4-1 おもい、なやむ。①
季節は、巡る。
私の想いとは関係なく、季節は巡り続ける。
○
「ふぃー、あったかあったか!」
小波が扉を開けると、軽快な鐘の音が鳴る。それと同時に、凍りついたからだを溶かしてくれるような、暖かい空気が私たちを包んだ。
やってきた店員さんに二人だと告げると、奥の席へと案内された。
「って、なんで隣に座るの」
「えっひっひ、今日はミズッちと初デートだしねい」
「狭苦しいから正面行って」
「ふぇーん、冷たいなあ、ミズミズは」
ちぇーと唇を突き出しながら、小波は正面に席を移す。
「私はこんなにも愛を伝えてるのに」
「はいはい、ありがとね」
「うぇーい、最近私の扱いが雑じゃなーい?」
「雑で良いから、気が楽だよ」
「んふ。なかよーしだから?」
「ん、ま、そだね」
「照れてーる?」
「ちょっとね」
「んふふ。かーわいー」
「な~もう、ほらメニュー見て!」
「はーい。なににしよっかなー」
そいじゃあと小波が頼んだのは、苺のショートケーキとホットコーヒーだった。私は、モンブランとストレートティーを頼む。
「それでそれで」
店員さんがはけた途端に、小波は身を乗り出してくる。
「ディートの目的はなーにかな?」
「相談」
「なーんの?」
「……恋愛」
「んひっ」
くしゃっと笑う小波は、可愛らしくもあり憎らしくもある。
「いーねーいーねー、青春だねえ」
「そんなに青春っていいものかな」
「期間限定だからねい。みんな期間限定には弱いのよ」
「その割には、普通のショートケーキとか頼んでるけど」
「それはそれ。別腹ってやーつ」
「こなみんも青春してる?」
「んふふ。ないしょー」
内緒ということは、少なからず青春をしているということなのだろうか? とも思ったが、この手の憶測は小波相手ではまともに当てはまりそうにない。
「今、失礼なこと考えてたっしょー」
「なんで分かったの?」
「神様見習いでぃすから」
「そういえば、そうだった」
「んふ。お悩みは、加倉先輩のことですねい」
「……まあ」
「クリスマスに遊びに誘うかどうか迷ってますねい」
「……バレバレじゃん」
「ミズッちが分かりやす過ぎなのよん」
来たる十二月。
いやでも意識してしまうのが、クリスマスというイベントだった。七也と付き合っていた頃は、ケーキを食べる日ぐらいの認識でいたけれど、今年はそうはいかない。
加倉先輩に、友情ではなく恋愛感情を芽生えさせなければならない。とすれば必然、こういった恋人らしいイベントごとについては、私から積極的に連れ回さなければ、恐らくは一生意識されないままで終わるだろう。加倉先輩も、どちらかと言えば鈍感そうでもある。
「でも、相談する必要あるー?」
両肘をついて、自分の顔をもにょもにょさせながら小波は言う。
「ミズッちのが、恋愛経験あるっしょー」
「全然ないんだよ、私」
「七也君と付き合ってたじゃん」
「だから、と言っちゃなんだけど、好きな人にアピールするとか、なんか駆け引きっぽいこともしてこなかったからさ……恋愛経験的にはその、ド素人なんだよ」
「んひ。素直でかーわいー。でもでも、私も素人なんだよねい」
「本当に?」
裏がありそうなのが、小波という女の子だ。
「少なくとも、誰かを好きになったことはあるんじゃないの?」
「その心はー?」
「一目惚れしたことある? って聞いたときにはぐらかされた」
「引きずるねい、それ」
「気になるじゃん」
「どうして?」
「……気になるから。こなみんは得体が知れないから余計気になる」
「うふふ。それってらぶ?」
「ライクだよ」
「にゃーもー、つまんなーいの」
店員さんから、飲み物とケーキが運ばれてきた。
うわーいと小波は小さな子どもみたいに声を跳ね上げる。




