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フラグの折れる音

ついに“あの人”が登場!


そして、フラグが折れる、とは!?



「これ、この前お世話になったお礼です。良ければ皆さんで召し上がって下さい」

「わざわざ?」

「あの時はお礼どころじゃ無かったんで」

 苦笑する。

 友美の事だけ必死で、周りの事なんて考える余裕無かったから。


「改めてお礼と、ご免なさいが言いたかったんです。…この前は無茶して済みませんでした」

「いいよいいよ、どんな状況でも依頼を遂行するのが俺達の仕事だからね。うん、皆無事で良かったよ」

 照れてるのか、手をパタパタ振りながら謙遜する天上さん。…なんか、新鮮だなあ…。

 立ち絵の面影のある表情でそんなリアクションされると、意外な一面を見た気がして嬉しくなる。

 いつものメンバーのは見慣れちゃってるから、あんまり意識しないんだけどね。


「お礼なら、一つ情報を貰った方が嬉しいんだけど」

 マスターから受け取ったコーヒーを静かに口に運びながら、相方のお姉(かおるこ)さんが言った。

(かお)さん」

 天上さんがたしなめるが、お姉さんはそれに構う事無くそのまま聞いて来た。

「ねえ、“私達”が“天球儀(ここ)”にいるってどうやって知ったの?不思議な事にね、調べても調べても、貴女と組織(わたしたち)の接点は何も見つからないのよ」

「唯一の接点はあの入学式の日、天上さんが私達に道を尋ねて来た時だけ、ですからね」


 お姉さんの言葉に、こちらも言葉を添える。

 やっぱ調べ入っていたか…。

 不幸中の幸いと言って良いのか、優秀な諜報員がいるだろうと思うのに、それでも案の定何も出てはこなかったみたいだ。

 とはいえ、どう説明していいか分らない。

 私、前世の知識があるんです、なんて。


「調べて分かったと思いますけど、繋がりのある物は絶対何も出てこないと思います。私自身にも上手く説明出来る事じゃありませんから。ただ言えるのは、知っていた、としか。……“精神鑑定”でも“過去催眠”でも、恐らく何も出て来ないでしょうし、…“出て来たとしても、その内容を証明する(すべ)は無い”かと」

 まるっきり嘘をついて誤魔化しても無駄だろうから、開示できる情報はヒント程度に止めて出しておく。

 追加で調べたいならそれはそれで好きにすればいい。どうせ止めようが無いんだし。

 まあ、そこまで粘着に調べる事も無いだろうけど。

 組織だって忙しいだろうし、私達との接点だって今後は特に無い筈だ。

「……」

 白樹君も心当たりがあるんだろう。視線を感じる。

 まあ、納得いく訳無いよね。むう、じゃあもうちょっとだけ。


「個人的には『セー○ー戦士』より『未来○記』とか『○の手帳』の方が近いですかね」

 そんなヒントで大丈夫か。

「央川真相話す気全然ないだろ」

 白樹君ががっくり項垂れた。

 うん、やっぱり駄目だったよ。

 


「それじゃ、御馳走様でした」

「こちらこそ、お土産有難うね」

 店を出る時、天上さんと香子さんが見送りに出て来てくれた。


 ふと、思う。これがこの人との今生の別れじゃないか、って。

 次にいつ会えるか分らない。

 もしかしたらこのまま会えなくなる可能性だって…。


「あの、よければ握手して貰っても良いですか?」

「え?良いけど…」

 あ、しまった、びっくりされてしまった。

 でも了承して貰えたから、そのまま手を差し出す。

 わ、手おっきいんだ…。

「また縁があったらどこかで」

「うん、こちらこそ」

 はにかみながら笑う。

 この世界が現実で良かった。こうして、触れることが出来るから。

 感触は忘れてしまうかもしれないけれど、触れた事だけはきっと一生思い出に残る。


「あら?何だか妬けるわね、可愛い顔しちゃって。そんなにこの人の事気に入ったの?」

 ぽやっとそんな事を考えていたら、相方(かおるこ)さんに突っ込まれてしまった。


 縁を切ったのは自分の方だけど、それでも天上自身の事は嫌いじゃ無かった。

 恋人だった事もあったし。…ゲームで友美(ヒロイン)がだけど。

 ああ、何だか感慨深いな。

 香子さんには「思い入れのある人ですよ」とだけ言っておいた。


 不思議そうな顔の二人を置いて帰路に就く。

「好きなの?」

 途中で白樹君がぽつりと言った。

 ん~?さっきの天上さんの話かな?

