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第十話    コンコンコン

 引越しを終えてから一週間。その間一日限定の店番やシアを連れて引越しの手伝いをしたおかげで、現在財布には十四シルバーある。物価はかなり安く、家賃を含めても一ヶ月四シルバー以下で生活出来るので、これで三ヶ月は生活が可能だ。



 ――とある場所。

 「……で、いきなりこんな所に連れ去りやがって、そろそろ説明してもらえませんかね? 勇者様」

 「あはは、ごめん」

 今朝早く、突然アイシャが俺の家に乗り込んできて、俺とシアは転送屋に連れ込まれ、よく分からない町の一角までテレポートさせられたのだ。

 「えっとね、トムからの依頼で、自称王女様がこの町で迷子になっているらしくてね、連れて王宮まで来てほしいって」

 「それでなんで俺まで借り出されなけりゃいかんのだ?」

 苦笑いのアイシャ。何か隠しているな。その証拠に目が泳いでいる。

 「これ以上隠し事をするのであれば、俺は帰らせてもらう」

 「あ! あー……分かった。話す」

 と言いつつ人の袖をガッチリ捕まえているんだが。


 「この町はソラノハって言って、伯爵様の統治する小さな町なんだ。それで、その自称王女様がカナタやフューラと同じで異世界から来た人の可能性があるの」

 「え、三人目!?」

 「まだそうと決まった訳じゃないけどね。それで何でそういう話になったかなんだけど、誰も知らない王国の名前を語っているらしいんだ。もしも本当だったら外交問題になりかねないから、とりあえず王宮で保護しようって、そういう事」

 外交問題ならば俺たちよりも大使を動かせばいいのに。と思ったらアイシャが大きく溜め息。

 「はあ……。その人がね、よりにもよって伯爵様に監禁されているって噂が出ちゃったから困ったの。相手は伯爵様だから王宮でも無碍には出来ない。だから私が寄越されたんだけど、最初私が来た時は門前払いだったんだ」

 申し訳なさそうに人の顔を覗き込むアイシャ。嫌な予感しかしない。

 「ごめん。カナタを餌に使わせて?」

 嫌な予感的中! しかも女の子のアイシャは門前払いで、男の俺を餌に使うって、嫌な予感が全力全開なんですけど!

 「やだ! ぜーったいに、やだ!」

 当然だ。するとまあアイシャさんはこれでもかと目で訴えてくる訳ですよ。

 「いや、そんな子犬のような潤んだ瞳で俺を見てくるんじゃねーよ!」

 「私が門前払いの理由だけどね」「待て待て勝手に話を進めるな!」

 「伯爵様」「あーあー! 聞こえない聞こえない何も聞こえない!」

 「男色趣味らしいんだ」「アッー!」


 その後俺は、アイシャを置いて全速力で逃げました。逃げた結果、アイシャに風の魔法を使われ、吹っ飛ばされ、馬乗りにされ捕まりました。

 「報酬の七割あげるから。ね? お願い。おーねーがーいっ!」

 「痛てぇよ! 人の腕捻りながらの言葉じゃねーだろ!」

 「おおー! ねえー! があー! いっ!」

 「痛い痛い折れる折れる折れる!」

 もうやだこの勇者様。



 ――伯爵邸。

 「シアは何かがあるまで監視な。この件が終わるまではアイシャと行動しろ」

 (うん。……?)

 シアは頷いた後、とても不安そうに首をかしげた。おかげで俺の不安も倍増だよ。

 「それじゃあ行くよ」

 門前払いとは言ったものの、門は普通に開き、アイシャは玄関ドアを三回ノックすると、返事を待たず中に入った。いいのかよ、それ?


 「すみませーん、王宮の依頼で来たものですけどー、伯爵様はおられますかー?」

 何かすごく適当な感じ。あーもう何も考えないでおこう。

 「またあなたですか。私は何も……あら、いい男発見」

 出てきた伯爵様は、女性であった。女性で男色趣味……あ、これが本当の腐女子か? となると本気で俺の尻童貞がやばい!

 「アイシャ、俺やっぱり」「駄目!」

 腕を思いっきり掴まれました。まだ見た事のないお父さんお母さん、僕は今日ここで果てます。


 シリアスな覚悟を決め、応接間へと通された俺とアイシャ。さすがに伯爵邸だけあり、結構高そうな壷や絵画が飾られている。

 筋肉モリモリマッチョマンの執事がアイスティーを持ってきた。その容姿だけで俺の警戒心メーターは振り切れる。しかし今日は暑いので、冷たい飲み物にアイシャは遠慮なしに思いっきり飲んでいる。王様もう少しこいつに礼儀を教え込むべきだぞ。


