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とけて、宮下。  作者: 水野つき
第3章 あなたを、おもう。
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3-7 あなたを、おもう。⑥

 中学に上がっても、私と七也の関係に変わりはなかった。

 七也が私を遊びに誘って、一緒にどこかへ出かける。

 この関係を、隠し立てするようなこともしなかった。

 時折、それでクラスメイトにからかわれることもあったけれど、私も七也も取り乱すようなこともなく、毅然とした態度を取り続けていた。それもあってか、私たちの関係を、とやかく言う人は次第にいなくなっていった。


 私と七也は恋人どうしなのだから、一緒にいるのが当たり前。

 そんな空気感が、私たちの間にも、クラスメイトの間にも漂っていたように思う。


 そうして、高校も一緒のところに進学した。

 偶然だと、今でも私は信じている。


 「別れよう、七也」


 七也は、いつだって優しかった。

 でも、それは正しかったのだろうか。

 私は、七也にずっと気を遣わせさせ続けただけなんじゃないかって、思える。その優しさの正体は、ある種の恐れみたいなもので、私は七也から「変わる」機会を奪い続けてしまったのではないか。


 何よりも。


 何よりも。


 こんなにも脆弱な気持ちであなたと向き合っていたことが、自分でも何より憎い。


「水葉」


 ブランコは、揺れている。揺れ続けている。


「ごめんね」

 

「どうして、七也が謝るの」


「……本当は、ちょっと分かってたんだ」

 七也は、ブランコを漕いだまま言う。

「水葉が無理して、僕に付き合ってくれてるって」


「……ごめん」


「あはは、謝らないでよ」


「私、七也の時間を奪い続けてた。私じゃない誰かに目を向ける時間も、機会もあったはずなのに、私が七也と中途半端な気持ちで付き合ってたから……」


「容赦がないな、水葉は」

 乾いた笑みを、七也は浮かべる。

「それって、僕のこと全然好きじゃないって言ってるようなものだよ」


「……もう、同情で向き合うことはやめる」

 

「同情されてたんだ」


「七也も、最初は同情してたんじゃないの」


「僕が、水葉のことを?」


「ぼっちだった私に、声をかけてくれたじゃん」


「ああ、それは……」

 照れくさそうに、七也は耳をかく。

「水葉が、……可愛かったからだよ」


「え、え? 私、結構地味だったと思うんだけど」


 その頃は、全くお洒落というものに気を遣っておらず、やぼったい眼鏡をかけて、髪もボサボサだったはずだ。


「僕には、そう見えた。だから、声をかけたんだ」


「そう、だったんだ」


「幻滅した?」


「むしろ、健全かも」


 私たちは、小さく笑う。


「でも、水葉はどんどん可愛くなっていった。コンタクトにして、お洒落をして……。それなのに、僕は何もかも小学生のままだった」


「自覚、あったんだね」


「馬鹿なんだ、僕は。見た目じゃなくて人は中身だと思い込んで、頑なにお洒落を避けてきた。でもそれはただ、努力をしていないだけ。だってなにより自分が見かけで人を判断してるって言うのにさ」


 本当に馬鹿だよ、と七也は言う。

 その通りだと私が言うと、「容赦がないな」とまた七也は笑った。


「……結局、希月君の言うとおりだった気がする」


「希月の?」


「遠慮しあってたんだと思う。結局のところ僕は、水葉に嫌われたくない一心だったよ」


「……私は、何も考えなさ過ぎだった。一緒にいることが当たり前みたいに考えて、自分の気持ちにも、七也の気持ちにも向かい合ってなかった」


「全然だめだめだね」


「本当にね」


「あーあ。もうちょっと早くこういう話ができてたら良かったのに」


「……そうだね」


 きっと、今からでも遅くはない。

 身勝手に、私はそんなことを思う。


「ね。この前、教室に来て私に折り畳み傘を届けてくれた人、覚えてる?」


「覚えてるけど、突然どうしたの」

 

「好きなんだよ、私」


 あなたを、おもう。


 この言葉を、あなたは、どう受け止めるだろう。


「私、その人のこと、好きなんだ」


 ○



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