「好きだった、かな」

 遠くを見る様に答える。

 もう、ずいぶんと昔の話だ。

「今は、好きじゃ無い?」

「う~ん、特定面において信頼できる人、かな?」

「特定面?」

「荒事とか?」

「ああ」

 納得してくれたかな?


「仲良く出来たら良いとは思うけど、個人的に特別なお付き合いしたい、とかは無いよ」

 まあ、それを言うなら男性全般そうなんだけどね。

「そ、っか」

 あれ?何か疲れちゃったみたい?

 もう真っ直ぐ帰ろうか。ぴーすけもいるしね。


 さっき来た方とは逆方向から大通りに抜ける。

 …こっち側だとすぐ出れるんだよね。

「央川サン?」

 うろんな目で見られた。てひ。


「お、今帰りか?もう遅いぞ」

 ゲーセンの前で呼び止められた。

 おお、コージさん!コージさんに呼び止められたー!!

「ばんわでっす!」

 嬉しくて勢いよく挨拶する。

「央川?」

 誰?と問われたので、嬉しさを隠さないままに、満面の笑みで返した。

「この人がコージさん。前に話したことあったよね?」

「ああ…」

 あれ?返事がイマイチ。ん?何かコージさんを超見てるっぽいんですが、白樹君?


「どうでもいいけど、早く帰れよコーコーセー」

 溜息つきつつコージさんが追い払う仕草をした。

 ああ、そのだるだるした雰囲気がたまらなく好きです!けしからんもっとやってー!

「そうだな。央川、遅くなったから送って行くよ」

 気がつけば辺りはすでに真っ暗だった。

 辺りを見回した白樹君がコージさんの言葉に追従する。

「あうー、寄ってる暇ないや、残念。せっかく声掛けて貰えたのにー」

 ううー。

 残念無念と唸っていたら、コージさんにとんでもない事を言われた。


「お前なあ、カレシの前でそんな事言っていいのか?」


 は「もがっ」


「ああそうだ、この間言ってたライブな、あんた独りで来るのはさすがに問題だと思ってたけど、カレシいんなら話は別だ。今チケ取って来るから、そこでちょっと待ってろ」

 むー!!それって白樹君(保護者)同伴で来いって事ですかー!?

 てゆーか白樹君(コレ)がカレシって、超誤解ーーー!!!

 口を塞がれてもがく私の様子に、戻ってきたコージさんが首を傾げた。


「付き合ってるんじゃねぇの?」

「照れてるんですよ。彼女そういうとこシャイなので」

「ああ」

 納得しないでーーー!!!シャイって違うーーー!!!いっやーーーー!!!

「じゃあチケット、彼氏の分も入れて二枚あればいいよな?」

「済みません、俺の分まで」

 何で君が返事するのーー!?

「いや何、俺にとっても都合が良いから気にすんな」

「はい、有難う御座いました」

 あああああああorz


 私を置いて進行してゆく二人の会話に、今まで築いて来たフラグがガラガラと折れて行く音を聞いた気がした。


「なー…、な…、な、何で…」

 あまりのショックにマジ泣きしそう。

 ゲーセン前を離れ、大分情けない顔をしていると思われる私に、白樹君はにやりと追い打ちをかけた。

「うん?そりゃ、央川に意識して貰いたいからさ。それに、ライバルの芽は潰して置くに限るだろ?」

 うわー!わざとかーっ!!

「…皆年上だったよな…。好み…?…学校だと男に興味無さそうな感じだったから油断してたけど、意外と…。確実に一つずつ潰して行くしかないか」

 ぶつぶつと何事か呟く。

 聞こえてるよ!“意外と”何だよ!?潰すって何なんだー!?


「ハア、別に本気でどうこうなろうって気は無いよ。ただのファン」

 強めに否定する。フラグがどうこう言ったところで、所詮は仲良くなれてラッキー、キャー今日はたくさんお話しちゃったー、的なノリだ。

 …それだけしかならなかったんだよ!!(震え声)

 でも、コージさんの件についてはマジで恨むからね!

