4-6 おもい、あふれる。③
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みんなでお昼ご飯を食べた後は、とにかく遊び尽くした。
遊んで、遊んで、孤独感を解消するのが目的らしい。
カラオケ、ダーツ、ビリヤード、ボウリング、ゲームセンター、いかにも学生らしい娯楽施設を巡りに巡った。
ボウリングでは、二つのレーンに分かれることになった。加倉先輩と組みたかったが、加倉先輩がグッとパーで決めようと言い出したので、おとなしく従うしかなかった。
結果、私は佐々先輩とペアになった。
小波はぺろりと舌を出して、佐々先輩は無表情だった。
ボウリングの最中に、私は佐々先輩に訊ねた。
「今回のやつって、元々はどっちから誘ったんですか」
ばつの悪そうな顔をしながら、「私からだよ」と佐々先輩は答えた。
「お前さ……」
「はい」
「……いや。すまん、何でもない」
「……気になるじゃないですか」
「おかしなことを、口走りそうになっただけだ」
「……それは、おかしなことなんですか」
隣のレーンでは、加倉先輩の番が来て、立ち上がる。小波は加倉先輩に何かを言っているが、その内容は騒々しくて分からない。
「おかしいと思いますか」
「なんだよ、妙に突っかかって」
「先輩が何を言おうとしたのか、私は分かりますよ」
「……」
「加倉先輩とは、いつからの知り合いなんですか?」
舌打ちして、佐々先輩は答える。
「……あいつとは、高校の一年の時にクラスが一緒になったんだ」
「幼なじみとかかと思いました」
「そんなに仲良く見えたか?」
「前に、加倉先輩に言われたんですよ。佐々先輩が誰かのことを話すのは珍しい、とかなんとか」
「へえ」
「だから、長い付き合いなのかと」
佐々先輩は立ち上がって、ボウルを持つ。
部活でもやっているのだろう。佐々先輩の動きはとてもスムーズだ。ボウルから手を放すと同時に、しなやかに腕を振り上げる様は、プロボウラーのようにも見える。
盛大に音を立ててピンが飛び跳ねる。
けれど、七番ピンが一本残る。
「あいつも、変な奴なんだよ」
戻ってきて、佐々先輩は言った。
「最初は嫌いだった」
「それはまた、どうして」
「……ファンがいて、アイドルみたいってお前言ってただろ。そういうところだよ」
「つまり人気者が嫌いだと」
チッと舌打ちをして、佐々先輩は七番ピンを狙いに行く。
勢いよく放たれたそのボウルは、吸い込まれるかのように七番ピンを弾き飛ばした。
戻ってくるなり、はあとため息をついて、佐々先輩は言う。
「席替えをして、たまたまあいつの隣の席になったんだよ」
「はい」
「あいつの周りにはいっつも人だかりができて、鬱陶しく思ってたんだが、あることに気がついたんだよ」
「あること?」
「あいつ、自分から一度も話しかけたりしてなかったんだよ」
「……それが塩対応、というやつですか」
「それにしては、病的に思えたけどな。教科書忘れても、誰にも言わずに過ごしたこともあるみてえだし」
加倉先輩を見る。どうやらストライクが取れたらしい。小波と軽快にハイタッチをしていた。
「そんな病的な人には見えないですけどね」
「今はだいぶ、マシになった方だよ」
「……でも、加倉先輩には、佐々先輩から話しかけたってことですよね」
「腹が立ってきたから聞いたんだよ」
「なんて」
「なんで自分から話しかけねえんだ、って」
なんの飾り気もない、真っ直ぐな問いかけだった。
聞いているこっちが、気持ちいいぐらいに。
「加倉先輩は、なんて?」
「……投げてこいよ、とりあえず」
「照れてるんですか?」
舌打ちされたので、私はいそいそと立ち上がり、ボウルを持つ。
願掛けをしてみようか。もし、これでストライクを取れたら、佐々先輩に自分の気持ちを打ち明ける。
おかしなこと?
そうだね、そうかも知れない。
でも、あなたはそう思わないで欲しい。
深呼吸をして、私は十本のピンを眺める。
よし。
「せいやっ!」
一番ピンと三番ピンの間を狙って、私はボウルを放った。
つもりだった。
ボウルは緩やかに緩やかに真っ直ぐと一番ピンへ向かって直進する。だらだらっ、と鈍い音がしてピンはゆったりと倒れる。
残ったのは、七番ピンと十番ピン。
「見事なスプリットだねい」
隣のレーンに立っていた、小波が言った。
私はVサインを返す。小波はにへらと笑った。
「見事なスプリットだな」
ピンを眺めながら、佐々先輩は言った。
「取れたら奇跡だ」
「話、戻してくれないんですか」
「……『よく見てるね』って、涼美は言ってきたよ」
「その通りすぎる」
「っせえな」
野暮ったく佐々先輩は言う。
「別に見てねえけど気にかかっただけだ、っての」
「……加倉先輩は、あえてクラスの人に話しかけないようにしてたんですかね」
「……当時は、考えてるって言ってたよ。なんか、人との関わり方を考えてるとかなんとか」
「考えてる……」
何を?
抽象的すぎて、今ひとつよく分からない。




