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子犬の看病 2

 看病、一日目。

 ミルクを飲み、温かくして眠ったのが良かったのか、子犬は立ち上がれるくらい回復していた。

 ただ、数秒で足から力が抜け、ベシャッと崩れ落ちて床とお友達になっていたけど。


 看病、三日目。

 ゆっくりながら、歩けるくらいまで回復した。

 そのせいで、私が近づくと逃げるようになってしまって、ちょっと悲しい。

 だけど、二・三歩歩くと、やっぱりベシャッと崩れ落ちて床とお友達になるので、すぐに捕まえて抱き抱えられはすると思うんだけど……無理強いは良くないと思うので、慣れてくれるまでそれは我慢しよう。


 看病、六日目。

 子犬が初めて鳴いた。

 というか、唸って吠えた。

 誰かに聞かれるとまずいので、慌てて抱き抱えて口を押さえようとしたけど、逃げるスピードが上がっていてなかなか捕まらず、苦労した。

 そしてやはり声が聞こえたのか、メルティナさんが六日ぶりに部屋の中にまで入ってきて焦った。

 子犬は死角に隠した上、メルティナさんにはすぐに仕事に戻ってもらったので、なんとかバレずには済んだ……と思う。


 看病、十二日目。

 ずっと部屋に籠りきりも良くないかなと思って、子犬を抱き抱えて散歩に出た。

 メルティナさん達メイドさんのほとんどが、水路を作ってる人達に差し入れを届けに出払う時間帯を狙ったけど、領主館を出るときは誰にも見つからないよう細心の注意を払った。

 行き先は、この子を拾った森。

 子犬の気分転換になればと思って歩いていたら、子犬とほぼ似た体毛の大きな犬に出会った。

 初めは、もしかしたら子犬の親かな? と思ったけれど、大きな犬が唸り声を上げ出すと、子犬は小さくカタカタと震えながらも、唸り返した。

 これは良くない反応だと即座に判断した私はすぐに踵を返し、必死に逃げた。

 森の出口で運良く冒険者さんのパーティーに出会って、『後は任せろ、早く逃げろ!』と助けて貰えたので、ちょっとした怪我で済んだ。


 看病、十三日目。

 昨日身をていして守った事で味方だと判断したのか、子犬はだいぶ私に慣れてくれた。

 ご飯の用意をし始めれば足元に寄ってきて見上げて待っているし、お皿を置けばすぐに食べ始め、背中を撫でても嫌がらない。

 ふとしたしぐさの可愛さに抱き締めるようとすると、抱き上げる瞬間は一瞬身を引くけど、その後はなされるがまま大人しくしてくれる。

 嬉しい。


 そして今日、看病、十八日目。

 かなり元気になったし、そろそろメルティナさんやクライスさんに打ち明けて、この子の今後をきちんと考えなくちゃ。

 そう思っていたけれど、飼うことを反対されて里親を探して手離す事になったら、と考えるとなかなか言い出せずにいたら、突然部屋を訪れたクライスさんにバレた。

 子犬を見たクライスさんは大層驚いた様子で慌ててメルティナさんを呼び、駆けつけてきたメルティナさんも、目をこれでもかと見開いて固まっていた。

 その反応から、やっぱりこの領主館は動物NGなんだと思った私は、悲しい気持ちで子犬を見つめ、そして抱き上げた。


「きゃああああ! マシロ様ぁっ!!」

「えっ……!?」


 子犬を抱き締め、その体に頬を寄せた途端、メルティナさんの凄まじい悲鳴が響き、私は驚いてメルティナさんを見つめる。

 メルティナさんは今にも倒れそうな程顔を青くして、小刻みに震えていた。


「えっ、ど、どうしたの? メルティナさ」

「マシロ様。今すぐにその腕の中の生き物を床におろして下さい。そして、ゆっくりと離れて下さい。危険ですので、それに背中は見せずに、ゆっくりとこちらへ」

「え……? き、危険って、何でですか? この子大人しい良い子ですよ? そりゃ、最初の頃はちょっと抵抗して噛んだりしたけど」

「かっ、噛んだ!? マシロ様、お怪我を!?」

「え、あっ、いえ、怪我という程強くは」

「大変……! は、早く手当てを!!」

「ヴヴ~……」

「! ひっ……!」


 真っ青な顔をしたメルティナさんがそう言って私のほうに一歩踏み出すと、子犬は小さく唸り声を上げた。

 それを聞いたメルティナさんは小さく悲鳴を上げ、足を踏み出したままの状態で固まる。


「ああこら、駄目だよ。そんな声出しちゃ。メルティナさんもクライスさんも怖い人じゃないから、大丈夫だから。ね?」

「……キュウン」


 固まったメルティナさんを見て、私は慌てて子犬を宥めるように背中を撫でて言い含めると、子犬は返事をするように短く鳴いた。

 安堵して再び二人のほうを見れば、クライスさんもメルティナさんも目を見開いて私達を凝視していた。


「……マ、マシロ様……随分、その、な、なついている……? ……ように見受けられますが、その生き物は、いつからここに……?」

「え? えっと……すみません、今日で、十八日目になります……」

「なっ!? じゅ、十八日間も、それと一緒に……!?」

「……ああ……っ」

「! メル!!」

「えっ……!!」


 クライスさんが意を決したように、強ばった顔で発した問いに私が答えると、クライスさんも顔を青くし、メルティナさんは突然倒れてしまう。

 慌ててクライスさんがそれを抱き止めると、メルティナさんは気を失って、クライスさんの腕でぐったりしていた。

 えええ……な、何でぇ?

どこで区切ろうか迷いましたがこうなりました。

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