表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/19

エピローグ 徘徊する変態たち

 エピローグ 徘徊する変態たち


 午前二時。踏切。小さな望遠鏡を担ぐ高校生たちがいた。

 パンツ一丁の志摩と、普通の格好の詩哉とゐると空亜。雑談を交わしながら、少し暖かくなってきた夜風に身体を溶け込ませる。

「あーくそ、マジで腰いてえ。肩車とかいう苦行を最初に思いついた奴、覚悟してろよ。絶対に押し倒しててめーのパンツに顔うずめてやる」

「君の気持ち悪さは終着点を知らないね。それはそうと、あの程度で腰を痛めるとは、志摩君は軟弱だな」

「他人事のように言ってるが、アンタが一番重かれぱん!」

 目にもとまらぬ速度で空亜のチョップが飛んでくる。志摩は相変わらずよくわからない悲鳴とともにしゃがみこみ、しゅうううと煙をたてる頭をさすりながら痛みに耐えた。

「まったく、女性に体重のことを言うのはマナー違反だと、言っただろう」

 空亜は憤懣やるかたないといった様子で腕を組み、志摩を見下ろす。

「……言われた記憶がないんですが」

「あれ、そうだったかな?」

 女性ってゐるしかいないじゃないかとは間違っても言わない。過去の経験から学んだ。

「ま、私の場合、身体が重いのは、インナーマッスルが異様に発達しているからなのだけれどね。太っているのは胸だけだよ」

 飄々とした空亜のそのセリフに、ぺったんこのゐるがぐぬぬとハンカチを噛んだ。

「やーい胸だけデブー。胸まで細身なゐるを見習えー」

「それはあたしに対する悪口かな!?」

 涙目のツッコミ。しかし志摩はきょとんと目を丸くし、頭上にクエスチョンマークを浮かべるのみである。

「……うん、まあ、志摩君がそういうところを気にしないのは良く知ってるけど」

「私も、別にムラムラしてほしいわけではないけれど、こうまで気にされないとさすがに傷つくよ」

「お互い苦労しますね」

「うむ、お互い悲しいな」

 空亜とゐるは互いに肩を叩き、慰め合う。

 そんな二人の間で、立つところのなくなった志摩は後ろをついて歩く詩哉に話しかけた。

「ところで、お前はなんで普通に服着てんだ? パンツはどうしたよ」

「もちろん中に穿いてるよ! ていうかこの空気放置してなんでこっちに来るかな!」

「いや、だってよく分かんねえし。俺なんか悪いこと言ったのか?」

「もはや存在が害悪だよ」

 詩哉は、冗談の色のない声音で親友を害悪と言ってのけた。

「それより、志摩、結局これは何の集まりなのさ。まさか本当に天体観測するの?」

 大小さまざまな望遠鏡を眺め回し、尋ねる。

「まさか。高校生って立場だと、深夜徘徊だけで補導されるからな。せめてもの言い訳に天体観測って使うだけだ。まぁ実際にやってもいいが」

「結構重いし、やらないと納得しないと思うよ」

「そうか。んじゃあちょうどいいし、この公園で始めるか」

 彼女たちへ呼びかけ、公園の中へ入る。シートを広げ、その上にみんなで座った。

 あれがデネブアルタイルベガと指差し、星を追う。

 生ぬるい空気の中、まったりと天体観測を行った。

「さて」

 一通り眺め終え、みんなが眠気に襲われ始めた頃。志摩が立ちあがり、口を開いた。

「今日集まってもらったのはほかでもない。ノーマルの会議のためだ」

「え、天体観測じゃないの?」

「おう。それはついでだついで。あと、深夜徘徊も空亜先輩と一緒であればして良いってことだから」

「それがメインじゃないの?」

「ばれたか」

 穏やかな空気の中、笑いあう。

「俺と詩哉とで始めたノーマルも、二人の精鋭を加え四人となった。また信者ーズという補助組織も作られ、動かしやすくなってきている」

 三人を悠然と見回し、演説する。

「動き出すなら、ここしかないだろう。ノーマルの本格始動だ」

「おーいえー!」

 ぐっと拳を握りしめて宣言する志摩に、ゐるが拳を突き上げて応える。他二人も、異存なさ気にうんうんとうなずいている。

「というわけで、お前ら何かしたい活動があったら好きに言ってくれ。とりあえずブレーンストーミングしよう」

「目の収集活動したいです!」

「一人でやってろ!」

「SMプレイをしたいのだけれど」

「一人でやってろ!」

「僕は」

「一人でやってろ!」

「何も言ってないのに!」

