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第百三十九話  いつもの勇者様

 ――自宅。

 「あ、アイシャお帰りー」

 「ただい……って何でレイアがいるのさ?」

 みんなを呼ぼうと自宅に戻ったら、レイアがいました。

 「いちゃ駄目?」

 「駄目じゃないけど……今日は後にしてくれない?」

 「ダメー」ってモーリスだ。


 「……だったら余計にレイアさんいないとダメ。一緒にあそこまで付いてきて」「ちょっ! モーリス!」

 「アイシャには、レイアさんが必要になる。ピンクダイヤを見つけた時から思ってたんだ」

 モーリス……何考えてんのさ?

 「えーっと……よく分からないけど、アイシャたちに付いていけばいいの?」

 「うん。お願いしまーす」

 「……はぁ。モーリスの考えが分からない」

 ニヤニヤしてるし。


 シアとフューラが見当たらない。

 「二人は?」って聞いたら答えたのはジリー。

 「買い物。あれはあれで気が合うみたいだからね。あ、そうそうシアから伝言。晩飯はタツタアゲだってさ」

 「……うん」

 偶然、だよね。でも、今日で……。

 「アイシャ?」「ふぇっ!?」

 「どうした? 魂抜けてんぞ」

 「あ、うん。えっと……準備がね、出来たんだ」

 自分でも分かる。声が喜んでる。

 「……ふーん。それでか」

 「うん。二人にはあっちで合流するように言っておこう」

 私は、本当に周りが見えなくなってた。



 ――シア視点。

 突然フューラの元に無線機で連絡があった時には、なに事かと驚いてしまった。

 内容はすぐに分かったので、我々は買い物を切り上げて、一旦フューラの工房にある冷蔵庫へと向かっている。

 「今のうちに聞いておきます。シアさんはどちらですか?」「こちらです」

 即答して自身を指差してみたら、思いっきり白い目で見られてしまった。

 「……と、いうのは冗談だが、正直あまり気は進まない。フューラも自身がそのような体であるから、余計に厳しい目で見てしまうであろう? それは過去のある私も同じだ」

 「そうですか。残念ながら安心しました」

 「ははは」

 フューラは私がどちらの立場にいるのかを確認したかったのだな。


 「しかしアイシャの気持ちも分かる。我々が探し求めた「またな」があるのだからな」

 「そこは僕も同意しますよ。アイシャさんの前で言うと面倒になるので絶対に言いませんが、これで確実にカナタさんが戻ってくるというのであれば、僕だって最後のボタンを押します。しかしそうじゃないですからね」

 確実に、か。

 「……正直に聞かせてくれ。精神的な部分は抜きにして、折地彼方という命を作る、その成功確率はどれほどだ?」

 「未知数です。まあ……ははは、偉そうな事を言っておいてなんですけど、あの技術は僕でも全く分からない代物ですから」

 「説明文はあったのであろう?」

 「はい。でもそれはあくまでもあの装置の使用方法であって、どのような原理かまでは詳しくは載っていません。記載してあると思われる場所は分かっていますが、扉は開きませんよ」

 「そうか……。チカ、貴様はどうなのだ?」

 「――わたしー? んー……もしもね、わたしのコアも……今の忘れて。わたしはどっちでもいーぃっかなぁー」

 真剣かつ物悲しそうな声をすぐさま取り消した。……そうだな。カプレルチカもコアを用いて人になれるのであれば、それを望んだところで何もおかしくはない。



 ――王立図書館。

 「おーい!」

 約一名満面の笑顔でぴょんぴょんしている。そして何故かレイアさんとトム王もいる。

 「……なるほどな」

 この時点で何故二人がいるのか、その理由が理解出来た。

 いまのアイシャは、非常に危険なのだ。舞い上がっていて周りが見えていない。顔は満面の笑顔なのに、目が笑っていないのだ。レイアさんは分からないが、トム王は間違いなくそれを察し、制止するつもりで来たのだろう。

