表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

『ありがとう』と『さようなら』を込めて

作者: 斜志野九星

短編集です。

くだらない話ばかりですが、読んでいただけると幸いです。

ある方から頂いた『感謝の言葉、別れの言葉』というテーマを元に書きました。

文章がおかしいところ、誤字・脱字、こうしたら良いというところがありましたら、コメントお願いします。

尚、タイトルが誤解を与えかねない物となっておりますが、私はこれからも活動を続けていきますので、何とぞこれからもよろしくお願いします。


☆感謝の気持ちを……


 ある日、俺は入場料・退場料無料と看板に書かれている美術館に入った。

 中にある展示物は、素晴らしいの一言では片づけられないくらい素晴らしい品だった。

 俺は、満足して美術館を出ようとした。

 すると、

「すみません。お金をいただけないでしょうか?」

 係の人に声をかけられた。

「お金? 入場料・退場料無料って……」

「ですから、お金をいただけないでしょうか?」

 係の人は尚もお金を要求してくる。

「素晴らしい展示物を見て、まさかお金を払わないなんて、ずるいとは思いませんか?」

「別に……」

「まあ!? この人は、感謝の気持ちも示せないのですか!?」

「感謝の気持ち?」

 確かにこの美術館の展示物は素晴らしかった。

 お金を払わないのが、不思議なくらいだ。

 払うか。

 まあ、実際は係の人が面倒くさかっただけだが……

「分かった。払うよ。何円だ?」

「1009円になります」


☆奈良


 彼女とデートで、奈良に行った。

 だが、奈良に着いた途端、フラれてしまった。

「何で、フラれたんだ……」

 俺はフラれた理由が分からなかった。

「わしがお教えしましょうかいな?」

「誰ですか!?」

「わしはガイドじゃ」

「はあ、ガイドですか」

「なんじゃ。せっかく、理由を教えて上げましょうかと言ったのに……」

「理由!? 理由があるんですか!?」

「左様」

「いったい、どんな理由ですか? 性格がいけなかったんですか? 態度がいけなかったんですか? それとも、デートをもう少し考えるべきだったのですか?」

「左様」

「え? 性格がいけなかったんですか!?」

「違う違う」

「じゃあ、態度……」

「それも違いますじゃ」

「じゃあ、デートが!?」

「左様じゃ」

「デートの何がいけなかったんですか?」

「場所じゃ」

「場所? 奈良がいけなかったんですか?」

「左様、奈良じゃ」

 老人はニッコリと答えた。


☆時代別競争


 とある研究所にて、今まさに世紀の大研究が行われようとしていた。

「いやあ、タイムマシンが出来て良かったですね」

 助手が、俺に向かって言った。

「全くだ。これでいよいよ長年の夢が叶う!」

 俺は、自分でも分かるぐらいすごく興奮している。

 俺と助手の目の前には、大きなスクリーンがあり、その向こう側には様々な種類の人間がいた。

 アウストラロピテクス、ペキン原人、ネアンデルタール人、ホモ・サピエンス、ただのホモ……

「そろそろ、始めるぞ」

 俺は、旗を手に取った。

「よーい……どん!!」

 その声と共にスクリーンに映る人間たちが一斉に走り出した。

 俺たちがやりたかったのは、様々な種類の人間の正確な速力の計測である。

 様々な種類の人間をタイムマシンを使って一箇所に集めて競争させるというのが、実験内容である。

 だが、開始早々不思議なことが起こった。

「おや?」

 出遅れたアウストラロピテクスが走るのをやめてしまったのだ。

「おーい。走ってくれ! お願いだ!」

 俺はマイクを使って、アウストラロピテクスに頼んだ。

 だが、アウストラロピテクスは鼻を穿って知らん顔。

「報酬に見合ってなかったでしょうか?」

「そんなはずはない。分析の結果、一番妥当だと判断したのを報酬にしているんだから」

 俺たちは、強引に協力させたのではない。

 アウストラロピテクスには、食べ物。

 ペキン原人には、歯の治療。

 ネアンデルタール人には、ネアンデルタール人の女性。

 ホモ・サピエンスには、大量のお金。

 ただのホモには、同じホモを……

 というように全員に報酬を与えている。

「走ってくれないなー」

 アウストラロピテクスは、こちらを見ている!

