、凪公園」と、アナウンスがなった。

「凪公園で下車」と持っていた紙に書いていたのでその通りに下車した。

その後は病院への道が書かれており駅から徒歩10分で着く距離だった。

受付で彼女の病室を聞きその部屋に向かった。

初めて会うからか、心臓がバクバク鳴っている。

意を決してドアを開けた瞬間、


目が覚めた。


今の時刻は朝の7:00、なぜか頭痛がする。からだが重い。

親が朝食を準備してくれていた。

「あら、あはよう翔」


「うん、おはよう母さん」


「顔色悪いけど、どうしたの?」


「ちょっと頭痛がする」


「大丈夫?病院行く?」


「そんなの大げさだよ。すぐに治る」


「ならいいけど...」


食卓には珍しくフレンチトーストとコーヒーがあった。

これは大体母がめんどくさくて手を抜くときの朝食だ。

これを見ると毎回(昭和のサラリーマンかよ)と思ってしまう。

食べた後、すぐに歯磨きをして、制服に着替え家をでた。

最近では1ヶ月に1回はこのような夢を見る。

大体僕が見る夢は今日必ず起きる出来ごと、すなわち「予知夢」だ。

でも、僕がその日の行動を変えれば、未来だって変わるのだ。

大体は事の発端が分かるが、今回は分からないためどうすることも出来ない。

学校に着くと半分位の生徒が教室にいた。

僕の席の後ろで誰かが立っていた。

「お!やっと来たか。おはよう、翔」


「やあ拓真か、おはよう」


ー阿部拓真 親友ではないが、僕にライバル心を抱いてるやつだ。

なぜなら、僕は不動の学年一位であり、彼は学年二位なのだ。

最初は敵対心を向けられていたが、今は心底どうでもよくなったらしく、仲良く接してくれる友達である。しかし、どのテストでも勝負をしようと言ってくる負けず嫌いなやつだ。


「なあ、そういえば今日の一時間目、委員会決めだろ」


「ああ、そうだったな。それがどうかしたか?」


「いや、お前"学級委員長"しないのかなと思って」


「するわけないだろ。あんなのめんどくさくて嫌になる」


「まあ、そりゃそうか。おっと、チャイムが鳴ってしまった。じゃあな!」


チャイムが鳴った後すぐに担任が入ってきた。

「はい!皆さんおはようございます。今日なんですけど、転校する予定だった生徒さんが昨日から入院したので、1ヶ月は来れないそうです」


その言葉に生徒は「えぇ~」と口を揃えて言う。


「なので、その子に皆でお便りを書きたいと思います。書くことは、自分の名前、特技、後は好きなように書いてください」


ここは小学校かと思うような先生の発言だった。

あらかじめ先生が書く部分を線で区切ってっているので、その中に書いたらいいと伝えられた。

自分に回ってきたが書くことがなかったので、


「名前 吉月(よしつき)翔、特技 特になし」

とだけ書いておいた。


「よし!今から委員会決めます。じゃあ、まず、学級委員長になりたいって言う人は挙手!」

と、張りきって先生は言うが、案の定だれも手を挙げなかった。


数十秒の間、沈黙が続く。


しかし、この沈黙を壊したのは誰でもない麗香だった。

「はい!先生、私は翔くんを学級委員会に推薦しまーす」


「ほほぉ、ではその理由は?」

と笑みを浮かべる先生


「だって、翔くんいつも勉強して真面目だからそう言う人が学級委員長に向いてると思いました」


「よし!じゃあ学級委員長は吉月で決定な」


「先生、僕いいなんて一言も」


「異論は認めません」


僕の意見はあっという間に拒否され強制的に学級委員長になった。

そして、麗香、お前を一生恨んでやると思った。

その日の放課後、帰ろうと思った矢先、先生に声をかけられた。


「おーい!吉月。お前これ転校生に持っていってくれ」


「嫌です。僕はこの後勉強しないといけないので」


「って言っても、一時間位じゃないか。ほら頼んだぞ」


と、また強制的にやらされた。

この時自分は気づいた。これがあの夢の発端だと。


シナリオは変わらず、受付で彼女の病室を聞こうとしたが、彼女の名前を知らないことに今更気づいたのだ。

でも幸い、色紙に彼女の名前があったので何とか分かった。

「114番」の病室だと分かり、何を話したら良いか考えながら歩いた。

病室の前に着くと、今更帰ろうと思い始めた。

しかし、ここで渡さなければ明日先生に何を言われるかを想像したら行くしかなかった。

3回ノックして入る。

中に入るとそこにいたのは女の子だった。

しかし、髪が長すぎて顔が見えず、手や足に包帯が巻かれていた。

火事でやけどしたのだと考えた。

彼女は僕が入ってきたのに気づいてないのか。窓をじっと見つめていた。

「あのー、中山五月台(なかやまさつきだい)中学の吉月です」

と言うと、気づいたのかこちらを振り向いた。

「は、初めまして、小鳥遊(たかなし)(さら)です」


すこし、怖じ気づいた声だった。

人見知りなのかあまり目を合わせてくれない。

「これ君に」

と、クラスで書いた寄せ書きを渡した。

「な、何ですか?」

「クラスの皆で書いた寄せ書き」

と言うと恐る恐る彼女は受け取った。

「じゃあ、僕はこれで」


「え、もう帰るの?」


「だってもうすることないだろ」


「そ、そうだね。今日はありがとう、吉月くん」


暗い雰囲気な反面少し心細い人なのかと思った。

しかし、僕は彼女を無視して病室を出た。

第一章完成しました。受験生なので投稿は2,3週間ほどしません。

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