 「リビルには事前に話をつけておいてあります。本日、王立図書館は臨時休館です」

 「さっすがトムー!」

 「ははは……」

 苦笑いのトム王だが、その表情も今のアイシャには見えていない。


 まずは屋外に置いてある資材の確認。だがこれはフューラしか出来ない事なので、我々は眺めるだけ。

 「確認したものから運んじゃってください」

 とは言うものの、その量は荷車にして八台分にもなる。魔法で運搬するにしても二人で一台の換算なので、六往復必要だ。

 「レイアもおねがーい」

 「……しょうがないなぁ」

 これで私、リサさん、モーリス、レイアさんの四名。ならば四往復で済む。



 どうにか運び終え、皆で館内に入り、例の場所を目指す。

 道中鼻歌を歌いながら一人さっさと行ってしまうアイシャ。

 「……シアさん、どう思いますか?」というトム王の質問だが、答えるまでもないであろう。

 「皆同じ事を思っている。だろう? モーリス」

 「うん。ただ……少しずれてる」

 「ずれている? 何がだ?」

 「……アイシャの本当の気持ちと、みんなが考えてるアイシャの気持ち。でもこれ以上は、みんなで見つけて」

 なんともモーリスらしい。


 さて現場に到着。円形の広間には、すでに所狭しと資材が置かれている。

 「はやくーはやくー!」

 「はいはい。ちょっと待ってくださいねー」

 フューラは呆れ声。いや、我々全員がとっくに呆れている。

 と、レイアさんに突付かれたので耳を貸す。

 「ここ何なんですか? 何するんですか?」

 「レイアさんは知らないのか。……こちらへ」

 一旦部屋を出て、通路で説明する事にした。


 「はぁ……」

 「いきなり溜め息って事は、ろくでもない事なんですね」

 「ははは。まあ……ろくでもない。まずはこの施設だが、人工生命体の研究施設らしい。人工生命体というのは、いままで存在しなかった生物を、人の手で生み出す事だ」

 「……つまりモンスターの胞衣と」

 「そう言っても差し支えない」

 呆れた表情のレイアさんだが、もう気付いた様子だ。

 「はーそういう事。アイシャ、カナタさんを蘇らせるつもりなんだ」

 「正解。そしてもうひとつ。性格や記憶は再現出来ない」

 「……つまりは命を弄ぶも同じ事をして、作られたカナタさんは同じ姿の別人。だからみんないい顔してない」

 さすがは秀才。


 部屋に戻ると、地面から箱のようなものが三つ、せり出していた。

 「それは?」

 「ここに資材を投入してください。ああ、ピンクダイヤは僕が預かっておきます」

 ピンクダイヤはモーリスが持っていたので、アイシャを介さずにフューラの手へ。

 「投入の順番や量は? あたしに任せたら適当に全部放り込むよ?」

 「それで大丈夫です。後はこちらで微調整出来ますから」

 「わーった。んじゃ放り込むぞー」

 そしてジリーは資材を、まるでゴミ箱にチリ紙を放り投げるが如くポイポイ放り込んでいく。……私もやるか。

 「って重っ!」

 袋を持ち上げたら私の腰が粉砕されそうになってしまった。 十キロ以上はあるか?

 「あっははは! そんなひ弱じゃあたしの真似は出来ねーな!」

 「ジリーの真似など出来てたまるかっ!」

 「ねぇーはやくー!」

 全く……。



 投入が終わり、フューラがまた機械を操作。

 「……おっ」

 大きな装置に満たされていたピンク色の液体が、黄色に変わった。

 「ねーまだ?」

 「まだです。……はぁ」

 フューラの溜め息、よく分かるぞ。

 というかアイシャがいよいよおかしくなってきている。ここはひとつ……と思ったらモーリスに制止された。そしてモーリスは光文字で、レイアさんとトム王に何かを伝えた。

 なるほど、モーリスは近くにいる我々よりも、昔からの知り合いであり、現在は少しだけ離れている二人の言葉のほうが、より強く効くと考えたのだな。

 「さてと、あとはピンクダイヤを配置するだけです」

 身が入っていない、嫌々な雰囲気をこれでもかとかもし出すフューラ。

 「はっやくー」

 一方こいつは……あえて語る必要もなかろう。


 フューラはピンクダイヤを手にして大きなビンに上がり、あとはその手を離すだけ。

 ……という場面に来てフューラが振り向き、口元だけをニヤリとさせた。あれは、嘲笑だろう。

 「ああそうそう。アイシャさんにはまだ言っていませんでしたね。この実験、成功率は1%もありません。それからカナタさんが僕たちの知る姿になるには、当然ながら長い長い年月が必要になりますのであしからず」

