第二十話 力の正しい使い方
四人の謝罪、そしてフューラとジリーの過去の吐露があってから一週間ほど。
「カナタ! カーナーター!!」
朝っぱらから大声を出して玄関ドアをぶち破りそうに叩く子供が一人。はい、今日もまた巻き込まれるようです。
「なんだよこんな朝から騒々しいな」
「ごめん! ちょっと手を貸して!」
おや、今日は明らかに焦っている。
「まずは落ち着いて説明しろ。何も分からない状態で手を貸せと言われても、こっちは困るだけだぞ」
「そ、そうだよね。えっと、私のいなくなった村が知り合いで……あー……」
余計に混乱している。しかし幾つかの単語でとりあえずは分かった。
「お前の生まれた村で、知り合いが行方不明になったから捜索を手伝えと、そういう事かな?」
「うん!」
ならばこれだけ焦るのも頷けるか。
「そうしたら……ちょっと待ってろ」
俺は紙に要点と指示を書いてアイシャに渡した。
「これをリサさんとフューラに見せろ。混乱したお前の頭で説明するよりも早い」
「ご、ごめん。えっと……」
「指示も書いてあるから、合流したあとは二人に従え」
「うん。なんかごめん。じゃあ二人呼んでくる!」
きびすを返すように突っ走って行くアイシャ。こりゃーあいつにとっては本当に大事件なんだな。
――王宮。
「――という事なんで、兵を数人貸してください」
「村での事ならばオレも手伝いたいし人手は多いに越した事はないけれど、王宮への依頼ではないから、さすがに兵は出せないよ」
お役所仕事め! と言いたくはなるが、しかしそれが普通だろう。ならば知り合いを引っ張ってくるか。
「ああそうだ。彼女を連れて行くといい。ジリー・エイス。今回に限りカナタさんに預けよう」
「いきなり重大任務になっちゃったな。でも分かりました。ジリーをお借りします」
もしもの時はあの馬鹿力が役に立つかもしれない。
「おーいジリー」
「あん? あ、カナタじゃん」
王宮地下牢でのんびり過ごしているのを発見。そして自分で普通に牢を開けて出てきた。
「鍵は?」
「掛かってないよ。大体逃げたら一発で人生終わりなんだよ? もう罪を作るなんてごめんだからね」
こいつが言うと重い。
事情を説明し、ジリーを連れて王宮前へ。
丁度あちら三人も来た。
「それじゃ早く行こう」
「あーちょっと待った。俺は一ヶ所寄るから、先にみんなで向かってくれ」
「……どこに行くの?」
訝しげなアイシャ。というか、早くしろと言いたいのだろうな。
「ペロ村に行ってくる。あそこで鼻の利く村人を一人借りるんだよ。捜索といえば警察犬だからな」
「なんかよく分からないけど、分かった」
という事で女性陣は一足先にアイシャの故郷へ、俺はペロ村に寄る。
――ペロ村。
さーて久しぶりに来たぞ。うーん、何も変っていない。
「レオ村長いますかー?」
「はーい。……あっ!」
俺を見た瞬間村長のしっぽが千切れんばかりにぶんぶん振られた。可愛い。
「えっと、泊まりですか?」
「いや残念ながら違います。ちょっと急用がありましてね、人の捜索のために鼻の利く村人を一人貸してもらいたいんですよ。皆さん犬っぽいじゃないですか。ならば鼻も利くんじゃないかと思いましてね」
「そういう事でしたか。確かに僕たちは鼻が利きますので、お役に立てると思います。えっと……出来る事ならば僕が行きたいんですけど、一応これでも村長なので。ちょっと待っていてください」
しっぽを振り振りしながら走って行くレオ村長。やっぱり可愛い。
数分で一人連れてきた。確か……。
「お兄ちゃんだ! わたしの事覚えてる?」
「確かプリムちゃんだったか? すっかり大きくなったなー」
「当たり前だよ。だって四ヶ月も経ったんだからね」
そういえば犬の成長は早くて、人の年齢だと一年で十五歳くらいになるんだったかな。プリムちゃんは高校生くらいの背丈に成長し、警察犬によくいるシェパードっぽくなっており、幼さは残るものの格好いい女性になっていた。
――当時を思い起こすと、俺のせいで彼女が山賊に捕まりそうになったので、代わりに俺自身が捕まったのだ。その後アイシャが来て山賊を殲滅。これがアイシャとの最初の出会いだな。
「という事はプリムちゃんが手伝ってくれるのかな?」
「うん。わたしね、昔からにおいには敏感なの。だから人を探すのには自身があるの。任せてね!」
ウインクしてきたぞこの子。可愛い。
――アイシャの故郷。
「さてどこにいるかな?」
「あっち」
早速プリムちゃんが反応。すげーな。そして導かれた先には、本当にアイシャがいた。すげーぞ!