 漫才のように好き放題言う。しばらくそんなやりとりを続け、四人はぐてーっとシートに寝そべった。

「そもそもブレーンストーミングとはアイディアをたくさん出すのが目的であるから、否定してはいけないのだけれどね」

「一秒考えれば駄目だってわかる意見を出されたら誰だって否定するわ」

「僕は意見を出す前に全部否定されたんだけど」

「まあ、詩哉だし」

「理不尽!」

「詩哉君ならしょーがないよね」

「ポプラ詩哉君はちょっと」

「初期メンバーなのに一番扱いが雑!」

 しくしくと悲しみに暮れる。そんな詩哉を放置して、志摩たち三人は意見の出しあいを続けた。

「あー、だからあれだ。自分の欲望を前提に考えるから駄目なんだよ。ある程度大衆に迎合して、その中でいかに自分の欲望を押し出すかで考えないと」

「しかし、あまり迎合しようとすれば今度はこちらがキツイぞ? それに、相手に理解を求めるのであれば、それこそぬるま湯を続けても時間がかかりすぎる。三年間でこの学校を変えようと思うのであれば、多少リスクを背負っても、もっと刺激を強くするべきなのではないかい?」

「それなら、欲望の中にみんなに受け入れてもらうためのものをいれたらどうかな」

 詩哉をおいて真面目な議論をするが、一向に話がまとまらない。ちょうど良い折衷案も見つからず、睡魔の誘いもあって話が進展しない。

 今日はここまでか。志摩が諦め、手を打とうとしたとき。

「あのさー、ふと思ったんだけど」

 先までしくしくと隅で泣いていた詩哉が、手を挙げた。

「性癖を笑いの種として使えばいいんじゃない?」

 おお。一同の、どよめき。

「だからさ、なんか、みんなの性癖を笑いにできることしようよ。普段からできるだけ笑いに結びつける性癖の出しかたをしてさ。文化祭のステージ発表で漫才とかやってもいいよね」

 詩哉の提案に、ゐるが「あ」と声を上げる。

「そういえばさ、ずっと思ってたんだけど、昼休みの校内放送、なんかつまんなくない? いつも流行の曲が流れてるだけでさ。あたしたちで占拠しちゃおうよ」

 楽しいことを思いついた。そう言わんばかりに目をキラキラと輝かせ、提案する。

「それはなかなか面白そうだね。ついでに風紀警察としていろいろ宣伝もできそうだし。……とりあえず放送部部長のあいつの弱みは握ってあるからゆすって、週一で三十分くらい包装許可を奪い取るか」

 後半はぼそぼそと、一人作戦を呟いた。

 そんな彼女のセリフに志摩は少しだけ引いた。

「と、とりあえず、そういうことで良いか。ラジオ放送、面白そうじゃねえか。いろいろアイディアが浮かんでくるぜ」

 各々、楽しげに表情をほころばせ、夢想する。

 志摩はそんな彼らを見回し、パンッと一つ手を叩いた。

「よし、それじゃあ、ノーマル最初の活動は、ラジオ放送だ。こっから学校、ゆくゆくは世界を変えてみせる。俺たちが、世界中の変態を一般人にしてやるんだ!」

『おー!』

 その後、四人の笑い声が、夜空に響いた。

これにて本編終了です。クソ長い作品におつきあい頂きありがとうございました。


選考結果が出た時には怒り狂っていましたが、冷静になった今ではキャラクターの魅力の引き出しかた、物語の構成など様々な反省点を感じております。この反省を次回作に生かしていきたいと思います。次回もおつきあい頂ければ嬉しいです。

またお手数ですが、ご感想などあれば感想を書くところかツイッターでリプなど送ってくださると泣いて喜びます。空中で書かれると多分気づけません。『気づかれないなら気づかれないでいいよ』などと言わず、ぜひ直接お願いします。いやマジで。



ちなみに余談となりますが、オーバーラップ様の選評は五段階評価で


キャラクター 2

ストーリーライン 1

世界観・設定 1

構成 1

文章力 2


となっておりました。総合コメントでは

『全体的にテンポよく進む物語は読みやすかったですが、キャラクターの性癖が強すぎるため、感情移入し辛いという問題がありました。楽しませようとするコミカルさは感じられるのですが、変態さがマイナスに響いているように思います。もう少しキャラが読者に愛されるような要素を付け加えられたらさらによくなるでしょう』

と書かれていました。評価クッソ低いくせにある程度褒めてくるあたり、お客様として扱われてますね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