「そうですねー」

 アウストラロピテクスは、こちらを見ている!

「はっ!!」

 そして、俺と助手は何かに閃いたという顔をした。

 アウストラロピテクスは、こちらを見ている!

「分かったぞ。つまりこれは、アウストラロピテクスの習性……名前は……」

「ことわざにもありますけど……」

 揃って空気を吸い言った。

「猿人ストップだ!」

「猿者後を追わず……ということでしょうかね」

 残念ながら、俺と助手の話し合いはたまにすれ違う。

 変な方向に……

 俺はスクリーンを見た。

 アウストラロピテクスは、仲間になりたいようだ!

 えっ……


☆怪盗、最後の挑戦状


「怪盗レンジはまだ見つからないのか!」

「まだです!」

 世紀の大悪党、怪盗レンジ。

 犯行を行う前に、挑戦状と称した脅迫状を110番で警察に教え、

 犯行を行った後には、俺たちをからかう。

 ある時は、国会議事堂を爆破し、

 またある時は、誘拐された乳児を警察署に届け、

 はたまたある時は、警察署長になっていた恐るべき敵だ。

 そんな彼から挑戦状が届いた。

 内容は、『これで怪盗業から足を洗う。警察の方々を私の家にご招待します。捕まえてみて下さい』

 警察も黙ってはおらず、すぐに怪盗レンジが指した家に向かった。

 ご丁寧に表札には『怪盗レンジ』と書いてある。

「警部! 怪しげな廊下を見つけました!」

「廊下だと?」

「はい。残すところはその廊下の先だけです。きっと、そこに怪盗レンジはいます!」

「よし、向かうぞ!」

 その廊下は確かに怪しかった。

 廊下なのに、灯りが一つもついておらず、一本道なのだ。

「静かに行くぞ。気付かれて逃げられてしまっては元も子もない」

 更に怪しいことと言えば、やたらにボロいことだ。

 雨漏りはそこら中にあるし、床には蟻の巣が出来ている。

「はっ!? あれは!?」

 警察官が騒いだ。

 そこには額縁に填められた絵画があった。

「これは以前、怪盗レンジが盗んだ、ミロとムンクの合作絵画『ミロのジーザス』!!」

「やはり、怪盗レンジはこの先にいますね……」

 更に進むとタロットカードが辺りに散らばっていた。

「タロットカード?」

「一つだけ表側に落ちてますね」

 表側になっているタロットカードは『塔』だった。

「嫌なカードが表になってますね」

「タロットカードが分かるのか?」

「確か、『塔』って正位置でも逆位置でもいい意味は持ってなかったと思います」

 奥に進むと猿がいた。

 茣蓙を敷き、傘を広げ、茶を飲んでいる。

「猿?」

「何で猿がいるんでしょう」

「というより、何で猿が茶なんか飲んでいるのでしょうか?」

「これが本当の『ござる』?」

 冷たい風が吹いてきたが、気にしない。

 更に奥へ進むとクローゼットが大量に並んでいる場所に来た。

 しかし、服はぐちゃぐちゃになっており、クローゼットが意味を成していない。

 そして、そこを越えると、焼酎と焼き魚が置いてあった。

「これはマスですね」

「そんなことよりも、お酒!?」

「怪盗レンジが、私たちを持て成そうとしているのでしょうか?」

「それは有り得るな。何しろ相手は怪盗レンジだ。何をするか分からん」

「絵画に始まり、茶、衣服、お酒……」

「まあ、先に進んでみれば分かるんじゃないか?」

 そうして、どんどん奥に向かうと遂に扉に辿り着いた。

「突撃!」

 扉の向こう側は居間だった。

 元から誰もいなかったという雰囲気を醸し出していた。

「怪盗レンジは!?」

 そして、怪盗レンジはそこにはいなかった。

「ちぃっ。いったい、何処にいるんだ!」

 すると、天井から白い紙が落ちてきた。

 拾ってみると、紙の端に怪盗レンジと書かれていた。

「くそぉ!! 逃げられた!!」

 その紙にはこう書かれていた。

『居間まで、蟻画塔茣蓙衣マス』


『ありがとう』と『さようなら』を込めて

ダジャレに!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 一話目でダジャレだとわかっても、オチが読めずにワクワクしながら読みました。楽しかったです!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