「おーい」
「あ、来た来た。そちらは?」
「はい、わたしはペロ村のプリムです。勇者様がお兄ちゃんに剣を向けた時に、割って入ったのがわたしだよ」
「……そんな事したっけ?」
「したよ! その上お前は俺に紛らわしい事するなって怒ったんだからな。すげー印象悪かったんだから」
「あはは、すっかり忘れてる」
やられた側はいつまでも忘れないもんだ。会社でのいじめも然り。部下が上司になる可能性は考えないのかね?
さてアイシャの故郷の村だが、ロム村という名前だそうな。うん、ロトシリーズはロムカセットだったね。まーそれは置いといて。
村の規模はペロ村の倍くらいで、結構家もある。その家だが、ほとんどが平屋であり、赤茶色のレンガ壁に屋根は色とりどり。上空から見るとかなりカラフルだと思われる。
そして目立つのが岬の先にある灯台。真っ白に輝いており、村からは一キロ近く離れているが、村のどこからでも見えるので目標物には最適だ。
海に近いが周囲は崖で降りられそうな場所はなく、港を作るには向いていないという。気候は温暖、風はさわやか。海近くの村なので農作物の塩害はどうなのかと思ったが、そこはさすがに考えられている。畑の周囲を防風林で囲っており、しかも塩害に強い種類の野菜を栽培しているとの事。
ペロ村も良かったが、こちらのロム村も中々風光明媚でよろしい雰囲気。こんな緊急性のある事態でなければ泊まっていきたくなる。
「それで、行方不明の知り合いとは?」
「私の近所に住んでる子。私が学校に入るまではよく遊んだんだ。私とトムと、その四人の、合計六人で村中を走り回ってた」
「え? 四人?」
「うん。あー……っとね、付いてきて」
アイシャの先導で向かった先は集会所のような、他よりも一回り大きな建物。中に入るとカウンターがあり、小さいながらも村役場のようだ。アイシャは俺たちを待たせ奥へと入っていった。
「そっちは説明受けたのか?」
「いえ、カナタさんが来てからという事になっていました。今は村の構造を覚えるのに歩き回っていたところですよ」
「そっか。説明が二度手間にならないようにした訳か」
フューラはあれ以来、かなり素直になった。そして”機械だから”という言葉は本当に使わなくなった。
実はフューラにはもうひとつ秘密があった。フューラは寝ないのだ。システムの一部をシャットダウンする事は出来ても、いわゆるスタンバイ状態にすらなれず、人のように寝る機能がない。戦場で敵襲があった場合を想定してとの事だが、ずっと意識があるままでいなければいけないというのは、どれほどの負担なのだろうか。そう頭を抱えた俺に、笑って”僕は機械ですから”と言い放ち、そしてこれが最後だと付け加えていた。
――数分後。
アイシャが男性を連れて出てきた。四十代くらいだろうか。清楚な身なりの品の良さそうな人だ。
「初めまして。ロム村の長をしております、ワイロ=ヴァン・デー・ボンハルトといいます。今回はよろしくお願いいたします」
「こちらこそよろしくお願いいたします」
既に幾つかツッコミどころが垣間見える。
「ワイロおじさんはトムのお父さんなんだ。もちろん私とも顔なじみだよ」
「ああー! どこかで聞いた名字だと思ったら。父親は村長で息子は王様って、失礼ながら随分な名家なんですね」
「あはは……いえ、実は私は息子が王になってからの村長就任でして、私の両親から上は全員普通の農家なんですよ。なので、息子が飛び抜けてすごいだけなんですよ」
なるほど。それにしては実直さがにじみ出ている方であり、なるべくしてなったという雰囲気である。一方父親と聞いたジリーは気付けば建物の外へと出ていた。ある意味避難とも言えるかな。
ワイロさんの自己紹介が終わったところで、アイシャから説明が入った。
「本題だけどね、私の友達四人のうち三人が突然いなくなっちゃって、もう三日目なんだ。村の外には出ていないとは思うんだけど、崖の下には洞窟もあるし、それにいなくなる少し前に地震があったから、それもあってどこかに閉じ込められているんじゃないかって。だから本当は一分一秒を争う。お願いだからみんなの力を貸してくださいっ!」
深く頭を下げるアイシャに、俺たちも協力を惜しまない事を決めた。
「よし、それじゃあアイシャとフューラとリサさんはその洞窟。シアは上空から探して、ジリーは監視がてら俺と一緒に。プリムちゃんは鼻で追跡頼むよ」
「了解!」
一斉に散らばる俺たち。
――アイシャ班。アイシャ視点。
「まずは洞窟だね。あそこは私も遊び場にしていたくらいだからモンスターは出ないはずなんだけど、途中が狭くて奥までは誰も進んだ事がないんだ。もしかしたら……」
「それもありますけど、地震で崩落、新たな穴が出来た、という可能性もありますよ」
そう言われると余計に不安になってきた。
「急ぎますよ」
「うん。……って、ええっ!?」
フューラが私を抱えて一気に空へ。リサさんもしっかり付いてきてるけど、これ結構速くない?