 そして答えを聞かず、ピンクダイヤを装置にセット。四本の爪のような部分があり、そこに引っ掛けるようだ。

 手に付いた液体を軽く払いながら、また無表情に戻ったフューラがコンソールの前へ。

 「……ねえ、今の、どういう意味?」

 「言葉の通りですよ。この実験が成功する事はほぼあり得ず、たとえ成功したとしても、カナタさんが生まれ出でる時までアイシャさんは生きていますかね? はっはっはっ」

 物凄い嫌味だ。だが、恐らくこの言葉に嘘はない。


 フューラは改めて……いや、今まで私たちの誰も見た事のないほどに、まさに親の敵を睨みつけるかのような表情をした。

 「……あとは開始するだけです。さて、改めて聞きます。本当に、いいんですね?」


 「……――」


 「いい。やって」


 消え入りそうな小さな声に、これでもかというほどのの不安と後悔を乗せて発せられたゴーサイン。

 「それでは」「待って!」


 「……やって」

 自ら止めながらも続行を指示。

 「はぁ。……あーもう嫌になりました。終わり終わり。チカ、撤収」

 呆れ果てたと言わんばかりのフューラ。いや、我々全員だ。

 「フューラ!」「いい加減にしなさい!!」

 ……初めてだ。初めてフューラが、人に向けて声を荒げた。


 「アイシャさん、あなたには覚悟が出来ていない」「出来てる!」「嘘だ! ならば何故一度でも言いよどんだ? あなたのそれは覚悟じゃない。ただの虚勢だ!」

 あのフューラが言い切ったぞ。だが、我々は誰も驚かない。こうなる事は見えていたからだ。

 「……るさい。うるさいうるさいうるさい!! 私がいいって言ってんだから、あんたは私に従えばいいんだよ! 機械ならオーナーに従え!」

 「嫌です。僕は機械じゃない。僕は人間だ。だからこそこんな場所で生み出される、人間としての記憶の無い折地彼方を、僕の本当のオーナーである折地彼方を否定する! 僕にはここから生まれる彼の気持ちが分かる。ならば今僕が彼に対し出来る事は、彼を生み出さない事!」


