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白樹君と夕焼けオレンジ

個別イベント白樹編。

はて、白樹君と友美はイベント起こっている筈ですが…。

 今日は忙しい。

 何たって明日は体育祭だから。

 委員会からそうでない人達までわさわさしている。

 もちろん彼、白樹去夜君なんかはその筆頭な訳で…。

「白…」

「おい白樹、これ何所に持って行けばいいんだ!?」

「今行くー!」

「白樹君~、私達も手伝うよぉ」

「サンキュ、助かるよ」

 呼び掛けた私の声は、白樹君を呼ぶ他の声に遮られた。

 そのまま大人数を引き連れて教室の外に出て行く白樹君。

 これから会場の設営に回るんだろう。


 仕方ないなと溜息をつく。

 体育祭実行委員が率先して白樹君を頼るようじゃ、彼が解放されることはまず無いと言ってよさそうだ。

 今日、日直、私独りなんだ?

 べ、別に寂しくなんて無いんだからねっ!!


 大寺林先生の方針で、うちのクラスの日直はクジ引き制だ。

 普段接点の無い人同士で一緒に作業して、少しでも仲良くなるきっかけになれば、って事らしい。

 まあ、中には友美と木森君みたいに最初っから仲良しなケースもあるんだけどさ。

 それはそれとして。


 本日は私と白樹君だった筈なのだが、彼がこの調子なので私がやりました。

 見かねた友美と木森君、それに仲の良い女子数名が手伝ってくれたんだけどさ。

 というか、白樹君とその仲間達の行動について思う所があったらしく、何やらブチブチ言ってますよ。

 たかが日直とはいえ、責任放棄したと言えなくもない白樹君について、もそうなんだけど、どっちかって言うと、白樹君をダシにして好き放題やってるっぽい部分のある仲間、というかもうこれ取り巻きで良いよね?その人達の行動が、最近目に余るようになって来たから、そう言った部分で不満が出て来たんだろうと思う。

 ……色々知ってる人間()としては、一応「頼られたら断れない責任感ある人物」としてフォローしといたので、皆色々言っててもそこまで酷い事にはならないと思う。…多分。



 はあ、今日は良く働いたー。

 放課後の誰も居ない教室で大きく伸びをする。

 これで書き終わった日誌を帰りがけに提出すれば任務完了だけど、それにしてもずいぶん遅くなってしまったなあ。


 HRが終わればお役御免の筈が、大寺林先生に残業を仰せつかってしまったので、友美には先に帰ってもらった。

 待つって言ってくれたんだけど!(天使!)今日は小父さんが帰って来るの早いので、遅くなったら説明しといて、と根回しをお願いしたので。

 …どうせそれでもひと騒ぎするんだろうけど。


 友美の両親である篠原の小父さんと小母さんは、家族ぐるみで長い事付き合ってきているとは言え、余所の家の子である私の事も自分の子(友美)と同じように分け隔てなく接し、日頃から何くれと心配してくれる。

 それが本当に有難いと思う。……約1名、たまに行きすぎる時があるけど。


 大寺林先生の方は、今日1日白樹君がまともに自由行動取れなかったのを知っていたらしく、苦笑していた。

 自分で何とかすべき、とも言っていたけど。

 この残業だって本当は白樹君に頼むつもりだったが、生徒の方が早かった、と困った顔してたっけ。

 さすがにこの時間では、もう設営も終わって帰ってるんじゃないかな?

 いやあ、リア充(そのままの意味で)って大変。(棒)


 帰り支度を済ませ、教室内を見回す。

 変な物出しっぱなしになって無いよね?このまま帰っちゃって大丈夫かな?


 …ふと、窓の外を見た。

 差し込んでくる一面のオレンジに、私の意識は支配される。


 こういう時、“この世界”が“ゲーム”か“現実”か分らなくなる。

 ……いや、両方だって理解してはいるんだけど。


「楽しかった日々を夢見ながら眠る、それはきっととてもしあわせな事、か」

 かつて前世(どこか)で読んだ1節をそらんじる。

 

 本当にふと思い出した。一面のオレンジに引き出されたその場面。

 相当印象強く残っていたんだなあ…。…だいぶうろ覚えだけど。


 ああ、でも、それなら。

 まさに()夢その()もの()の様()な世界()生きている(夢見ている)自分は、幸せなんだろうと思う。多分、恐らく、きっと。


 そこまで考えて苦笑した。


 フッ、厨二病罹患者乙。



「央川?」

 び、びくうっ!!

 ?!

 し―、白樹君!?