 「――それで、自称王女様が私の屋敷に捕らわれているのではないかという噂があると?」

 「はい。なので失礼ながらお屋敷の中を確認させていただきたいんです」

 交渉はアイシャに任せるつもりだったが、チラチラと助けを求めてきている。

 「えーと、この噂を一掃するには実際に見せてもらうのが一番簡単なんですよね。何もなかったとなれば噂は消滅しますけど、我々を追い出せばそれだけ疑惑が濃くなってしまいますよ」

 顎に手を当て考えている伯爵様。

 「致し方ありませんね」

 お、結構あっさり。やっぱり男がいると態度が違うのかな? いや、これは安心する事柄じゃないな。


 さて伯爵邸を見て回ろう。一階は水周りが集中しており、応接間の他は食堂と従者の部屋だけだった。地下に下りる階段もなく、ゾンビが這い出てくる様子もない。

 二階は寝室と書斎、そして客室。屋根裏部屋もなさそうだし、構造的に隠し部屋があるとも思えない。

 「アイシャ、これ空振りじゃないか?」

 「うん……そう、かも……」

 「ん? どした?」

 「……なんか、眠い……」

 眠いって、まだ真昼間……あっ! 睡眠薬盛られたな!

 俺はアイシャの腕を掴み急いで脱出を試みる。

 んが! 玄関扉をガチムチ執事どもにきっちりガードされている。終わったな、俺の尻。


 その後俺は捕まり、アイシャは馬車に積み込まれドナドナ。相手は仮にも勇者。手荒な真似はしないだろうから外の事はアイシャとシアに任せる。だから俺は、自分の尻の心配だけしておく!

 捕まった俺だが、また応接間に戻ってきた。きっちり手足を縛られており、しかもガチムチ執事に担がれている状態。脱出不可能である。

 「一応俺も王様の知り合いなんですけどね。知れたらただでは済みませんよ?」

 「知れたら、ね。ここから先は例え数千の兵が来ようとも分かりませんわ」

 さてどうするのかと思えば、従者のガチムチアニキが、そこにあった戸棚を持ち上げ移動。そして見事に地下への階段が出現。ここが俺の死地か……。



 ――地下牢。

 地下に下りる途中に扉があり、そこには片側三部屋、合計六部屋分の牢屋があった。……俺さ、アイシャの時もフューラの時も捕まってないか?

 牢屋に入れられた俺。とりあえず即座に尻を食われる事態だけは避けられ、ようやく尻の緊張が解けた。

 「あのー?」

 と、最深の部屋に一名。暗くて容姿は分からないが、声から女性なのは分かる。

 「あ、もしかしてどこぞの国の王女様?」

 「……あなたは?」

 「えーと、王女様を助けに来たら捕まった人です」

 その後は無言に。重苦しい空気。落ち着かないのは尻だけが原因ではないだろう。



 ――その後のアイシャ視点。

 「……んーにゅー……ふぇぁ? ……ここどこ? ってか、何でシアがいるの?」

 気付いたら私は、何処かの農家さんの納屋で寝ていた。そして私の上にはシアが乗っかっていて、私の顔を覗き込んで……あれー?

 「んと、私はトムの依頼でソラノハの伯爵様のところに来て、門前払いを食らったからカナタを引っ張ってきて、伯爵様の邸宅を……ああっ! 伯爵の奴、私に睡眠薬飲ませたな!? 畜生完全にやられた。まさか伯爵がそんな手を使ってくるなんて、完全に油断してた!」

 私はシアを抱きながら急ぎ伯爵邸へ。門には鍵が掛けられており、開かない。

 「伯爵様ー!!」

 返事がない。留守かな? いや、馬車があるからいるはずだ。とすれば……強行突破! はさすがに出来ないな。トムからも荒事にはならないようにって言われているし。じゃあどうする……。

 「シア、あんたここ見張ってて。分かる?」

 (……?)

 ですよねー。とりあえず砂地に下手なりに絵を描いて説明。

 「っていう事。どう?」

 (……うん)

 よし、分かってくれた! その証拠にシアは伯爵邸の近くの木に止まった。私の考えた作戦は、トムを直接召喚する事。さすがに王様が来れば門を開けざるを得ない。



 ――王宮へ。

 「――っていう事だから、トムが直接乗り込んで!」

 「いやいや、さすがにオレが直接は行けないよ。代わりに大臣を寄越すからさ、それでどうにか……」

 「ならないからあんたに直接来いって言ってるの!」

 何故私はこんなにも焦っているんだろうかと、そんな自分を一歩引いて見ている私がいる事に気が付いた。そして幼馴染とは言っても仮にも王様にあんたと言ってしまっている。この件が終われば、間違いなく私は処罰される。


 「アイシャがそこまで焦るっていうのは、本当にない事だからね。分かったよ。カナタさんにも大きな恩がある」

 トムは玉座から立ち上がってくれた。

 「三十分で出発する。準備を始めろ」

 そしてトムはゆっくりと私の前へ。

 「王様に向かって”あんた”って言った事、忘れないからね」

 「ご、ごめん……なさい……」

 冷や汗が止まらなーい。誰か時間を戻してぇー!