 たまらずアイシャはコンソール画面をバンッ! と強く叩いた。

 「そんな事はどうだっていいんだよ! お前はボタンひとつ押すだけだろうが!」

 「それ、本気で言ってますか?」

 唐突に冷静な声色を出したフューラに、アイシャは表情と仕草では次の言葉が出ているのだが、しかし口が動かない。

 「……ほ、本気……だよ。本気でいいじゃねーか! お前が出来ないってなら私がやってやるよ!」

 本気だと言いながらも言いよどんだ。全てが裏目に出ていて、全てが見透かせてしまえる。

 「やれるものならばやってみなさい。ただし僕はここを退きません。やるというのならば僕を殺してからどうぞ」

 「そんなん! ……謝れないじゃん……」

 ぽつりと呟いた。

 恐らくは聞こえないようにと呟いたのであろうが、勢いの乗ってしまっている今のアイシャの声量では、ここにいる全員に聞こえてしまっている。


 ……そして、これが本音なのだな。これがアイシャの真の目的。

 我々はこのアイシャの暴走は、カナタを手に入れ、かつての生活を取り戻す事に固執するからこそだ思っていたのだが、いや、違うのだ。

 このアイシャは、カナタを失ったのは全て自分の責任であると考えしていまい、カナタの命をたった一人で背負っているつもりだったのだ。

 そしてモーリスの言っていた考えの相違こそがこれだ。アイシャはカナタを復活させ、謝りたいのだ。自身の弱さのせいで命を落としたカナタに、誠心誠意の謝罪をしたいのだ。

 なんという馬鹿正直な娘か。なんという傍迷惑な娘か。

 ……ああ、そうだった。我らが勇者様は何でも一人で抱え込み、周りに無用な心配をかけさせる大馬鹿者であったな。


 思考が完結した私は、心の一部ではとても安心している。この娘は確かに暴走してはいるが、この程度ならば我々にかかれば造作も無い。

 「アイシャ、まずは冷静になれ」

 「私は!」

 と私に振り返ったアイシャだが、特に何事もない普通の表情の私を見て、睨む表情から徐々に自分の情けなさを自覚していく。

 「……だからって私は絶対に折れないから。絶対!!」

 そう捨て台詞を残し、一人部屋の外へ。


 皆でアイシャの背中を見送り、全員が改めて深い溜め息を吐き、あれをなだめるのかと思うと気が重い様子だ。

 だがこの重い空気の中、最初に口を開いたのはトム王であった。

 「はぁ……ははは。見事モーリス君の言う通りになったなぁ。さて、ここからがオレとレイアさんの出番だね」

 「そうみたいだねー。……あ、ですね」

 「公務じゃない時は友達感覚でいいですよ。オレもそのほうが楽なんで」

 「あー……それじゃあお言葉に甘えちゃおうかな」

 我々の誰よりも付き合いの長い二人の事だ、我々の知らないアイシャの扱いも心得ているであろう。



 ――トム王視点。

 オレの視点なんて初めてだよね。まあそんな事はいいんだ。

 オレとレイアさんは機械式のエレベーターに乗って、カプレルチカの誘導で上層階へ。

 「あ、そうだ。レイアさん、先に意思統一をしておきましょうか。こういう時のアイシャの行動といえば? せーのっ」

 「ベッドに潜る」「ベッドに潜る」

 見事に一致。

 「あはは。やっぱりそうなっちゃうかー」

 「アイシャは昔からそうだったからね。あ、オレがアイシャと幼馴染だっていうのは以前も話しましたよね?」

 「うん、ばっちり。私との関係はもちろん知っていますよね?」

 「はい。ご学友であり、アイシャの性格を変えた一番の功労者でもある」

 「功労者って、大げさだなーえへへ」

 照れ笑いをしているその表情で、オレも思わず笑顔。


 「それじゃあ私からも。私とアイシャは同い年の十九歳なんですけど、王様とアイシャはどうなんですか?」

 「同い年の十九歳だよ。だからオレとレイアさんも同い年。……あ、そうだ。オレもう少しで二十歳だ」

 「あーそうしたら私のほうが下ですよ。私ついこの前十九歳になったばかりだから」

 「へぇ」

 なんて世間話をしていたら、カプレルチカから連絡が入った。

 「王様と職人チームへー。ターゲットを中央制御室で確保してるよー」

 「アイシャ暴れてる?」

 というレイアさんの確認に、カプレルチカは若干の戸惑いを見せた。

 「……それは自分の目で確認してー。わたしは用事あるから、後はおまかせー」

 投げられちゃいました。


 その中央制御室に到着。中央に塔の建つ大広間だ。

 アイシャは……いた。塔の影に三角座りでいじけている。そうか、カプレルチカからはアイシャが死角になっていたんだ。

 オレとレイアさんとで目配せをして、先にオレが行く事に。

 「アイシャ」

 「………………」

 口を尖らせてそっぽを向かれた。オレにしてみれば、懐かしい光景。

 「アイシャ、そういうの変わってないねー」

 「ははは、レイアさんも経験ありなんですか」

 「うん。引き際を間違えるといつもこうなるんだよね」

 「あっははは! そうそう。本当に変わってないね」

