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彼女は雨の日に傘をささない  作者: あきら
第1章
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『迫る非日常 3』


時雨は憤っていた


別件の任務をこなす間、監視任務を引き継いだ仲間がヘマをやらかした



「あいつんとこはどんな教育しとんのや!」



イヤホンからノイズが走り男の声がする



「時雨、標的が対象のいる建物へ侵入した

数は3、間に合うか?」


石動(いするぎ)か!?もうすぐ着く!あんたのとこのヘマしたボンクラはどうなった?」


「命に別状はない」


「これは貸しやからな!そもそもうちがこっちへ来とるのも貸しやけどな……到着!通信終了!」



叫ぶと同時に意識を集中する

飛び上がった時雨の足元を目掛け

グラウンドに出来た水たまりから無数の水流がジェット噴射のように立ち上がり

時雨を颯太のいる教室へと押し上げる



バリーーーン!!



勢いそのままに窓を蹴破って教室に入ると

その音に驚きガバッと頭をあげる颯太を制止する



「起きるな!伏せとけ!」




何事かと混乱しているだろうがこちらの剣幕に反応する様に頭を伏せた

時雨は教壇側の扉から入ってきていた3体に意識を向け集中する



「させるかぁー!」



すると教室まで時雨を押し上げた水流が三股に別れ

それぞれが『敵』へと向かい廊下へ押し出すと

そのまま窓を突き破り中庭へと放り出した



音が収まって、状況がわからない颯太は

最初に声のした方へ顔を向けようとした



「ちっ!」



時雨はまだ正体を晒す訳には行かず、素早く颯太の背後へ回り込み

首を抑えて静かに告げる



「……早くここから逃げなさい

明日は家から出ないように……

あと、ここで起きた事は全て忘れなさい

……さあ、行って」



とにかく今は逆らう状況にないと判断した様で

振り向かず、足早にその場を去る颯太




「……石動、なんとか間に合った

後の処理はそっちに任せるで」


「了解だ、時雨」


「後できっちり説明してもらうで、通信終了」



イヤホンを外しため息をつく



「はぁ……ここでこんな騒ぎ起こしたら

正体隠してる意味ないやん……」




時雨は警備員がこちらへ向かってきているのを確認し

入ってきた窓から飛び降りた




*****




家に着いた颯太は、玄関のドアをロックしチェーンをかけ

窓の鍵が閉まっているのを確認してからカーテンを閉めた


あまりの状況に混乱していた



「いったい何だったんだ……アレは」



アレ……黒い影を背負った……人?

何人かは分からないが1人ではなかった

生気のない虚ろな目をしていた……


もう1人……

レインコートの女……女?……だったか

すげー音がしたと思ったら静かになって……

首根っこ抑えられて……



「忘れろったって、無理だろあんなの……」



なんか数日前にも似た様な人影を見た様な……

あの時見たのも、レインコートの、小柄な……同じ奴か?



「とにかく、とりあえず落ち着け俺……」



何者かもわからない相手の忠告

言われたとおりにするのも癪ではあるが

状況が不明瞭なだけに、外へ出る気にはならなかった


洗面所で顔を洗い、首元に手をやる




「冷たくて…小さい手だったな……」





*****




学園から少し離れた国道沿いのバス停に時雨は立っていた

そこへ黒塗りのセダンタイプの高級車が止まり

雨に打たれたレインコートのまま、座席が濡れるのも気にせず後部座席に座り乱暴にドアを閉める



「ご苦労さまでした、時雨さん」



隣に座っていた、黒いスーツの穏やかな表情の男はタオルを差し出し言った

石動(いするぎ) 朔弥(さくや)

組織を束ねる石動 灯弥(とうや)の弟で、組織の実質No.2である



「朔弥さん、ちょっとおたくの兄貴さん

若いもんの躾がなってないのと違う?」



受け取ったタオルで顔を拭きながら

この人に言っても仕方ないとも思いつつ

釈然としない思いを吐露した



「すみません、時雨さんの手を煩わせてしまって

ただあの場所にクラス2の個体が発生するのは予想外でして」


「それが解せないのよ、学園には結界を張ってあるんでしょ?」


「それが、部分的に結界が弱まってまして

術者を配備して修復していたところを襲撃され

突破を許してしまったという状況です」


「クラス3が居なかったのが不幸中の幸いね……

ていうか監視対象を目の前にして、あんな派手にやらかしてしもたら

うちが素性隠してそばにおるのがバレるのも時間の問題やで

彼、結構感がよさそうやし」


「それはこちらでも把握しています

対策を協議中ですが、敢えて事情を説明し

こちらの保護下に入ってもらうのがいいのかも知れません」


「うん、まぁ……いつまでも知らぬ存ぜぬではいられんからなぁ」



車は時雨が住まいとして使っているホテルの前で止まった



「なんか決まったら連絡いれといて

あと、あのいけ好かん兄貴にもよろしく伝えといて

ほな……」



車から降りた時雨に朔弥は、お疲れ様でしたと声をかけ去っていった



ホテルのロビーでレインコートを脱ぎ、またため息をついた



「さぁ……もし素性を明かすとしてどう話せばええんや

こんなもん普通の人なら信じはせえへんけど……」


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