と思っているとすぐに到着。海側から崖下の洞窟を見る。
「どこですか?」
「あそこ。灯台の左下に開いてるでしょ」
洞窟を確認したら私を抱えたまま、飛びながら洞窟に突入するフューラ。正直怖いんだけど! っていうか速い速い! いやああああっ!
「っと、ここで行き止まりですね。……アイシャさん?」
「……目があー……回ったあー……」
狭い洞窟の中を縦横にぐるぐる回るんだもん。酔った。
「フューラさん!」
あ、リサさん到着。そしてすごく怒ってる。私の代わりに怒っといて……。
「どうやらこの洞窟は外れのようですね」
「……いい加減にしなさい! あなたはカナタさんから怒られた理由を何一つ理解していない! あなたのせいでアイシャさんが怪我したら、どう責任を取るつもりですか!!」
「え……あ……すみません」
「謝って済む問題ではありません! カナタさんが怒ったのは、あなたが機械だからと無茶をする事で、フューラさん自身だけではなく、その周りにも被害が及ぶ事を考えて怒ったのですよ! まだ怒られて日が浅いというのに、もうこんな事をして!」
いやあ……私の言いたい事全部吐き出してくれ……はき……。
「……ごめん降ろして。吐きそう……」
「えっ!? あ……」
うん、吐きました。十七歳のか弱い乙女が吐きました。
私はフューラからリサさんに移動。さすがにリサさんの飛び方は優しいです。
「あ、リサさんその服、破けて……それに血が出ていますよ!?」
後ろを付いてきているフューラの言葉で私も気が付いた。リサさんは肩とわき腹から出血している。
「これくらい治癒魔法でどうにでもなります! とはいえこの服はもう駄目ですね」
「……本当に申し訳ありません。僕が学ばないせいでこんな……」
「反省だけならば犬でも出来ます! あなたは犬以下なのですか!」
完全にやり込められているフューラ。
「でも、気持ちは分かるから、カナタには内緒にしておくね。……次はないよ!」
「は、はい……」
本当、ここにカナタがいなくてよかった。いたらきっとフューラは帰らされていたね。
――カナタ班。カナタ視点。
こちらはシアを飛ばしつつプリムちゃんの鼻を頼りに、村を中心に捜索中。村長のワイロさんも同行し、村長権限での強制捜査も可能に。
「カナタ……悪いんだけどさ、あたしちょっと後ろから付いて行っていいかい?」
「ワイロさんを警戒しているのか?」
「……うん」
仕方がないな。逃げはしないと誓ったので、ワイロさんとは離して歩かせる事にした。
さて本題の捜索だが、プリムちゃんがにおいを辿りあちらこちらへ。
「うーん、村の中はほとんどにおいがしませんね。三日も経っていると消えちゃってるのかな」
と、シアが降りてきた。
「そっちは?」
(ううん)
参ったな。動物二人の目と鼻で駄目となると、見えないところに監禁状態なのかも。
「……待ってね。今少し……あ、やっぱり。……あれ?」
「どうした?」
「においがね……あ、した。……しなくなった。こんな感じなの」
それだけ細かく嗅ぎ分けられる時点ですごいのだが。ともかくその理由を考えるべきだな。そうすれば位置の特定も出来そうだ。
「……あの、それって風の向きに関係があるのでは? この村は防風林があるので陸側からはあまり風が来ないんですよ」
「ああなるほど!」
俺たちは一旦村から離れて防風林の近くへ。ここならば建物に邪魔されずに風が来ると考えたのだ。
「……正解かも。えっとね、海側から強い風が来るとにおいが乗るよ。でも村の中にいたらこんなに薄いにおいにはならないんじゃないかな? だからきっと村よりも海側」
「ならば行ってみるしかないな。シアは先に海上から崖を見て、どこかに影があったりしないか確認」
(うん!)