「な、か、帰ったんじゃなかったの!?」

「あー、驚かせてごめん、これから帰るんだけど、央川もこれからか?」

 言いながら自分の席に向かう。

 あああああああ、これ絶対聞かれてた~!

 ドア空いてたっけ!?いや、閉まってた、って事は本気で気付かなかったのか~~!!

 あ~、自分の馬鹿馬鹿馬鹿!!


「あ~、うん、今帰るよ。(残念ながら明日も来るけどね)」ぼそ。

 思わず口をついた余計なひと言は、白樹君には聞こえなかったみたいだ。

 鞄と日誌を取ると、日誌に気付いた白樹君が慌てた。

「あ!日直!もしかして、いやもしかしなくても俺忘れてた!?」

 今かい。


「忙しかったの皆知ってるから別に良いよ、これ出せばもう終わりだし。友達が手伝ってくれたからそんなに大変じゃ無かったよ」

 気にしないで、と笑顔もプラス。これでさっきの発言チャラになんないかな?

 駄目かね?

「ごめん、ホントごめんな、日誌くらい俺持って行くよ」

「職員室に寄って帰るだけだから別に良いよ?」

「じゃあ送る」

 はい?何ですと?


「これくらいしなきゃ気が済まない。だって全部やってくれたんだろ?…あー、もしかして気を使って俺に声掛けなかったとか?気にしなくて良いのに」

 いや、声は掛けようとしたんだけどもさ。

「あれだけ囲まれてる中に割り込むのも悪いかなとは思ったけどね。でも、遅くなったのは先生の指示で少し作業手伝ったからで、日直の仕事はあんまり関係無いから」

 気にしなくて良いよと、パタパタと手を横に振る。

「でも、仕事は仕事でちゃんとしなきゃダメだろ?今度からはちゃんと声をかけてくれよな?」

「そう、…そうだね。今度からそうする。気をつけるよ」

「ん、俺もサボってごめん」

 お互い謝ると、自然な流れで白樹君が私の持ってた日誌を手に取った。

 あれ?

「じゃあ、職員室寄ってとっとと帰ろうぜ。これ以上遅くなるとさすがに真っ暗になっちゃうからさ」

 一緒に帰るのは確定なん?マジで?


 何とか説得して、自宅、というか友美の家まで送られるのは阻止しました。

 ん?それはそれで友美的にはアリなのか?デート的な、登下校的な意味で。

 まいっか、そこら辺は本人の進行次第という事で。

 必要ならこちらから情報流せばいいだろう。


「で、急遽必要になったからコピーしたのは良いんだけど、枚数があるから手伝って欲しかったんだって。仕分けしてホチキスで留めるだけの簡単な仕事です」

「そっか、悪かったな」

「いえいえ」

 帰り道、居残りの理由を聞かれたので素直に答えました。

 多分明日の授業でもう一度あの資料とご対面する事になるだろう。

 簡単だけど時間ばっか食う仕事だったので、再び目にした時に何か面倒臭い気分を思い出しそうな気がして、少し気が滅入った。


 気を取り直して、作業中に出た話題について触れてみる。

「ああそうだ、先生が心配してたよ、白樹君」

「え?」

「周りの人の言う事を何でも聞いていて、自分の事が疎かになってないか、って」

 まあ、今回の事とか特にそうだよね。

「先生は自分で気付かないといけない事だから言わない、って言ってたけど」

「……それ言っちゃって良いの」

 ふはっ、と白樹君が力無く吹き出した。


「私も気になってたしね。……疲れるまで人の言う事何でもやらなくて良いんだよ?」

 そう言う風に言うと、何かの下請けや使いっぱしりみたいに聞こえるけど、白樹君の場合はとにかく頼りになる委員長タイプだと思う。

 実際クラス委員をはじめ各委員、あるいは部活関係者から何かと頼りにされているのだから。

「そうだな、自分では分かってたつもりだけど、今回みたいな事もあるし。……心配してくれてサンキュ、な」

 静かにそう言う白樹君は、やっぱり少し疲れてたのかな?

 何か良いきっかけになれば良いけど。

 うん、何事もやり過ぎは良くない。実際クラスの雰囲気だって悪くなりかけてた部分はあったし。


 …まあ、だからって私が率先して何かする必要も無いんだろうけど。

 それに、白樹君ならほっといても軌道修正しただろうし。

 信念持ってやってる“(プレイ)” だから、自分が潰れるまでこの状況を続ける事も無い筈だ。


 ある意味で白樹君もゲーム中だと言えるのではないだろうか。

 強いて言うなら、それはRPGで。

 だからこそ、

 

「自分の事大事にしないと駄目だよ」


 これ、実際にプレイしてる人からのアドバイスだからね?