 なんて会話を本人の目の前でやったら、余計にふさぎ込んだ。これもよく見た光景。


 「アイシャ、自分が救われるためにカナタさんを巻き込んだら、それこそ本末転倒だよ?」

 「分かってるからここにいるんでしょ?」

 「………………」

 またレイアさんと顔を見合わせ、二人して笑ってしまった。

 「あはは、やっぱり」

 「ですねー。あはは」

 何がやっぱりなのかというと、アイシャはこういう場面、本当に知らずに怒られた場合は素直なんだ。でも今は反応しなかった。つまりこうなる事を分かっていた。


 「はぁ」と俺もレイアさんも溜め息を吐き、二人でアイシャを挟んで三角座り。

 「アイシャ、パンツ見えてるよ」「ちょっ!?」

 ははは。……見そびれた。

 焦って姿勢を変えたアイシャ。レイアさんのこれは、アイシャが冷静か否かの確認なんだろう。



 次は二人ともだんまり作戦。

 じーっと、ただただじーっとしてるだけ。これがアイシャには一番効くんだ。

 「……何さ」

 ほら。

 だけどさらにじーっと待つ。レイアさんもさすが分かってる様子だ。

 「……それ、打ち合わせしたの?」

 「………………」

 「何さ……何さ、私……」

 最初はオレたちへ、次はアイシャ自身へと向けられた言葉。


 「……分かってたもん。分かってるはずだったんだもん。全部。……だけど、みんなもそれを望むと思って!」

 と怒ったアイシャだが、オレたちの表情が変わらない事を確認すると、次は瞳から涙がこぼれた。

 「……私最悪だ。自分の身勝手を人のせいにした」

 「それはちょーっと違うよ」

 うん、少し違うよね。

 「アイシャのそれは、人のせいにしたんじゃない。自己を正当化するために他人を巻き込んだ。ただ人のせいにするよりも、もっと悪い事だよ」

 「……んぅー……」

 組んだ腕に顔を埋めて隠した。


 これだけ反省していれば、もう続行しようとは言わないはずだ。

 「それじゃあ戻るよ」

 「……んーん。だって……本気だもん。だからもうあそこ、行かない……」

 ……オレの想像以上かぁ。それだけアイシャはカナタさんを失った事に大きな責任を感じているんだね。そして、大きく勘違いをしている。

 「アイシャ、それじゃあ責任を取ったとは言わないんだよ。お互いの心を無視した、ただの自己満足に過ぎない。例えばアイシャが死んで、オレがここでアイシャを復活させ、謝ったとしよう。でもその復活したアイシャは、何故謝られているのか分からないんだよ? そんな一方的な責任の取り方は認められないし、誰も幸せには出来ない」

 「だったら!」「別の方法で責任を取ればいい」

 オレの言いたい事をレイアさんが言っちゃった。


 「ねえアイシャ。アイシャはこの施設が見つかるまで、カナタさんの死に対して、どう責任を取ろうとしてた?」

 「……戦争終わらせて……平和にして……未来変える……」

 未来を変えるというのは、リサさんが仰っていた大厄災の事だね。

 「でも全部終わった。……それで、ここが見つかった。だったらもうひとつしか見えないじゃん! 私間違ってる!?」「間違ってる」

 レイアさん、即答です。

 「ひとつしか見えなくなるのは焦ってる証拠。冷静に周りを見ないとだよ」

 「じゃあ他に何かあるの!?」

 「それを見つけるのもひとつの責任だよ。アイシャのやってる勇者っていうのは、そういうものでしょ?」

 「………………」

 アイシャ撃沈。


 「……私……もう、分かんない……」

 という一言を聞いて、ようやくかと思った。そしてそれはレイアさんも同じみたい。

 「分かんないならば、どうすればいい?」

 「……やだ……」

 「っていう事はもう分かってるんだ、ねー」「ねー」

 あはは、アイシャはまた顔を真っ赤にして口を尖らせて、腕で顔を隠しちゃった。

 「アイシャ。オレは小さい頃からアイシャの事を見てきて、アイシャの事ならば大抵の事は分かるつもりだ。だからはっきり言うよ。オレにも分からない事は、仲間に聞きなさい。今アイシャの事を誰よりも分かってくれるのは、オレやレイアさんじゃない。カナタさんと一緒にいた、君の仲間であり家族である彼女たちだ。アイシャ、これ以上意地を張るのはやめなさい。それは仲間の信頼を損ねる結果に繋がる。そうなれば第二の犠牲者を出してしまう。そんな事、君も仲間も、そしてカナタさんも望まない」

 ……少し王様風を吹かせ過ぎたかな。



 ――一方その頃、最深部のフューラ視点。

 「はぁ……」

 「まあまあ」

 溜め息を吐く僕の肩を、リサさんが揉んでくれています。

 「――あのー、おねえちゃん。あの勇者様、やっちゃってくれてるみたいだよ」

 「やっちゃって? どういう事?」

 「それが、えーっと――」

 ………………マジですか。



いじけると何歳になっても子供の時と同じような行動を取る、というお話。

最近益々暑くなっているので、皆さん体調には気をつけましょう。

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