表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とけて、宮下。  作者: 水野つき
第4章 おもい、あふれる。
22/33

4-5 おもい、あふれる。②

「加倉先輩にはファンがいて、それで」

 やはり、ここは聞いておきたいところだった。

「私が気に入られてるというのは……?」


 やれやれという言葉がこもったようなため息を漏らしてから、佐々先輩は言う。


「……そういう輩に対して、意外と塩対応なんだよ、あいつ」


「塩対応……。具体的には?」


「なんつーかな、表面上は愛想よく振る舞ってるけど、あいつから話を広げたりしないって感じっつーの?」


「そうなんですか」


 案外、人懐っこいところもあると思うこともあっただけに、少し意外だった。世の中意外だらけだねえ、としみじみ言っていた小波を思い出す。


「だから、お前も気をつけとけよ。あんまり仲良くしてると、背中でも刺されるかも知れねーし」


 これは、釘を刺されたと見るべきなのか?

 けれど、関係ない。私はもう、突き進むと決めたのだ。

 

「……刺し返しますよ、私」


「は?」


「刺されたら、刺し返します。倍返しで」


「……怖いこと言うな、お前」


「冗談ですよ」


「やっぱりお前って」


 変な奴、と眉間にしわを寄せて佐々先輩は言った。


 ○


 佐々先輩と雑談をして、およそ三十分が経った頃だった。

 

「あれ、二人とももう来てたの!?」


 改札口から現れたのは、加倉先輩と……。


「こ、こなみん……」


「やー、気合い入ってるねい、ミズッち」

 私の頭の中で思い描いていたのと同じように、にまっと小波は笑う。

「ちょう早いねい。ドッキリ大失敗!」


「か、加倉先輩と一緒に来たの?」


「うひっ」

 微笑んで、小波は私の耳元に口を寄せる。

「安心しーて。たまたま、同じ電車に乗ってただけ」


「私は、何も……」


「ジェラシーオーラがビシバシ来てたましたです」


「うぐ」


 嫉妬。

 七也が他の女の子と話していても、あまり感じることはなかった気持ち。私が加倉先輩を好きだということを、思い知らせてくれているのだろうか。愛と憎しみが並べ立てられる理由を、なんとなく理解できたような気がする。


 厄介だな。

 好きなら好きで、ただそれだけで良いのに。


「暗い顔はノンノ」

 小波の手が、頬に添えられる。

 太陽みたいに、小波の手はやっぱり熱い。

「いっぱい笑って、プリティなとこ見せなきゃだよ」


「……そだね」


「うひひ、やっぱりミズっちが笑うと可愛いねい」


「あれ。私、口説かれてる?」


「あはっ、ばれーた?」


「嘘つき」


「ふふふ」


「あはは」


「なになに、愉快な話?」

 声がふってくる。加倉先輩だった。

小波(さざな)ちゃんと宮下って、仲良いんだね。っていうか、こなみちゃんだったっけ。あれ?」


「こなみんは、あだ名なのです!」


「そうなんだ! じゃ、私もこなみちゃんって呼んでいい?」


「よよいのよいですよ!」


「あ~、なんか妹感あって可愛い! わしゃわしゃしたくなる!」


「頭のもこもこなら、もこもこして良いですよう」


「わー、もこもこもこ」


 小波の被っていた、ロシア風のファー帽子を加倉先輩はもこもこする。アウターである淡いピンクのプードルコートもよく似合っていて、加倉先輩の言う通りなんだか妹のようで可愛らしいし、もこもこされてずるい。


 小波と目が合って、ぺろりと舌を出される。


「佐々先輩とは、初めましてですねい!」

 加倉先輩からのもこもこを抜け出して、小波は佐々先輩の隣に並ぶ。

「歩きながら話しませんか?」


「あ、ああ」


「れっつらごー!」

 

 小波と佐々先輩が、並んで歩き出す。

 どうやら、気を遣ってくれたらしい。


「んじゃ、私たちも行こっか、宮下」


「……はい」


「……ヤキモチ妬いてる?」


「はい!?」


 びっくりして、普通に喉の奥から大声が漏れた。

 ちら、と佐々先輩が怪訝そうに一瞬こちらに振り向いた。


「何を言い出すんですか……」


「だって宮下、もこもこしてるときにすごく見てたから」


「も、もこもこが気になってただけです」


「へー、そうなんだー、ふーん」


 加倉先輩は、にやにやとしている。

 私はそんなにポーカーフェイスが下手だったのか。


 それでも、それでも分かるまい。

 私の秘めたる、この気持ちは。


「認めます、認めますよ。ちょっと妬いてました」


「お、素直な宮下。もこもこないけど、もこもこしてあげよう」


 もこもこもこと言いながら、加倉先輩は私の頭をもこもこしてくる。

 この人は、本当に、人の気も知らないで。

 いや、知らないからこそ、なのか。





 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