――灯台。
俺たちは灯台を目指し歩いている。途中分かれた三人も飛んで来た。やっぱり空を飛べるのは便利そうだな。羨ましい。
「洞窟にはいませんでした。奥は少し崩れていましたけど、それ以上人が入った形跡なしです」
「そうか……ってリサさん、その怪我!?」
「ああ……えっと、洞窟内で転んでしまいました。既に治癒魔法はかけてありますので、あと十分もあれば傷口は閉じます。なので心配ご無用です」
何だ、驚いた。
「はあ、てっきりフューラが無理したのを追いかけて怪我したのかと。でも転んだだけならばよかった」
「あ、あはは……」
苦笑いのアイシャ。あれ? この反応は……まあ今は捜索が先だな。
「……うん。やっぱりこっちに来たらにおいが強くなった。付いてきて」
真剣ながらも自信に満ち溢れたプリムちゃん。本当頼りになる。どこかのアンドロイドよりもよっぽどだ。
「えっと、この灯台って入れますか?」
「いえ、地震で傾いた可能性があって、入れないようにしてあります。でも三人がいなくなったのはその後ですよ?」
という事は灯台の中にいる可能性はないのか。
「とりあえず入ってみても?」
「ええ、鍵は持ってきていますので」
村長さんが鍵を開け、中にお邪魔。灯台の中とはどんなものなのかと思ったら、壁伝いに螺旋階段が延々続いている。
「僕が行ってきます。僕は疲れないので」
言うが早いか、白衣を翻し階段を駆け足で上るフューラ。
「カナタ」
「うん?」
アイシャが小声で耳打ちしてきた。
「フューラの事、怒らないでね」
リサさんの傷の事か。やっぱりあいつやらかしていたか。
「もう私とリサさんには怒られたから、お願い」
「……分かったよ」
全く、うちの女性陣の結束力には頭を抱えるよ。
数分で上からフューラが飛び下りてきた。そしてきれいに着地。って言ってる場合じゃないな。
「そういう事するなと言っただろうが」
「あ……すみません、急いだもので。それで、上には誰もいませんでした」
という事は、灯台の近くのどこかにいるという事だな。
外に出るとシアが来た。
(ううん)
聞く前から首を横に振った。つまりは収穫ゼロ。
「あ、そうだ。灯台下の倉庫ってどうなってますか?」
「あー……いや、でもあそこは地震の影響はなかったはずだよ」
「そう言って何も見ずに捜索対象から外した?」
アイシャの言葉に村長の顔色が青くなった。急ごう。
――灯台下の倉庫。
正確には灯台の地下にある倉庫だな。灯台正門からではなく、一旦裏に回ってから入る構造だ。
「ちょっと、これ!」
見るとどこから転がってきたのか、大きな岩が半分ドアを押し潰しており、どう足掻いても外へは出られない状態だ。
「いや、私が確認した時にはこんな……」
「とにかくここの可能性が一番大きいな」
プリムちゃんがひしゃげた扉の隙間からにおいを嗅いだ。
「……間違いない!」
「よしシア、中に入って確認頼むぞ」
(うん)
魔法で穴を開け、中へと入るシア。
数分後、中からヒューというシアの鳴き声がした。
「発見だ! この岩どかすぞ!」
「……でもどうやって?」
「フューラ、岩撃って壊せるか?」
「可能ですけど、適切ではないです。僕のライフルでは威力が高過ぎて、岩を破壊した時の衝撃で二次災害が発生する可能性がありますから」
フューラじゃ駄目か。
「私もさすがに岩は剣じゃ切れないよ。出来る事は出来るけど、折れるかも」
「わたくしも、この場所では魔法は難しいです」
二人も駄目か。
「……あたしに任せな。破壊ならあたしが一番だ」
「ジリーが? 確かにパンチ一発で家に穴を開けたとは聞いたが……」
するとジリーは拳を突合せやる気満々。
「ちょっとね、そこのプリムちゃんとやらに嫉妬してんだよ。鼻が利くっていう自分の力をしっかりと正しく使っているあんたが羨ましいんだ。だからね、あたしも力を正しく使いたいんだ。任せてくれよな」
こちらを振り返り笑顔のジリー。それは本音だ。ジリーは自分に価値を求めている。ならばそのチャンスを作ってやろうじゃないか。
「分かった。存分にやれ!」
「っしゃあっ!!」
体術は習っていないとは言うが、それでも構えは出来ている、気がする。息を整え精神集中。顔の作りは可愛いが、その表情は精悍。
「ふう……行くぜ! うぉるあっ!」
正拳突き一発。すると見事なほど岩が粉々に破壊された。
「うおーっ! ジリーすげー!」
「……あはは、まさか自分でもうまく行くとは思わなかったよ」
後はこの扉を……ん?
