1-6 遭遇
体感で三時間くらいは歩いたかな。
道はしっかりしてるけど、少し歩くのも飽きてきた。VRなのに疲労も感じるなんてやり過ぎだと思う……。
魔法イベントも結局遭遇しなかったしね。
三人で喋りながら散策散歩も悪くは無いけど、いつまでかかるのかわからないのはちょっと辛い。脚も痛い気がする。無用なリアリティ。
戻れたらゲームバランスの悪さのことは訴えたいと思う。
「来たよ」
突然、呟くよりははっきりとした声でそう言ったミチは、背後の方を徐に振り向いた。
私もつられて振り返る。
見えるのはカラスの群れだけ……確かに近づいてる。
群れで来られると気味の良いものでは確かにないけど……
それより、ギョッとしたのは、カイの不敵な笑み。……笑みなのに目は笑ってない。
まるで背後から迫ってるカラスに呼応したかのように緊迫した空気を醸す。
……カイは日本刀にも手をかけていた。
「ペンタクル!」
私はドキッとした。カイの意味不明な迫力に圧倒されてた時、不意に横からのミチの大きな声だったから。
私が横を見ると、右手に黒い柄のナイフを前に持ち、左手に古びた本を持つミチ。オマケに左手にさっきまでしてなかった黒銀色のリングが光ったのも見えた。
地面の方からミチの周りに湯気みたいなのが立ち上がり、ミチのナイフの辺りでクルクルと回ってるような。
私は何が起こってるのか分からず、ミチの作為を見守った。
ギョ、ギョエ、ギャ
「え?」
カラスにしては変な鳴き声。背後の空を再度確認。
よく見ると、黒い羽のついたモノではあったけど、カラスの形にしては……
……カラスじゃない。
飛んで来た鳥状の物体は頭と翼以外の四肢があって、まるで先ほど私が描いた絵が飛び出してきたような姿だった。身体も一回り大きい。
「カ、カイ、後ろ……」
言いかけた時、突風がいきなり吹いて、一瞬目を瞑ってしまう。
目を開けた私はカイの姿が忽然と消えているのに気付いた。
私は慌ててカイを探して見回していたら、その小悪魔みたいな風貌の怪物は私の間近まで迫っていた。
ギャーと何匹も叫んでる声は聞こえる。
怪物は爪を立てて間違いなく私を狙っていた。
「いや!」
私は叫び声と共に身を丸め硬くした。
「圧力防御!」
ミチの声の合図に、さっき私が宙に描いた線画みたいな円が五つ、横から私と怪物の間にスライドしてきた。
漫画やアニメに出てくる魔法陣みたいな模様の光の円図。
滑空してきたビーチボール大の怪物達は制動出来ず、その魔法陣に突っ込む。
……それは怪物達の最期に。
魔法の円図が割れないガラスの役割をして、連なって勢いで突っ込んでくれば、当然押しつぶされしまう。
…………。
私は呆然とその惨憺たる光景を目の当たりにしてしまった。
それでも、半分くらいの怪物は進路をうまく変え、一度翻って旋回し、側面から再度攻撃のタイミングを狙っているようだった。
その時、風が私の横を通り過ぎる。
怪物はつむじ風にまかれると不意にギョエと言って、空で千切れ落ちた。
また一匹、また一匹。
何が起こってる? どうしても目視出来ない。
空に留まる怪物が一匹づつ、風に斬られて落ちてくる感じ。
カマイタチとかこういう現象なのかもと、現実逃避で考えてしまう。
ほんの一瞬。風が止まったところからカイの姿が見えた気がした。
風が吹くとすぐに見えなくなって、目をどう凝らしても見えない。
これ……カイの仕業? 剣術をやってるカイだけど、とても人間とは思えない動きをしていた。
解答を僅かに盗み見ても、答えが疑わしく、更に悩んでしまう。
これがVRゲーム?
その時、私は直ぐに気づけなかった。魔法陣を回避した怪物の中に森の茂みに入ったモノがあったことを。
私が二人の手際か何かに呆然としてる脇でそいつは跳ねて急撃してきた。
刹那のことだった。私は先程描いた絵を思い出した。
私は一度瞬きをした。
私の腕は咄嗟にスプーンの形をしたワンドを振っていた。
その瞬きをした瞬間、怪物は宙に縛られるようにその場に落ちてしまった。
私は息も絶え絶えになったその怪物の様子を見た。
……ロープ?
怪物に巻きついて食い込んでいたのは、私が描いたロープそのものだった。
暫くは怪物はもがいていたけど、それも徐々になくなった。
もしかして縛りがキツ過ぎたかもしれないけど、私は恐怖で手が出せないでいた。
怪物は動かなくなったと思ったら、身体がどんどん透けてきて、最後には縛った縄と共に消えてしまった。
……まさか、死んでしまったとかじゃないよね……ゲームだし。
よく周りを見たら累々としていた、他の怪物の死骸も消えていた。
「大丈夫だった?」
他に小悪魔みたいなのをいないのを確認して、ミチはさっきの魔法陣みたいなモノを、手のひらをはためかせ散らした。
心配そうに私を見るときだけは、いつもの冷ややかな目を優しそうに向ける。
「……えぇーとーー」
「イメージ出来た? 戦い方」
いつのまにか背後に回ったカイが、私に被せて笑いながら言った。
「……ねえ、今のワザとチーちゃんに仕向けたよね?」
ミチは私とカイの間に割って入った。
ミチは前からカイには容赦ない視線を送ることがあったけど、運動能力が高く献体であったカイに、積極的に文句を言う子ではなかった筈。
「烏谷だってわかってるよね。チカが本番の方で力を引き上げるタイプって」
「……徐々に教えてくって約束だったじゃない」
「あーあ、それね。実際は前の前の約束だし、反故るつもりだから。何故かはわかるよね?」
私は二人の言い合いに呆けて聞いていたけど、我にかえる。
「待って、待って、突然のイベントだったから、呆然としてごめん。けど、聞いてなかったから、教えてくれなかった二人が悪いということで」
私は首を傾いで微笑んだ。
エタってる作者の作品は読まないというのを意見を見て……
それは違う! そもそも読まれないから自然消滅してるだけなんだ! と怒りの主張を内に秘めながらフラフラと再開。
皆が皆、読まれている作品ばかりじゃないし、完了したからって読まれない。
エタることを恐れて書き始められないが最もつまらないだろうに、エタることを敵視してどうするの?
作品の多くは、最初の文章次第で読むか読まないか定まってしまうのは、何もWeb小説に限ったことではないので。
しかし、こんな主張も読まれないんだろうなぁ。
アクセス見てるとこれもそっ閉じ対象だもの 笑
さて、クローラさん相手にもうちょっと進めてみよう。
少しは文章上達してますか?




