表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とけて、宮下。  作者: 水野つき
第4章 おもい、あふれる。
24/33

4-7 おもい、あふれる。④

「ま、それキッカケで涼美とはよく話すようになったよ。良くも悪くもな」


()()()()()()?」


「……深い意味はねえよ。浅い意味も、ねえ」


 嘘つき、と私は心の中で呟いた。


 スプリットを倒すべく、私は二つのピンと向き合う。

 ボウルを投げて、ピンに当てて、そのピンをもう一方のピンへ弾き飛ばして、二つのピンを倒す。恋愛に例えて言えば……、ボウルは恋のキューピッドで、離れ離れだった二つのピンをくっつけるというわけだ。


「佐々先輩」

 ボウルを持ったまま私は立ち戻り、佐々先輩の耳元でささやいた。

「私、加倉先輩のことが――」


「は?」


 私はそのまま振り返って、思いっきりボウルを投げた。


「好きでええええええええす!」


 私の放ったボウルは、どちらのピンにかすりもしないで、ど真ん中を駆け抜けていった。


「え、宮下、今なんて叫んだの?」


 投球すんでだった加倉先輩が、クエスチョンマークを浮かべながら訊ねてきた。


「気合が入りすぎました」


「なんて叫んだの?」


「……すき焼き、ですよ。ほら、よくゴルフとかでも、チャーシューメンとか言って食べ物の名前を言いますから」


「へえ。なるほど、私も叫んでみようかな」


 席に戻ると、佐々先輩はぽかんと口を開け放っていた。

 

「……なあ、聞き間違いか、私の」


「私はね、先輩」

 佐々先輩の隣に、腰を下ろす。

()()()()()()()()()()()。今も、これからも。絶対に」


「……」


「佐々先輩は、どうなんですか」


 これって、おかしなことですか?

 これって、悪いことですか?

 

「加倉先輩のこと、どう思ってるんですか」


 佐々先輩は黙って立ち上がり、ボウルを持つ。

 投球フォームは一切ぶれることはなく、佐々先輩はしなやかにボウルを放った。


 ピンが、鮮やかに飛び跳ねる。

 ストライクだった。


 佐々先輩は戻って来て、舌打ちをしてから、言った。


「お前と同じ気持ちだよ、私も」


 ○


 最後にやって来たのは、このあたりでは有名なイルミネーションスポットであるガーデンパークだった。完全にデートコースというやつだ。佐々先輩は、もとより加倉先輩と二人でここにくるつもりだったのだ。


 冷静に考えれば、アピールとしてはこの上なく分かりやすい。

 相手が、相手であれば、だけれど。


「やっぱ、カップルだらけだ」


 前を歩く、加倉先輩が言った。

 その隣を歩く佐々先輩が「そうだな」と素っ気なく返す。


「玲は良い人いないの?」


「いたら、お前とこんなとこ歩いてねえよ」


「えー? 部活とかでいい感じにならないの?」


「ならねえんだよ」

 なんだか、聞いているこっちがハラハラとさせられる。

「がさつだしな、私は」


「え、どこが? むしろ、繊細じゃん」


「お前は本当に、何を見てるんだ?」


「玲だよ」

 淀みなく、加倉先輩は言う。

「いろいろ気、遣ってくれてるでしょ」


「……覚えがねえ」


「無意識でやってるんでしょ。いつも車道側歩いてくれるし、私がダウンめな時はすぐに気付いてくれるし」


 だから、と加倉先輩は言う。


「玲って、モテると思うんだけどな」


「……みんなに優しく出来るほど、私は人間できてねえんだよ」


「私だけ特別?」


「そういうもんだろ、……()()()()()()()()


「んっふっふ、ダチ認定いただきました」


「っせえな」


 なんて、もどかしい。

 背中を押してあげたくなる。けれど、私はキューピッドになるつもりはない。


「むつかしい顔してるねい」

 隣を歩く、小波が言う。

「またおジェラ?」


「……半々かな」


「おや。もう半分は?」


「……優しさかも」


 薄っぺらで、どろどろの優しさ。


「ふふふ。バッファリーンだね」


「はあ。頭が痛いよ、私は」


「加倉先輩のお隣歩かなくて良いのかにゃ?」


「……」


 佐々先輩のことを想うと、言葉が出ない。

 あの人はたぶん、一年以上も加倉先輩に片想いをしている。

 今日だって、本当は加倉先輩と佐々先輩が二人で遊ぶはずだったのに、それを私が潰してしまったようなものだ。


「また、お悩んでるようだねい」


 神様見習いの小波は、世界を見通すかのように言った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