 ――そんなこんなで再度伯爵邸前。

 「先にアイシャが声を掛けてくれ。それで反応がなければオレが出る」

 「はい、分かりました」

 王様は親衛隊十名と私を引き連れ、本当に来てくれた。無理は通すものかな? と思ったけれど、どう見ても睨まれているんだよね。ごめん、トム。

 私は再度伯爵様を呼んでみる。

 「伯爵様ー! 王宮からのものですけどー!」

 やはり反応なし。馬車はあるので、いるのは間違いない。

 大声を出したのでシアが私の元に来た。何か言いたげだけど、分からない。とりあえず身振り手振りで誰かが出てきたかどうかを確認すると、首を横に振った。つまり伯爵様もカナタも中だ。


 「後はオレに任せてもらうよ。……その代わり報酬は減額だからね」

 「うん。それは覚悟してる。っていうか、カナタに七割あげる約束なんだ」

 「じゃあ今回アイシャの報酬は全額カットだ」

 そんな御無体な、とは思うものの、今回は私がカナタを巻き込み、私の失態でカナタを監禁された。言い返せないな。

 「よし」

 トムは自ら邸宅の正面門前へ。

 「伯爵! エスエロシオ伯爵はいるか! トム=ヴァン・デー・ボンハルトだ! 今すぐ門を開けろ!」

 シーンと静まり返る。

 「私を無視するつもりか? いい度胸だ。貴様の爵位を剥奪しても構わないんだぞ!」

 十秒ほどで窓に人影が映り、それから少しして玄関ドアが開けられ、門も開錠された。伯爵様はまさかトム自らが来るとは思っていなかったようで、真っ青になって飛んで来た。

 「王様が自ら御出でになられるとは、とんだ御無礼を致しました。どうぞお入り下さい」

 さすが王様だなー、なんて思ってたら再度トムに睨まれた。私、立つ瀬がありません。


 今回は応接間ではなく、食堂へと通された。

 「さて伯爵。私が自ら来たからには、隠し事などは断じて許さない。既にアイシャから聞き及んでいる事だろうから説明は省かせてもらう。どうなんだ?」

 「い、いえ、私めは何もやましい事などしておりません。先ほどの男性の方ならば、既にお帰りに……」

 「ほう、オレに嘘が通じると? ナメられたものだな」

 トムのスイッチが入ったみたい。伯爵様も目が泳いでいるけれど、それ以上に私も怖い。

 「兵は手分けして屋敷内の捜索にかかれ。従者どもは全員一箇所に集め、一歩も外へは出すな」

 「はっ!」

 早速動き出す親衛隊の皆様。私はと言うと、シアを頭に乗せ立ち尽くしています。



 ――三十分ほど後。

 「報告いたします。現在までに怪しい通路などは見つかっておりません」

 すると伯爵様は大きく溜め息を吐き、そして高笑いを決めました。

 「おぉーっほっほっほっ、これで何もかもが王様とそこの小さい勇者さんとの勘違いであったとお分かりいただけましたでしょう? ご公務もおありでしょうから、どうぞお引取りを」

 勇者のカンとして、伯爵様は嘘を吐いている。でもその証拠がない。

 と、まるで私を誘導するかのようにシアに髪の毛を引っ張られた。もしかして知っているのかも? ……魔王に操られるのは嫌だけど、ここは賭けるか。

 「王様、シアが何か言いたそうなんですよ。ちょっとお付き合いお願いします」

 「……分かったよ。伯爵も一緒についてきなさい」

 「ちっ……」

 思いっきり聞こえていますよ、伯爵様。


 シアが私を誘導した先は応接間。そして戸棚を突付いた。

 「この戸棚に何かあるのかな? えーっと……」

 一見して普通の戸棚。引き出しを開けてみても、特にこれと言って変な部分はない。けれどもシアはしきりにここだと訴えている。

 「……あ! トム、じゃなくて王様。これ動かした跡がある!」

 戸棚と床の汚れの跡が一致しない。間違いなく何かある。早速親衛隊の方々が戸棚を移動させると……あった。地下への階段だ。

 「なるほどなるほど。伯爵よ、オレを騙そうとした事、覚悟しておきたまえよ」

 伯爵様は苦虫を噛み潰したような表情をしていました。


 階段を下ると牢屋を発見。

 「あ、カナタ見つけた!」

 「おおー良かったー! マジ良かったー! これで俺のケツが守られるよー!」

 ケツ? 命じゃなくて?



