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とけて、宮下。  作者: 水野つき
第4章 おもい、あふれる。
18/33

4-1 おもい、なやむ。①

 季節は、巡る。

 私の想いとは関係なく、季節は巡り続ける。

 

 ○


「ふぃー、あったかあったか!」


 小波が扉を開けると、軽快な鐘の音が鳴る。それと同時に、凍りついたからだを溶かしてくれるような、暖かい空気が私たちを包んだ。


 やってきた店員さんに二人だと告げると、奥の席へと案内された。


「って、なんで隣に座るの」


「えっひっひ、今日はミズッちと初デートだしねい」


「狭苦しいから正面行って」


「ふぇーん、冷たいなあ、ミズミズは」

 ちぇーと唇を突き出しながら、小波は正面に席を移す。

「私はこんなにも愛を伝えてるのに」


「はいはい、ありがとね」


「うぇーい、最近私の扱いが雑じゃなーい?」


「雑で良いから、気が楽だよ」


「んふ。なかよーしだから?」


「ん、ま、そだね」


「照れてーる?」


「ちょっとね」


「んふふ。かーわいー」


「な~もう、ほらメニュー見て!」

 

「はーい。なににしよっかなー」


 そいじゃあと小波が頼んだのは、苺のショートケーキとホットコーヒーだった。私は、モンブランとストレートティーを頼む。


「それでそれで」

 店員さんがはけた途端に、小波は身を乗り出してくる。

「ディートの目的はなーにかな?」


「相談」


「なーんの?」


「……恋愛」


「んひっ」


 くしゃっと笑う小波は、可愛らしくもあり憎らしくもある。


「いーねーいーねー、青春だねえ」


「そんなに青春っていいものかな」


「期間限定だからねい。みんな期間限定には弱いのよ」


「その割には、普通のショートケーキとか頼んでるけど」


「それはそれ。別腹ってやーつ」


「こなみんも青春してる?」


「んふふ。ないしょー」


 内緒ということは、少なからず青春をしているということなのだろうか? とも思ったが、この手の憶測は小波相手ではまともに当てはまりそうにない。


「今、失礼なこと考えてたっしょー」


「なんで分かったの?」


「神様見習いでぃすから」


「そういえば、そうだった」


「んふ。お悩みは、加倉先輩のことですねい」


「……まあ」


「クリスマスに遊びに誘うかどうか迷ってますねい」


「……バレバレじゃん」


「ミズッちが分かりやす過ぎなのよん」


 来たる十二月。

 いやでも意識してしまうのが、クリスマスというイベントだった。七也と付き合っていた頃は、ケーキを食べる日ぐらいの認識でいたけれど、今年はそうはいかない。


 加倉先輩に、友情ではなく恋愛感情を芽生えさせなければならない。とすれば必然、こういった恋人らしいイベントごとについては、私から積極的に連れ回さなければ、恐らくは一生意識されないままで終わるだろう。加倉先輩も、どちらかと言えば鈍感そうでもある。


「でも、相談する必要あるー?」

 両肘をついて、自分の顔をもにょもにょさせながら小波は言う。

「ミズッちのが、恋愛経験あるっしょー」 


「全然ないんだよ、私」


「七也君と()()()()()()じゃん」


「だから、と言っちゃなんだけど、好きな人にアピールするとか、なんか駆け引きっぽいこともしてこなかったからさ……恋愛経験的にはその、ド素人なんだよ」


「んひ。素直でかーわいー。でもでも、私も素人なんだよねい」


「本当に?」

 裏がありそうなのが、小波という女の子だ。

「少なくとも、誰かを好きになったことはあるんじゃないの?」


「その心はー?」


「一目惚れしたことある? って聞いたときにはぐらかされた」


「引きずるねい、それ」


「気になるじゃん」


「どうして?」


「……気になるから。こなみんは得体が知れないから余計気になる」


「うふふ。それってらぶ?」


「ライクだよ」


「にゃーもー、つまんなーいの」


 店員さんから、飲み物とケーキが運ばれてきた。

 うわーいと小波は小さな子どもみたいに声を跳ね上げる。


 







 





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