「ちょっと待て、この扉ひしゃげてるせいで開かないぞ?」
「それもあたしに任せてもらうよ」
上機嫌だな。ジリーは扉の取っ手に手をかけ、思いっきり引っ張った。
「うぉるああああっ!」
バゴン!
「……やべっ!!」
いい音と共に、取っ手が折れた。これにはギャラリーも困惑。
「……こうなりゃ扉ごと粉砕するまでよ!」
止める間もなくジリーは扉を思いっきり殴った。するとこれが見事に扉が吹き飛び、通路が現れた。
「みんな!」
アイシャがいの一番に中へと飛び込んだ。次に村長のワイロさん。そしてどこから現れたか、赤い髪の子供。
「ジリー、お手柄だ。お前さんの力の正しい使い方、分かったな」
「……ああ。……やべっ、嬉しくって……うん……」
人に顔を見せないように少し離れ泣き始めたジリー。初めてなんだろうな。初めて自分の価値を認めてもらえたんだろう。その力を人のために使ったんだろう。
――村へ。
救出された三人だが、あそこには遊びではなく家の手伝いの一環で寄っていた事が判明し、誰も怒れなくなった。
「それでも、閉じ込められちゃったのは事実です。わたしたちのせいで皆さんにはご心配をおかけしました。ごめんなさい」
「せめて外に連絡役を置いておくべきだったわね。今後はこのような事がないよう、気を付けます」
「ごめんなさいです。もう誰も閉じ込められないように、この経験をもとにして改善するですよ」
「ぼくからもごめんなさい」
灯台下に突如表れた赤い髪の子供は、救出された三人のうちの一人の妹さんだった。ずっと俺たちの後を付いてきていたらしい。
なんという甲斐甲斐しさか。そしてずーっとこの姉妹は一緒にくっ付いており、羨ましいほど仲が良かった。
その後アイシャは実家で一泊。俺たちはジリーやプリムちゃんの事もあり、早急に帰る事にした。
「今度またみんなで来てよね。今回は忙しくて私の家族に紹介出来てないんだもん。絶対にね」
「どうせなら住んでやろうか? なんてな」
「あはは」
――その後。
俺は先にペロ村に行き、プリムちゃんを帰す。
「今回は本当に助かったよ。ありがとう」
「ううん。あのお姉さんが言っていたけど、力を正しく使っただけだよ。……お姉さんには感謝したい。なんかね、わたしもっと人の役に立ちたいなって思ったの。だからもしも手伝える事があったら、いつでも力になるよ」
ジリーのおかげでプリムちゃんにも目標が出来た様子。満面の笑顔がその証拠だ。
次に王宮へ行き、ジリーを収監。
「――だってさ」
「あはは、感謝するのはあたしのほうなのになー。あたしさ、刑期が終わったらカナタたちと一緒に行動したいんだよ。いいかな?」
「それは構わないけれど、暴走しないでくれよ?」
「あっはっはっ、それもあって一緒に行動したいんだ。あたしの男慣れというか、父親慣れのためにもね。それにあの勇者様ならばあたしが暴走したところで止めてくれる。あたしにとっても周りにとっても、それが一番だと思ったんだよ」
ジリーも次の目標が出来たのか。プリムちゃんとお互い同士で影響しあったんだな。
そしてリサさん。
「その服どうするんですか?」
「着替えはありますが、そろそろ魔法使いらしい格好をと考えています。……ほら、彼女のような」
通りすがりの魔法使いを目線で示したリサさん。三角帽子の分かりやすい魔法使いだな。違うのはカラフルな事。ある意味で魔法少女に近いかも。
「わたくしは王女としての服装ばかりなので、あのような服装を一度してみたかったのですよ。この際なので挑戦してみようかと思っています」
「似合うかどうかは別にして、見てみたいな。期待しておきます」
「ふふっ、ご期待に添えるように頑張ります」
最後にフューラ。
「……カナタさん。すみません。僕また間違えてしまいました。そして今度はリサさんに怪我まで負わせてしまいました。……失格、ですよね」
「残念ながらアイシャから、先に二人に怒られているから俺からは怒るなと言われている。だから今回は怒らない。だがな、本当にこれで最後だ」
「はい。すみませんでした」
性能という面では一番のはすが、中身は散々なフューラ。その問題が、自分を守るために自分を否定し、機械であり続けたというところに起因するのだから、なんとも皮肉な話だ。
「フューラ、もうお前は機械でいる必要はないんだ。人に頼っていいんだからな」
「……はい」
それでもやっぱり一人で抱え込むんだろうな。困った奴だ。