 ――カナタ視点へ。

 「いやー大勢の足音が近付いてきた時はケッ壊覚悟したんだぞ! 本当に良かったー」

 話の上ではあっさり進んでいるが、実際には俺がここに突っ込まれてから一日以上経過しており、その間何度もガチムチアニキが見張りで来ていたのだ。それがどれほどの恐怖なのか、アイシャには分からないでしょうねぇー!

 「あー忘れないように。奥にもう一人女性が捕まっている。多分例の人だ」

 最早諦めたかのように渋々鍵を開ける伯爵。とんでもない目に遭った。例の女性は兵士に保護されそのまま上へ。一瞬見えたのだが、どうやら獣人族のようだ。

 トム王はこれでもか伯爵を睨みつけており、伯爵も溜め息ばかり漏らしている。

 「それで伯爵よ、どういう了見でこのような蛮行に及んだのか、今ここで聞かせてもらおうか」

 「……もう逃げられなどしませんものね。ご案内いたします」

 伯爵は地下の更に奥へ。そこには隠し部屋があり、何やら色々な……筋トレ器具だこれ!


 「私は男性の引き締まった筋肉がたまらなく大好きですのよ。なので従者には日々の筋力トレーニングを義務付けておりますの。……自分の感覚がずれているのは承知しております。だからこそ誰にも見つからないように、このような部屋までこしらえたのです」

 ジャンルとしてはガチムチ好きな伯爵様なんだな。という事で最後の質問をぶち込んでみる。

 「ちなみに、男と男の絡みをさせた事は?」

 「なっ!? なんとふしだらな! そんな事私は一切行わせてなどおりません!」

 あーなるほど。単純に筋肉大好きオバサンという事か。尻の心配はいらなかった訳だ。

 「ここの戸棚の事はもちろん秘密にしておりましたが、ある日地下から戻ったところをあの雌狐に見られてしまい、言いふらされてしまえば私の地位も……」

 「だから彼女をさらい監禁したと? ……なんという自分勝手な犯行理由だ! 貴様は己の欲望のために、他人を殺そうとしたんだぞ! それを反省もせずオレに隠そうとまでした! 厳罰を覚悟しろ!」

 大激怒の王様。リビル館長の時は減刑のために手を出したが、この伯爵様には何も言えないな。だって俺すげー不安だったんだもん!



 ――王宮、玉座へ。

 俺とシアとアイシャの他には、何故かフューラも同席。異世界人繋がりかな? そして捕らわれていた自称王女様も。

 この中で言動がおかしいのはアイシャだな。帰ってくるまでに話は少し聞いたが、牢にでもぶち込まれると思っているのだろう。


 先に王女様の容姿をまとめる。

 まずなんと言っても目立つのが、大きな耳とフサフサのしっぽ。一見してキツネだ。そういえば伯爵も雌狐と表現したな。毛の色は黒で、耳としっぽの先端が白い。これは……ギンギツネかな? 容姿は人なのでペロ村の人たちとは違う。

 背はかなり大きく見える。俺が百七十センチ前後なので、それと同じか少し王女様のほうが大きい。耳も入れると二メートル越えなんじゃないかな。

 顔立ちは端麗で可憐。竹取物語の如く男どもが押し寄せているんじゃなかろうか。髪型はショートで先端が跳ねており、結構やんちゃな印象。ただし声のイメージでは静かで優しそうなので、髪型では性格は分からない。

 服装は王女様らしいドレスという訳ではなく、貴族の普段着といった感じ。お洒落なお姉さんとして街中を歩いていても違和感がない。

 そして耳やしっぽと共にインパクト絶大なのがその胸。EとかFとか、とにかく豊満である。一挙手一投足ごとに見事な揺れを披露しており、思わず前屈みになりそう。

 つまり俺の第一印象は、すげー触ってみたい。もちろんしっぽをだぞ?


 ――さて話を戻す。王様の自己紹介が終わり、自称王女様の番だ。見た目に高貴な雰囲気を持っており、動作の端々に本物である事を思わせる部分がある。

 「……わたくしはチェリノス連合王国の第十三王女で……本名は長いので、民にはリサと呼ばせております。……その……わたくしは、いったい……」

 状況を飲み込めていないな。地下牢ではあの会話以降ずっと無言だったのだ、恐らくは異世界に飛ばされた事すらも理解していないのだろう。何よりも、頬を涙が伝っているのがその証拠。

 「残念ながら貴女のおられた国は、我々は存じ上げない。その理由ですが、貴女は異世界へと飛ばされた可能性があるのです。そちらの二人も異世界からの来訪者でありまして、したがってこれが一番の可能性となってしまう。そして現在、この転移は一方通行であり、帰還の方法は存在しておりません。ご理解いただけましたでしょうか?」

 王女様は俺たちに目をやり、そして悟ったように泣き崩れた。

 それはつまり、この王女様は自分の意思で世界を渡った訳ではなく、事故で飛ばされてしまった事を意味する。そして帰りたいと願っている事を意味する。



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