 ……ゲームのジャンル違うけど。


 白樹君は「なにそれ」って笑った。

 「俺そんなに心配かけた?」ってこっちを見たその顔は、どこかで見たことがあるような、歪な……。


 あれ?この時期にそんな表情(その立ち絵)って早くね?



 それから特に会話が弾む事も無く、黙々と歩いた。

 基本的に今まで接点無かったし、共通の話題は今話しちゃったし。

 

 友美関係で仲の良い友達こそいるものの、対人スキルは今だ最低ラインですが何か?

 自分優先で友達にも呆れられちゃう私ですが何か?(キリッ)

 

 でも、私はともかく白樹君までダンマリって珍しいと言うか、さっきのそんなに気に障ったかな?

 ただしフォローなどしない!(好感度的な意味で)


 そんな事を考えながら歩いていたら、少し大きな公園の入り口に差し掛かった。

 春には桜、秋には紅葉が奇麗で、私は友美や弟妹達と良く遊びに来ていた。

 …今度また久しぶりに走りに来てみようかな。

 そう考えていると、

「この公園、今の俺ん家から近いから良く来るんだ。今はちょっと暗いから人があまりいなそうだけど、夕方とか犬とか散歩とかで結構人がいるんだぜ」

 そう言った白樹君の口元には小さな笑みが浮かんでいる様だった。

 少しは気分が向上したかな?


「私も友美と一緒によく来るよ。いろんな木が植わってるから、春とか秋とか見応えあるんだよね」

「花見は結構人がいたみたいだな。紅葉も凄いのか」

「うん。私なんかはジョギングがてら来るけど、紅葉目当てで来てる人も結構いるんじゃないかな?」

「それは楽しみだな。央川は走りに来ることもあるんだ?」

「うん、友美と一緒にね」

 一人で来ることもあるけど、別にそれは言わなくて良いかな。

「そっか、もしかしたら会ったことあったかもな」

「………さー…」


 いつだったか、公園に来る野良猫相手に何やら話しかけていた少年。

 あの時も、私はこの公園にジョギングに来ていた。

 もしかして白樹君、気付いたかな?


 あの時の事は知らなかった事にするのが一番良い気がする。

 この学園に来る前に彼の身に起こった出来事、それで一人落ち込んでいた姿なんて知られたくないだろうし。


 何より何かフラグの臭いがする。

 

 ああ、言い換えよう、地雷だ、と。


 踏んだら死ぬ。いや、人生オワタはまだ早い!


「ジョギングで思い出したけど、少しだけでも走る時間があったら良かったね。そんな時間無くなっちゃったけどさ、ほら、明日体育祭だし」

 殊更に明るく言う。

 多少強引だけど、この際気にしていられるか!

「先輩達と別の組になっちゃったのは痛かったね」

「仕方ないさ。けど、全力でいけばもしかしたら勝てるかも知れないぞ?」

「白樹君でも“もしかしたら”かあ。先輩達ってホント『越えられない壁』だねえ」

 再び歩き出すと白樹君も歩きだした。

 よしよし、このまま離脱じゃ!


「むしろだからこそ、ぶつかり甲斐があるんだろ?全力でいけば勝機だってあるさ」

 テンプレ臭すら漂って来そうな爽やかさも、状況分かってんの?って言いたくなるくらいの前向きさも、確かに私の知ってる(ゲームの中の)白樹君らしい部分で、

「がんばろーなッ!」

 無駄に爽やかな彼の表情とその一言に、

「うん。活躍、期待してるね?」

 彼はやっぱりこうでなくちゃ、と思わずにっこりした。

「おう、央川もな」

「ん、がんばるます」


 結局そのまま、白樹君のマンションに向かう別れ道まで一緒に帰った。

 やっぱり会話は弾んだり弾まなかったり。

 でもまあ今後の事を考えると、これ位でちょうど良いのかも。



 いよいよ明日は体育祭。

 綺麗なオレンジの空を思い出し、明日はきっと良い天気だ、と1人笑みを浮かべる。

 何しろ初めての共通イベントだ。

 好感度上位1位のイベントが起こる予定だから、誰が1歩リードするのかきっちり確認しておかなきゃ。


 くふふ、それはそれで楽しみだな、っと。





ネタ元のファンの方々に全力でスライディング超→土下↑座↓!


まあ、分からなければそれはそれで良いです。

そのままコピペした所でググっても出て来なかったから多分だいじょぶ。


主人公は“やさい”も“くだもの”も“やきにく”も嗜む人です。

(古い例えで申し訳ない)


白樹君は主人公に突かれて、今出ちゃいけない色々な物がぼろっと出ちゃった感じ。


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