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03 スキル創造(クリエイト)

「そーちゃん、どう?」

「んー、もうちょい待って……」


 和葉に言われるがまま、スキル≪鑑定Lv1≫を創造した俺。

 そこまでは良かったのだが、今は別の問題が発生していた。

 創ったスキルが使用できないのだ。


 ……うん、自分で言ったことではあるが『スキルが使用できない』って何だよ、厨二か! とツッコミを入れたい。

 しかし、≪スキル創造クリエイト≫なんて『いかにも』なことをしてしまった以上は今更だろう。


 異世界転移――にわかには信じがたいが、事ここに至ったからにはそれが真実であることを前提にして動いた方がいいと判断した。


 そして俺は更に調査を続ける。

 その結果、次のようなことが判明した。


 ・創造したスキルは自分では使えない。

 ・ただし、もう一つのスキル≪スキル付与エンチャント≫で他人にエンチャントすることが可能。

 ・付与したスキルはLv1だと持続時間が10分。それを経過するとスキルは自動的に対象から削除される。

 ・エンチャントできるスキルLvは俺自身のLvに比例して高くなる。

 ・エンチャントできるスキルは対象一人につき一つまで。

 ・また、付与したスキルはいつでも対象から削除することが可能。


 ――見事なまでにパーティーを組むことを前提にしたスキル構成だった。

 特に一つ目の『創造したスキルは自分では使えない』というのは理不尽極まりない話だ。

 早期のバランス改善が待たれるところである。

 俺は先の未来に暗いものを感じながらも和葉に調査結果を伝えた。


「そんなわけで、試しに≪鑑定Lv1≫のスキルをお前に――」

「いいよっ!」


 ……言い終わる前に許可が出た。

 もう少し警戒心とか慎重さを持ってほしいと思うのは俺だけだろうか。


(まあ、結局付与することになるのは変わりないんだけどなっ)


 俺は和葉に≪鑑定Lv1≫のスキルをエンチャントした。


「おー、来てる来てる! スキルウインドウに≪鑑定Lv1≫の項目が追加されてるよー」

「よし、成功か。じゃあ、こういうのはお前のが詳しいだろうから、好きに使ってみてくれ」

「わかったー」


 そう言って和葉は、建物の壁を指さし――


「壁!」


 ――と言った。

 俺は『でしょうね』と思った。


 次に和葉は、地面を指さし――


「地面!」


 ――と言った。

 俺は再度『でしょうね』と思った。


 最後に和葉は俺を指さし――


「ソーイチロー・ナルセ! 人間、男!」


 ――と言った。


「和葉さんや……?」

「な、なに?」

「――それのどこが鑑定!? 見たまんまじゃん!? ≪鑑定≫チートで無双でしたっけ!? 今の情報が何の役に立つんだよ!?」

「えと、やっぱりそーちゃんも男の子だったんだなー、って再確認はできたけど……」

「んっだそれ! なんの役にも立たねぇスキルだなぁオイッ! こんなスキル創ったのはどこのどいつだよ――って、俺だよ、チクショーーーッ!!!」

「わー、ノリツッコミだー」


 俺はその場にしゃがみ込む。

 鑑定スキルとやらがどれだけ役に立つものなのかは知らないが、所詮はLv1の代物だ。

 さすがにそこまでの期待はしていなかったが、これは予想以上の使えなさだった。

 この分では他にスキルを創造したとしても効果のほどはしれている可能性が高い。


「だ、大丈夫! そーちゃんのレベルが上がればエンチャントできるレベルも一緒に上がるんでしょ? だったらそれまでファイトだよ!」

(……そのレベルが一番の問題なんだよ)


 そもそもレベルってどうやって上げるんだ?

 俺には『戦闘』を行うことによって上げる以外の方法はないように思えてならない。

 戦闘? なにと? モンスターと? それとも……人と?

 いや、モンスターであれ人であれ、平和ボケした日本人の俺たちが『戦闘』だなんて、なんの冗談だ。

 しかも、俺の所持スキルは、スキルを創って他人に付与するだけ。

 俺自身の戦闘力の底上げには一切関与しない。

 こんなんでどうやって戦えと……。


(――いや、ちょっと待て。スキルを創る、だと?)


 ……バカか俺は。なに和葉と同じで『その気』になっていたんだ。

 異世界転移? 冒険してレベル上げ? 知ったことか!

 俺たちは帰る! 日本に帰って、再びあのヌルい世界を謳歌する!

 帰る手段がない? なら創ればよろしい!


(――神よ。この世界で俺たちに何をさせたかったのかは知らないが、俺に≪スキル創造クリエイト≫なんてスキルを与えたことを後悔するんだな!)


 俺は≪スキル創造クリエイト≫を使用する。

 ≪鑑定≫の時とは違い、まだ俺の中に具体的なイメージがないため、様々な≪スキル≫の形が頭の中に浮かんでは消えていく。


(違う、これじゃない……これでもない……)


 イメ-ジするのは、空間や次元の境界を超えて、どんな世界にでも転移が可能――そんなスキルだ。

 しかも今回はレベル制の制限を外す。

 今の俺のレベルでも創造が可能、かつ先ほどの条件を満たすスキル……。

 イメージが具体的になっていくにつれ、≪スキル≫の形も明確化してくる。


(よし、これだ!)


 俺はスキル≪時空転移≫を創造した。

 これで父さんと母さん、そして何より可愛い妹の元へと帰ることができる!


(あとはこのスキルを和葉にエンチャントすれば――っ!!)


 そうすれば俺たちは元の世界に帰れるはずだった。

 しかし――


 『このスキルをエンチャントするには、レベルが“10”必要です』


 ――俺の希望は粉々に打ち砕かれる。

 まるで機械音声のような無機質な声がどこからか聞こえ、人生はそんなに甘くないことを告げた。


「……そっかぁ、創造はできてもエンチャントの方ができないってオチかぁ……ハ、ハハ……」


 俺はその場に崩れ落ちる。

 残念! 俺の冒険はここで終わってしまった!


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