 ぎしっと音がするくらい睨みつける。てかチケットパクってないで寄越せや。


「はい」

 待ってられなくて手を出す。

 白樹君は良く分らないみたいに首を傾げた。

「チケット!」

 むっとしたまま催促すると、ああ、とか言いながらチケットをその手に乗せる…って、これ違うチケットじゃ無いスか。


「白樹君、これ何?プラネタリウムのチケットだよ?」

「いや、あってるだろ?」

「私が言ってるのはさっきのライブのチケ!これじゃ無い!」

「あってるよ。央川、土曜(あした)の夕方空いてるよな?デートしよう」


 は。


 間の抜けた効果音が聞こえた気がしましたよ。ぽかん、って感じの。

「え、な?」

 わからん。何がどうしてそうなった?

「ナイトプログラム見たいって言ってたんだって?」

「え、えー?」

 だ、誰だそんな事言ったの!?

 いや、今やってるのは確かに良さそうだなーって言ったけど。

 でも白樹君が何でそんな事知ってるの?

 まさか友美?いやでも理由が無い、し…?

「え、と?」

 訳が分らなくて続きを促す。

 何でも良いから、すとん、て納得できる理由が欲しい。


「ああいうのってさ、確かに独りじゃ行きづらいよな」

「ま、まあ」

 別にカップル限定ってわけでもないんだけど、…周り中がほぼそんな人達で埋まっている中、単独で行く勇気はさすがに無かったから見送ったのだが。

「って事で、どうせ行くなら俺と行かない?」

「え、えー…」

 困る。

 正直すごく困る。

 とてもとても困る。


 そこまでして行きたいかって言われると、まあ、いかな?って思えるレベルだし。

 でもチケットもう買っちゃったんだよね?無駄にするのも申し訳ない。

 それに、良い機会と言えばその通りだ。


 グラグラ揺れる私に決断を迫る声が聞こえた。

「行く?行かない?それとも俺が嫌?」

「や、そんな事は無いんだけど…」

「用事ないって聞いてたから予約とっちゃったけど、もしかして予定入れてた?」

「それも、無いんだけど…」

「じゃあ行こうぜ?チケット無駄になっちゃうしさ」

「う―…………うん」


 言葉を濁しつつ、ごにょごにょ悶えつつ考えた結果、最終的にもったいないの精神が勝ちました。


染みついた(びんぼー)前世の価値観(こんじょー)のバカヤロー!


「うー、行くって言ったんだからもう良いでしょ?ライブの方のチケット!」

 気を取り直し、寄越せと手を伸ばして催促すると、呆れた声で拒否られた。

「今チケット渡したら、あんた独りで行こうとするだろ?ダーメ」

 ぎいー!

「なんで!?」

 わざわざ2人で一緒に行く意味が分かんないよ!!別行動だって良いじゃんか!

 てか君、コージさんがバンド組んでるって絶対知らなかったよね!?

 むしろさっきの今で知ったよね!? 

 興味無くても行くの!?


 パニックで半泣きの私に、白樹君の冷静な指摘(おいうち)が。

「さっきのあの人の言い方だと、カップルなら男の俺があんたを守るから大丈夫、って事で“俺を”信頼してチケットくれたんじゃないの?さすがに未成年女子一人だけで行こうとするヤツに、インディーズのあまりメジャーでも無い人が、大して大きくも無いライブに、そう簡単においでなんて、普通言えないだろ?」

 orz


 その言葉に、反論できるだけの言葉を、私は持っていなかったのです。

「じゃあチケットは当日に」

「ハイ…」


 魂抜けてた。きっと。



 その後ドラッグストアを通りがかった際、たまたま出てきた店員に、

「カップル割あるよ」

 と言われ、

「ちっがーう!!」

 と思いっきり反論したのは致し方ないと思うんだ。


 …て言うかその手の中身ー!CERO仕事してー!!



 無事に(友美の)家に着いたら、今日の出来事は逐一報告しようと思います。

 そんで、いっぱいいっぱい慰めてもらうんだからー!!!





はい、こういう結果になりましたw


この世界には「セー○ー戦士」も「未来○記」も「B○FF」も存在する様です(笑)

認識としては間違って、無いよね?


薬局の「おねにーさま」は1人でCERO上げている様な人だと言う認識で間違い無いですw

「おねにーさま」で想像つくと思うけど、ゲーム時には性別不明男性声優という設定。



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